問題が解決するまで、既に戦力化されたスリオンおよそ50機の冬季作戦には制約が課されるものとみられる。韓国軍の内外からは、陸軍航空学校で教育中だったスリオンが不時着した昨年12月の事故も、着氷現象と関連があるのではないかという声が上がった。
スリオンの結氷・着氷問題を短期間で解決するのは難しいということも大きな問題だ。防事庁の資料によると、今回の結氷試験で指摘された問題を解決するには、7点の部品を改良しなければならない。このうちエアインテークなど3点は、新たに設計からやり直さなければならない。改良作業完了までには2年ほどかかる、というのが防事庁の判断だ。
スリオンには、開発だけで1兆3000億ウォン(現在のレートで約1190億円。以下同じ)の資金が投じられた。2013年5月の戦力化記念式典では、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が試乗も行った。それから最近までの間に、1兆ウォン(約910億円)かけておよそ50機が量産された。韓国軍では、23年までにさらに5兆ウォン(約4600億円)を投じておよそ200機を追加生産する計画を立て、およそ300機の輸出も期待していた。しかし米国側の「結氷試験不合格」により、しばらくは追加量産はもちろん輸出も難しいと分析されている。
これに対しKAI側は「結氷試験は、輸出拡大のための選択事項だった。冬がない東南アジアや中東などに販売すればいい」という主張を展開しているという。しかしイ・チョルギュ議員は「結氷試験は、ヘリ戦力化のための必須項目。『後で結氷試験を受ける』という但し書きを付けて、12年6月に条件付きの『戦闘用適合』判定を受けた」と語った。12年の「戦闘用適合」判定自体も見直すべきではないか、という指摘もある。スリオンが問題を起こしたのは、これが初めてではない。今年5月には、一部の機体に取り付けられている振動吸収装置に亀裂が発生し、防風ガラスにもひびが入った。