廃車からバッテリーを取り出す従業員。環境対策を取らない韓国企業が廃バッテリーを買いあさっている疑惑が浮上している(ブルームバーグ)【拡大】
自動車などから回収された使用済みのバッテリー(蓄電池)輸出が高水準で続いている。鉛を使用するバッテリーは、使用後に鉛を回収して再び地金を製錬するための原材料となる。貴重な「資源」の国外流出が続く事態に非鉄製錬業界は政府に対策を要望。これを受けて政府も法整備の見直しに向け、具体的な検討に乗り出す方針だ。
財務省貿易統計によると廃バッテリーの輸出量が増えたのは2006年以降。輸出量の99%が韓国向け。04年にはゼロだった韓国向けが14年には9万7000トンにまで拡大。ロンドン金属取引所(LME)の鉛価格上昇を受け、韓国ではリサイクル原料から鉛地金を製錬する能力を拡大。日本から高値で廃バッテリーが輸出される事態を招き、鉛製錬メーカーからは安定的な原料調達を脅かすとの危機感が高まっていた。
早急な対策の必要性が高まった契機は今年6月、廃バッテリーから鉛地金を製錬する韓国企業11社が製錬過程で生じるヒ素を含んだ残留物を不法投棄していた容疑で摘発されたと同国政府が発表。環境対策コストを負担していないことが、高値で廃バッテリーを買い集めることができた背景との見方が広まった。
日本鉱業協会の西田計治会長(三井金属社長)は7月の会見で「韓国がなぜ高い値段で廃バッテリーを買えるのかは数年来問題視されてきたが、不法処理されていることが分かった。日本から輸出されたものが不法投棄されている構図になっており、規制がかかるべきではないか」と問題提起した。輸出先が適切な環境対策を取っていることなどを条件とするよう求めている。