政務活動費調査「95%以上使用は11議会」

政務活動費調査「95%以上使用は11議会」
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昨年度全国の主要な地方議会で支給された政務活動費について調べたところ、富山市議会が支給額の全額を使い切っていたほか、10の議会が支給額の95%以上を使っていたことが分かりました。調査を行った市民オンブズマンは「本来の政務活動に使われたのか疑問を抱かれかねず、インターネットでの領収書の公開などを進める必要がある」などと指摘しています。
政務活動費は、議員の調査や研究のため報酬とは別に支給されるもので、多くの議会では年度の初めなどに一定の金額を会派に前払いし、活動の結果、余ったものは返還する仕組みになっています。

全国市民オンブズマン連絡会議は全国の都道府県や政令指定都市などの114の議会に対し、昨年度の政務活動費についてアンケート調査を行い、23日、高松市内で開いた記者会見で結果を公表しました。それによりますと114議会で支給された合わせて190億円余りの政務活動費のうち25億5000万円余りが返還され、使用率は86.6%と前の年よりも3.4ポイント低くなりました。

各自治体ごとに見てみますと不正が相次いで発覚している富山市議会では今回調査した自治体の中では唯一1人当たり180万円、合わせて7920万円支給された政務活動費を全額使い切っていたということです。また、横浜市議会で使用率が99.3%にのぼるなど、95%以上の議会は富山市議会を含めて11にのぼりました。

一方、情報公開の程度を調べたところ議員が提出した領収書をホームページで公開している議会は大阪府議会や兵庫県議会など9つの議会にとどまりました。使用率が95%以上の11の議会はいずれも領収書をホームページで公開していませんでした。

全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡事務局長は「本来の政務活動に使われたのか疑問を抱かれかねない。インターネットでの領収書の公開など抜本的な対策を進める必要がある」などと話しています。

横浜市議会議長「今の金額でも足りない」

富山市議会に次いで政務活動費の使用率が高い99.3%だった横浜市議会は、月額95万3000円の議員報酬のほかに、議員1人当たり月額55万円の政務活動費が支給されています。

横浜市議会の梶村充議長は、NHKの取材に対して、「各会派や個人の議員がそれぞれ独自に中身を判断して使っているし、会派がしっかりとした会計責任者をおいて、外部の人に見せて精査している」と述べました。そして、梶村議長は、「現実には、今の金額でも全然足りていないし、議員活動として使っているとマイナスだ。横浜市は市民が373万人いて、私たちは相当タイトに仕事している。金額については、そのタイトな仕事に合わせていただいていると思っている」と述べ、政務活動費の使い方には問題はないという認識を示しました。

全国で相次ぐ不正

政務活動費をめぐっては、おととし兵庫県議会の元議員による一連の不正が発覚し、注目を集めたあとも全国の地方議会で不正が相次いで見つかっています。兵庫県議会の元議員による一連の不正では、元議員が日帰り出張をしたとするうその報告などを344回にわたって行い、910万円余りの政務活動費をだまし取った罪に問われ、ことし7月、執行猶予つきの有罪が確定しています。この事件をきっかけに政務活動費に注目が集まり、全国の地方議会では、帳簿や活動報告書の提出を義務づけたり、領収書をホームページで公開したりするなど、不正防止のため制度の運用を見直す動きが広がりました。

しかし今回、富山市議会では、私的な飲食費など、不正な支出が少なくとも3300万円にのぼることが発覚し、議長や会派の元会長など9人が辞職しました。富山県ではほかにも県議会議員や高岡市議会議員の不正が発覚しています。

また徳島県議会では元議員が、政務調査費などの収支報告書にねつ造した領収書を添付し、560万円余りをだまし取ったなどとして、ことし7月に在宅起訴され、その後の裁判で起訴された内容を認めました。さらに山形県議会では、元議員が本来は認められない飲食費に政務活動費を使った可能性を指摘され、9月になって辞職しています。

富山市議会 悪質さ目立つ

これまで明らかになった政務活動費をめぐる富山市議会の一連の不正では、元議長が領収書を出した店に不正を明かさないよう口止めをしたり、本来、不正防止を指導すべき会派の幹部が後輩の議員に不正を指示したりするなど、悪質さが目立っています。

富山市議会の会派が過去5年間に不正に受けとった政務活動費はこれまでの調査で少なくとも3300万円余りにのぼると見られています。このうち市田龍一元議長は、実際には購入していないプロジェクターの代金などとして30万円余りを受け取ったことを認めました。市田元議長は領収書を出した店に対し今月上旬になって「これから購入するのでこの件は腹に収めてほしい」と不正を明かさないよう口止めしていたということです。

また合わせて700万円以上を不正に受け取ったとされる中川勇元議員は、ことし6月まで会派の会長を務めるなど本来、会派内で不正防止を指導する立場のベテラン議員でした。しかし、会派の後輩に指示して資料の印刷代を水増しして請求させその分を自分が受け取っていたということです。

こうした実態について、全国市民オンブズマン連絡会議は「会派ぐるみや店ぐるみなど組織的に不正をはたらくと外部によるチェックでは発覚しにくくなる。長年の慣行だったことが疑われる」としています。

京丹後市議会 不正防止の独自の取り組み

政務活動費の不正が相次ぐ中、京都府の京丹後市議会は、不正防止のため独自の取り組みを進めています。

京丹後市議会では去年4月から22人の議員1人当たり、月額1万5000円、年間合わせて396万円を上限に政務活動費が支給されています。政務活動費の支給方法を検討していたおととし、隣の兵庫県で県議会議員による政務活動費の不正使用が発覚し、徹底した不正防止策を導入することにしました。政務活動費を使用後に支給する「後払い方式」です。多くの自治体では会派や議員に政務活動費を前払いし、余った活動費は返還する仕組みになっていますが一度受け取った活動費を返したくないために領収書を偽造するなどの不正を行うケースが見られました。このため市議会では議員が所属する会派に実際に使った費用を報告させ、議会事務局が審査したうえで支払うことにしました。
また市議会では、政務活動費の使いみちを調査研究や研修、陳情など5項目に限定し、不正が相次いでいる飲食費や事務所の経費に使うことは認めていません。

さらに議会事務局では政務活動費の請求を74項目にのぼる独自の規則や基準に基づいてチェックし、不適切だと判断したものは会派に差し戻しているほか、領収書などの資料をホームページで公開し市民がチェックできるようにしています。こうした取り組みによって、昨年度、請求された総額のおよそ1割にあたる23万円余りが不適切な支出だとして支給されず、市議会全体の政務活動費の使用率は57%だったということです。

制度の導入に向けて検討にあたった特別委員会の松本聖司元委員長は「いちばん大切なのは、お手盛りではないということを市民にしっかりと示し、疑いを持たれないような制度にすることだ。完全後払いにしたことで、議員が、政務活動費が公金であるという意識をしっかり持てるようになった」と話しています。