News Up 食べればびっくり! ネットで広がる「未利用魚」

News Up 食べればびっくり! ネットで広がる「未利用魚」
ギマ、テングハギ、ナンヨウカイワリ。聞き慣れないかもしれませんが、すべて魚の名前です。いずれも漁獲量が少ないなどの理由で、市場に出回ることはほとんどなく、未利用魚と呼ばれています。ところが最近になって、この未利用魚を味わうことができるようになってきています。未利用魚が利用されている現場を取材しました。
漁獲量が少なく、まとめて市場に出すことができないため海に戻したり、漁業者が自宅で食べたりする。あるいは、ある地域でしか食べられず、ほかの地域に出回ることがないといった魚が未利用魚と呼ばれています。

未利用なのに、ネット上にはこんな書き込みがされています。
「未利用魚、こんなおいしい魚たちはいませんよ」「珍しい魚が食べられる定食屋へ行きました。煮魚定食で出てきたのはギマという魚らしい。カワハギみたいで肝が美味しい」。

未利用魚って何?

漁獲量が少なく、まとめて市場に出すことができないため海に戻したり、漁業者が自宅で食べたりする。あるいは、ある地域でしか食べられず、ほかの地域に出回ることがないといった魚が未利用魚と呼ばれています。

未利用なのに、ネット上にはこんな書き込みがされています。
「未利用魚、こんなおいしい魚たちはいませんよ」「珍しい魚が食べられる定食屋へ行きました。煮魚定食で出てきたのはギマという魚らしい。カワハギみたいで肝が美味しい」。

積極的に売り込みを

今、未利用魚を活用する取り組みが全国各地に広がっています。その1つが、山口県萩市の「萩の地魚もったいないプロジェクト」です。平成21年から地元の漁協や道の駅が取り組んでいます。萩漁港では、アマダイや真ふぐ、ケンサキイカなどおよそ250種類もの魚が水揚げされます。しかし、一定の漁獲量があるにもかかわらず、あまり市場に流通していない、未利用魚が多くありました。こうした未利用魚をアピールして価値を高め、漁業者の収入増加につなげようと、プロジェクトが始まりました。

プロジェクトのホームページには、ヤズ、ミズカマス、ノメリコ、マンサクなど、聞き慣れない魚の名前が並び、そうした魚を食べられる飲食店や加工品が紹介されています。プロジェクトに参加している道の駅の「萩しーまーと」によりますと、取り組みが始まった当初は、ほとんど知られていなかったのに、狙いどおりに一匹当たりの値段が2倍近くになった未利用魚も多いということです。

IT活用で広がる情報

ITを活用して、飲食店に未利用魚を届けようという取り組みも始まっています。東京のIT企業、フーディソンが立ち上げた「魚ポチ」というサイトには、4000店舗以上の飲食店が登録しています。全国各地の漁協などが、水揚げした魚の情報を入力すると、登録している飲食店にその情報が配信されます。飲食店は、サイトを通じて午前3時までに注文をすると、早ければその日の昼ごろには注文した魚が届く仕組みで、一匹からでも注文できます。

このサイトでは、未利用魚を積極的に取り扱っています。このうち、アオハタは、長崎県西海市でのタコ漁の際に、一緒にたこつぼに入っているものが水揚げされます。このアオハタをサイトに掲載したところ、注文が入り、東京のレストランが出されたところ、「こりこりして美味しい」と客の評判も上々でした。この店にとってアオハタは今ではおすすめメニューの1つだそうです。
スマートフォンなどでの注文が可能で、飲食店からは「仕入れ時間の短縮につながった」「産地の珍しい魚が入手できるので、メニューの幅が広がった」といった声が寄せられています。

すしネタにも その思いは

ネタで勝負するすし店にも未利用魚が広がっています。東京都墨田区にある宅配専門のすし店「京山」がこれまでに取り扱ってきた魚は、およそ500種類。その多くが未利用魚です。店主の朝山議尊さんは、ツイッターや店のホームページで、テングハギ、イトヒキアジ、ナンヨウカイワリ、アカグツなど、入荷した数多くの未利用魚を写真入りで紹介しています。店の人気のメニューは、こうした未利用魚と、定番のマグロやエビなどを組み合わせたセットだということです。

朝山さんが未利用魚を取り扱うようになったきっかけは、地方の漁港でこうした魚が水揚げされているのに、市場に出回ることなく捨てられていることを知ったからでした。朝山さんは「どの魚も、漁業者がおいしいと太鼓判を押すものばかりなのに、もったいない。市場に出回って売れるようになれば、漁業者の収入の増加につながるのに」と考えました。

それから20年。中には、骨が多くさばくのに時間がかかる魚や、食べられる部分が2割ほどしかないものなどもありますが、朝山さんは未利用魚を中心に、すしを握り続けています。
魅力的な未利用魚を1人でも多くの人に知ってもらいたいと、朝山さんはツイッター、フェイスブック、店のホームページなどを使って、新鮮な未利用魚が入荷したことを発信し続けています。

年に数回しか手に入らない魚もあるということですが、朝山さんは「どの魚もおいしいものばかり。未利用魚を食べることで、魚への興味を深めてもらい、さらには漁業者の収入の増加にもつながります。まだまだ、おいしい魚がたくさんあるという私自身の好奇心も尽きません」と話しています。

漁業資源の保護にも

水産白書によりますと、魚介類の国内の消費量は年々落ち込んでいて、平成13年度に1人当たりおよそ40キロだった年間の消費量は、平成26年度にはおよそ27キロと7割程度までに減少しています。その一方で、マグロやウナギなどは資源保護が課題となり、漁獲が管理や制限されるなどの事態になっています。
こうしたアンバランスな状態を改善するためにも、未利用魚に注目するべきだと考える人もいます。東京海洋大学大学院で、海の資源回復などについて研究し、未利用魚などのさばき方を教えている阿高麦穂さんは「未利用魚の中には、比較的資源量が多いにもかかわらず、加工に手間がかかるなどの理由で市場に出回っていない魚も多いのが現状です。知名度の低い魚でもおいしい魚はたくさんあります。こうした魚が流通していけば、市場に出回ることが多いのに、漁獲量が減っている魚の資源保護にもなり、魚の消費拡大につながると思います」と話しています。

福井県で未利用魚を使った丼を飲食店で提供したり、東京都内にも未利用魚が食べられる店がオープンしたりするなど、各地で未利用魚を食べてもらおうという動きが広がっています。ふだん名前を聞いたことがない、でも味は絶品の未利用魚。この機会にぜひ、味わってみてはいかがでしょうか。