安全保障のプロから見てトランプは危険だ

元共和党高官が不支持の理由を語る

――私のような米国人は、最近海外を訪れると必ずと言っていいほど、「そもそもどうしてトランプ氏が大統領候補になるようなことが起きたのか」と質問されます。それだけ、理解に苦しむことが米国で起きているのでしょう。

マイケル・グリーン(Michael Jonathan Green)/戦略国際問題研究所(CSIC)アジア日本会議上級副議長、ジョージタウン大学エドモンド・ウォルシュ・フォリン・サービス校准教授。2001~2005年には国家安全保障会議(NSC)スタッフを務めた(写真はCSISのホームページより)

現状について説得力があると思われているのが、「中間層の収入が伸び悩んでいる結果、人々が困窮しているため」という説だ。が、米国民がトランプ氏を支持している主因は経済的なものではないとする、多数の学術的研究や調査がある。つまり、経済ではすべてが説明できないということだ。

こうした中で、もう一つ人気があるのが「ある一定の移民排斥主義や人種差別主義は古くから米国にはあった。社会的変化が原因で、今それが暴発している」という説。しかし実際には、過去数年間で不法移民は減っている。

私はキャニオン・カレッジという、保守的な教養大学を出ている。同窓生の多くは医者や中小企業の経営者で3カ月前はほぼ全員がトランプ氏を支持していたが、いまは誰も支持していない。つまりトランプ氏は、大学教育を受けた白人男性の間で支持を失いつつあるということだ。

トランプ現象の世界へのインパクトは大きい

トランプ現象は、米国だけのものではない。英国のEU離脱、欧州で起こっているテロや排斥的な動き、日本、韓国、中国で見られる国粋主義――これらすべては、アイデンティティ問題と情勢不安から生じている。米国は米国憲法において独裁政治に対するチェック機能があることから、こうした国の一部よりはましな状態にはあるといえるが、世界での米国の役割を考えると、米国で起こっていることのインパクトは大きい。

共和党支持者は元来、「アメリカ例外主義者」で、米国の強大さや(世界における)リーダーシップを信じている人たちだ。トランプはこうした人々に対して「われわれは、今は負け犬だが、自分が大統領になればまた勝つことができる」と伝えてきたわけだが、ロナルド・レーガン元大統領やブッシュ前大統領も同様の手法で大統領に選ばれている。

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