挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
SCP Containment Breach[非公式] 作者:ペイルカッツェ

プロローグ

2/3

SCP-173

「9341、作業だ」
 白いコンバットスーツに黒いプロテクターを着込んだ男が部屋の外から呼びかけてきた。
 低い声だった、三十代前半くらいだろう。
 腕にアサルトライフルを抱えていた。
 兵士だろうか。
「作業?」
「その書類の通りだ、早速だがちょっとした掃除に参加してもらう。ついて来い」
 男に言われた通りに、部屋の外に出てついて行く。
 廊下にはいくつものドアがあり、その内の一つから出てきたが、それはまるで刑務所の様だった。

 しばらく男について行くと、別の男が後ろからついて来た。
 見た目は前に居る男と何も変わりはない。
 ただ、後ろを見た時「前を向け」と若い声で言われた。二十代前半の声だった。
 しばらく歩くと、左右が吹き抜けになった部屋に来た。
 どうやらここは二階部分で、一階の方は休憩室になっている様だった。
 すると、前にいた男が立ち止まり「ここだ」と言った。
 黒いスライド式の自動ドアがあり、横には看板が貼られていた。
「SCPー173 object class:Euclid」
 Euclid?
 遥か昔の数学者だったような気がする。
 とりあえずドアの横にあったボタンを押そうとしたが、ドアは自動的に開いた。
 ふと、ドアの右斜め上を見ると監視カメラがあった。
 なるほど、常に監視されている様だ。
 ドアを通り、奥へ進んだ。

 その先は二階層の部屋になっていて、一階から二階に上がれそうな所は見当たらなかった。
 どうやら二階に責任者が居るようだ。
 一階には自分と同じオレンジ色の服を着た、おそらく死刑囚であろう人物が、重々しい鉄製のドアの前に二人いた。
 その内の一人が聞いてきた。
「お前、初めてか?」
「あぁ……何をすればいいんだ?」
「掃除だ、だがこの中の一人にしかできない」
「?どういう事だ?」
「時間がない。簡単に説明すると、目を離しちゃいけないやつがこのドアの先に居る」
「危ないやつなのか?」
「かなり危険だ。やつは誰も見ていない時だけ自由に動ける、一瞬だ」
「何がだ?」
「首をへし折られるまでさ」

 ドアが横に開き始めた。
 ドンドンドンドンと機械の音が鳴る。
 開いた先は広めの部屋だった。
 奥に何かがいた。
 人間の様な形をしていて、壁の方を向いて立っていたが、人間と呼ぶには程遠い物だった。
 周りには赤黒いものが撒き散らされていた。
 これを掃除するようだ。
 慎重に中に入ると、ドアが閉まった。
『ガガ…全Dクラス職員の内、6732と9341は7435が作業を終了するまで…対象…ガ…173を見続けろ……二人で交互に瞬きをしろ…ガガガ』
「俺が合図したら瞬きしろ、いいな?」
「分かった」
 すると、閉まったはずのドアが開き始めた。
『おい…!何故閉まらない!?…ガ…システムの不調……いや!079です!…ガ…小癪な!作業中止……おい!』
 目の前が暗くなった、停電だ。
 電気が点いたかと思うと、7435と呼ばれていた男が倒れていた。
 そのそばには173が立っていた。
 すると、誰かに腕を掴まれ引っ張られた。
 振り向こうとしたが、「振り向くな!奴を見続けろ!」と指示され、振り向けなかった。
 声からして、6732だった。
 173を見ながら、収容用の部屋を出る。
 また電気が消えた。
「もう駄目か……!?」
 再び電気が点いた時、追加の死者は出なかった。
 バババババッ
 銃声がした。
 二階部分で兵士が173と戦っている。
 ドゴォン……
 大きな音を立てて、電気が落ちた。
 銃声が止み、バキッと何かが折れる嫌な音がした。
 今度はすぐに非常灯が点き、視界を確保する事が出来た。
「マズイことになったな……」
「これからどうなるんだ?」
「財団共は放送で『079』と言っていた。もしもそれがSCP-079の事なら、状況はこれからもっと酷くなる」
「079は何なんだ?」
「今は説明出来ない、とりあえずここから逃げよう。まだ近くに173が居るはずだ」
 慎重に173の部屋から出た。

 こうして暗い施設からの脱出は始まった、いや。
 始まってしまった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ