伝説の編集者・鳥嶋和彦がみた“手塚治虫”と“ちばてつや”最大の違い
80年代、鳥山明を世に送り出し、90年代後半には低迷期の『週刊少年ジャンプ』を立て直した伝説の編集者・鳥嶋和彦さん。最初から編集者の視点で手塚治虫作品を読んできた鳥嶋さんが分析する、漫画家・手塚治虫とは? 『手塚治虫文化賞20周年記念MOOK マンガのDNA―マンガの神様の意思を継ぐ者たち―』に掲載されたインタビューの一部を、特別に公開する。
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鳥嶋さんいわく、手塚治虫は「マンガ界のエジソン」。
「マンガの発明家だね。手塚さんがコマ割りを発明した結果、今の日本のマンガがある。フランスにはバンドデシネがあり、アメリカにはアメリカンコミックがあるけど、コマ割りはない。だから動きがないし、スピード感がない。日本のマンガはコマの展開で動きを一瞬にして見せられる」
集英社に入社し、「週刊少年ジャンプ」のマンガ編集者になるまで、「マンガは嫌いだから」ほとんど読んでいなかったという鳥嶋さん。
「だから僕はマンガを分析できたんだと思う。とにかくたくさん読んで、読みやすいマンガだけを残していったら、手塚さんとちばてつやさんだけが残った」
手塚治虫とちばてつや。二人を比較すると「ストーリーを描きたい手塚治虫」と「キャラクターを描きたいちばてつや」になるという。
「手塚さんがね、“大河ドラマ”という言葉の意味を話していたことがあって。『まずポツッと雨粒が一滴落ちて、サーッと雨が振ってくる。それが川に流れ込んで、最後は海に行く。たった一粒の雨が海にまで行きつく……それが大河ドラマなんだ』と」
「すごいなと思ったね。最初から大きな何かを狙って描くのではなくて、ある1点が次につながることでドラマになっていく。『火の鳥』なんかは、まさにそうやってできた作品だと思う」
そして、そのストーリーを、手塚は最も効果的なコマ割りで見せていく。
「コマ割りがものすごく利にかなっていてうまいんだよねえ。今のマンガって1ページ3コマとか、1コマだけとか、大きい絵で見せるものが多いんだけど、手塚さんは基本的に1ページ6コマとか8コマで割っている。だから1話あたりの情報の濃縮度がすごいんだよね。『ブラック・ジャック』とか、僕は好きではないんだけれど(笑)、あのページ数で、1話完結で毎回描けるっていうのはやっぱり超人だよ」
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