【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送った。ただ、記者会見したイエレン議長は「利上げの条件は整ってきた」と改めて指摘し、年内1回の追加利上げを中心シナリオとして見込んでいることを明らかにした。市場では次回の利上げ時期を、12月と見込む声が増えている。
短期金利の指標であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標は年0.25~0.50%で据え置いた。FRBは昨年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切ったが、世界同時株安や米雇用の一時的な減速などで、今年1月以降は6会合連続で追加利上げを見送った。
イエレン議長は8月末の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で「利上げの条件が整ってきた」と述べ、早期の利上げを示唆してきた。今回の記者会見でも同じ表現を使いつつ「物価や雇用面をみても、経済の過熱を示すものはない」として、利上げを見送った理由を説明した。
今回の利上げ見送りには、投票メンバー10人のうち3人が反対票を投じて利上げを主張し、FOMC内でも意見が大きく割れた。FRBが重視する雇用情勢は、直近3カ月の就業者数の伸びが月平均20万人を超えるなど、堅調さを保っているためだ。イエレン議長も記者会見で「景気の拡大ペースは上向いている」と強調した。
ただ、イエレン氏は同時に「雇用にはまだ緩み(スラック)が残っている」とも指摘。失業率は4.9%と横ばいが続き、パート労働者の数も多いため、労働市場には一段の改善余地があるとみる。賃金の上昇圧力も強まらず、物価上昇率は1.6%と目標の2%に向けて足踏みが続いている。
FRBが利上げを見送ったのは、金融市場の織り込み不足も理由の一つだ。イエレン議長が早期利上げを示唆した後も引き締め観測は高まらず、今回利上げに踏み切れば世界市場が混乱するリスクがあった。
FOMC後に公表した政策金利見通しでは、メンバー17人(金融政策の投票権のない7人を含む)のうち10人が「年内1回の利上げ」を見込み、中央値となった。2017年は2回の利上げが中央値だ。前回6月時点では年内2回、来年は3回を想定しており、利上げペースは一段と減速した。年内のFOMCは11月と12月の2回で、市場参加者はイエレン議長の記者会見がある12月の利上げを有力視している。