- はじめに -
この記事は以下
『コンピューターで「脳」がつくれるか』(2016/9/27 五木田 和也)
を読んだ所感をまとめたものです。
- 作者: 五木田和也,青木健太郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2016/09/27
- メディア: 単行本
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未購入の方やこれから読むぞという方、また読んだので語りたいという方向けに記録として残すものです。
ちなみにこの記事の筆者は、情報工学を専攻し機械学習を研究、現在エンジニアをやっている人間です。
そのような視点から書いているという前提をご理解下さい。
- 読了難度について -
まず、テーマが「コンピューター」「人工知能」「機械学習」という事もあり「一歩踏み出しにくいな」という方も居ると思います。
個人的には、そういった人にこそ薦められる書籍です。
実際に筆者の @kazoo04 は著書について以下のように述べています。
いやこれは本当に初心者向けのやつなので…うちの母親でも読めるくらいの難易度を目指したよ
— かずー (@kazoo04) 2016年9月9日
できる限り簡潔に、かつ専門用語を最小限に書かれてあるイメージです。
難しい部分は一般的な体験や現象に紐付けて説明されており、「あ、これ経験した事ある!」という形で頭に入ってきやすい文章だと思います。
また、かわいいイラストによる解説も魅力的です。とてもかわいいです。
僕はこれが好きです。
向かう相手を考えずクソリプを飛ばして噛み付かれてしまうツイッタラーみたいですね。
もちろん、脳や機械学習モデルの模式図も示されますが、内容を細かくセクションで区切り、難解な点は何度も詳しく説明が入るよう工夫されていると思います。
このように言うとコラム本のようなイメージですが、注釈が丁寧に付与されており、人工知能関連の研究を知り、未来を考えるための最初の書籍として最適だと思います。
- 満足感を得るために -
簡易な分、情報工学や神経科学を修めた大学卒の人等からすると、満足いかない部分もあるかもしれません。
僕自身、通勤の行き帰り30分程でほとんどの内容を読み切りました。
僕からするとあっさり軽めな内容ですが、この本の目指す目的は「知識の蓄積」というより「汎用人工知能と未来」に尽きると思いました。
主に前半のセクションでは「コンピュータと人工知能の歴史」「神経科学」「機械学習」と分かれています。
この部分は主に"汎用人工知能の話をするため"に書かれた部分だと思います。
今わかっている事実や技術について、様々な側面から書かれています。
前半は知見のような話が続き、大学の講義だと眠くなるタイプの部分かも知れません。
僕の会社の営業職をする同期にこの書籍を渡した時、この部分で深く考え込んでいました。
難しいと感じれば、まだ考える部分ではなく「へえ~こんなのがあるんだ」程度で良いと思います。
簡単と感じれば、「神経科学」「機械学習」の両面を比較しながら読むと良いかも知れません。
良いアイデアの元になったり再確認にはぴったりだと思います。
後半のセクションでは、前半の知識をもとに「汎用人工知能」の生成について、映画やSF小説からイメージされるような所謂「人工知能」が生まれた未来について書かれています。
最後のこの部分に帰結するための前半といっても過言ではないかなと思います。
後半の汎用人工知能の議論を活発にするために、必要な知識や歴史、キーワード、小話が詰まっているといえます。
これらを意識して読むと、難しい部分や読み飛ばした部分も幸せに読めるかも知れません。
- 気になった所 -
個人的に面白いなと思った所、気になった所を紹介しておきます。
- ニューラルネットワークおよびDeep Learningの技術史が端的にまとめられている
- 脳の話に対して実例が多い
- ちょいちょい入ってくるコラムが面白い
- ブログでQ&Aしてる
- 著者と絵のメガネ野郎が微妙に似ている
- 筆者のプロフィールが真面目
- カバーを外すと専門書っぽい
- 絵がかわいい
中でも「絵がかわいい」は推したい所です。
セメントミルクのスタンプリスト https://t.co/lJaSdv5tpE これか!
— ばんくし (@vaaaaanquish) 2016年9月21日
LINEスタンプも出してるようなので僕は買いました!
可愛いしコミカルで伝わりやすいです。素晴らしい。
あとは @kazoo04 氏のブログとも連結していと面白いです。
さらに本を楽しみたければココを読めってことね。
コンテンツと金を作るのが上手いなあ…
- 僕が思う汎用人工知能と未来 -
僕は大体本に書いてある通りの事を考えてます。
まあ著者と親交が深いというのもありますけど。
仕事を人工知能にまかせて、自動運転が実現して、世界がアップデートされていく。幸せだと思います。
自動運転とかよく批判されますけど、「自動化」と捉えれば何てことはないんですよ。
洗濯機が自動で洗濯してくれるように、ドアが自動で開閉するように、エレベータが10階まで自動で連れて行ってくれるように、自然に生活の中に「人工知能」も入ってくると思います。
強いて言うなら、この本を読んで「もっと未来に関する議論は活発にすべきだな」と感じました。
エレベータが事故を起こした際、責任の所在はある程度明確になっています。
自動運転もお仕事も、ちゃんと議論してどこまで責任持つかとか、自動化で職業はどう変化してくかとか、未来について議論する事が大事だなと思います。
法の整備や仕組みを先んじて進めて、ドローンのように世界に遅れを取らないように。
技術が一方的に発展するだけでなく、みんなが幸せになれるように。
世界がそういう方向に向かうと良いなと思います。
- おわりに -
ここまで褒めちぎって書いて何ですが、発売前に見せてもらってチェックしたんですよ。
その時は「Deep Learningライン工みたいに表現してるけど違くね?」とか「ここ無駄多すぎね?」とか色々あったんですよ。
でもそれらを間違いなくかつ分かりやすく説明するのってすごく難しくて、本来ならば線形代数や統計の知識が居る部分を上手くコンテキストとしてまとめてるなと思います。
実際に @kazoo04 氏に反例を出して、ボコボコにしてやろうと思ったんですが、結構反例になるようなものが出せなくて大変でした。
脳とか機械学習とか結構分かってない部分もあり、適当な事言ってる人も多い状態なんですけど、この本に関してはよく考えられてるなと僕は思います。
追記ですがイラストレーターさんの名前でググると、同姓同名の方が出てくるようなのでよしなに。
凄くうれしい!
— アオキケンタロウ (@cementmilk) 2016年9月21日
でもAmazonに出てくる私の関連本の方は同姓同名のイラストレーターさんなんですよ… https://t.co/obmGXvHM6o
みなさんの知見と議論が広がれば多分著書もハッピーです。
とりあえず買おう。
- 作者: 五木田和也,青木健太郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2016/09/27
- メディア: 単行本
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