遅すぎたが、当然の決断だ。 政府がきのう、高速増殖原型炉「もんじゅ」…[続きを読む]
きちんとした説明を欠いたままの、事実上の政策転換である。そう言わざるを…
・最新の社説は朝刊休刊日を除き午前5時半ごろ更新します。(編集の都合などで遅れる場合があります)
きちんとした説明を欠いたままの、事実上の政策転換である。そう言わざるをえない。
日本銀行がきのう、金融政策の枠組みの変更を決めた。10年ものといった長期の金利の水準を操作の対象に加える。これまではマネーの「量」に主眼を置いていたが、短期・長期を併せた金利をコントロールする方法に切り替える。
「年率2%の物価上昇」を目標に掲げて3年半。当初は「2年で」と言っていたが、いまだに達成を見通せないなかで、目標を「できるだけ早期に実現」するために、より柔軟で持続的な対応をできるようにするのが目的だという。
日銀は今年初めにマイナス金利を導入。その後、長期の金利が急に下がり、銀行が利ざやをとれなくなったり、生命保険や年金の運用が難しくなったりした。長期金利を操作対象にするのは、金利を下げつつ、こうした「副作用」を防ぐのが狙いだろう。
だが、「二兎(にと)を追う」ようなコントロールが可能なのか。長短様々な金利の「適正な水準」をどう決めるのか。日銀の操作の手を広げることの副作用はないのか。疑問は多い。
そもそも、長期金利は様々な要因で動くため、中央銀行の操作にはなじまないとされてきた。黒田東彦総裁は、過去数年、各国の中央銀行が長期国債の買い入れを通じて長期金利を下げてきたことを挙げ、コントロールは可能だと主張する。
しかし、たんに全体的な水準を下げるのに比べ、短期から長期にわたる金利それぞれについて適正値を見極め、そこに誘導することの難易度は高い。また、長期金利を具体的な数字まで示して低水準に固定することは、局面次第で過度な国債買い入れを強いられ、財政規律を緩ませかねない恐れがある。
この日発表した「総括的な検証」で、日銀は原油価格の下落など外的な要因がなければ、従来の緩和策で2%物価上昇という目標を達成できていた、と主張した。これまでの政策そのものには問題がなく、今後も継続が可能だともいう。
しかしその一方で、緩和の「強化」と称して、枠組みを大きく変えた。
従来の政策の限界や副作用をはっきり認めないまま、次々と新しいメニューを打ち出してゆく姿勢は、「建て増しを重ねた旅館」のような迷路を生む。政策の浸透が妨げられれば、目標の実現も遠ざかる。
原点に立ち戻った丁寧な説明を日銀に求める。
(PR)くらべてお得!