【北京=中村亮】経団連の榊原定征会長らが参加する経済界の訪中団は21日、北京の人民大会堂で中国の張高麗副首相と会談した。榊原氏は「日中経済関係の発展の基盤として良好な政治・外交関係が不可欠だ」と述べた。日本の対中投資が低調なのは外交関係の悪化が一因として「(政治の)さまざまな段階での対話が実現することを期待したい」と強調した。
日中経済協会の宗岡正二会長(新日鉄住金会長)は「過剰生産能力の削減とゾンビ企業の淘汰を引き続き進めてもらいたい」と語った。張氏は訪中団が230人と最大規模となったことに関し「両国の経済協力をさらに推進したいという意志の表れとして高く評価する」と述べた。
同日開いた中国の企業家との会合でも日本側から中国に構造改革を求める声が目立った。三井住友信託銀行の高橋温氏は1990年代の日本の不良債権問題を踏まえ「負の循環を断ち切るには早期に着手することが必要だ」と強調した。不良債権問題が深刻とされる中国の金融機関に早期解決を暗に求めた。
中国華陽経貿集団の段志強常務副総裁は「今の中国は(供給過剰に陥った)1970~80年代の日本に似ている」と説明。中国側から構造改革の推進に向けて日本の経験が参考になるとの声が目立った。
ただ構造改革で最大の懸案事項である中国の鉄鋼の過剰生産問題ではかみ合わない場面もあった。宗岡会長は国家発展改革委員会との会合で「安値輸出で世界の鉄鋼市場へ深刻な打撃を与えていることを憂慮している」と発言した。国家発展委幹部は改革は進めるとしつつも「一部の国で宣伝されているほどの(生産過剰の)状況ではない」と反論した。