企業収益が好調で雇用統計が改善していても、日本銀行は金融市場から追加緩和を迫られてきた。「インフレ目標を達成するまではお金の量を増やし続けるのだろう?」と。景気が停滞していれば、なおさらだ。
こんな「緩和の罠(わな)」から逃れたい、というのが日銀の本音だろう。長期金利の目標を設けた政策修正は、その泥沼から抜け出す一歩となるか。ポイントは、異次元緩和の大黒柱「量的緩和」を今後、事実上縮小できるかどうかである。
黒田東彦(はるひこ)総裁は、市場に大量のお金を流せば必ず物価は上がる、と説明してきた。だが物価は上がらず、この3年半で結果ははっきり出た。そしてついに日銀は軸足を「量」から「金利」に戻すことになった。
ただ、国債を買って大量のお金を流す政策も続ける。これをやめられないのは、日銀が事実上財政の支え役になってしまっているからだ。先進国で最悪の日本の赤字財政は、いまや日銀の量的緩和のおかげで成り立っている。
深刻なのは安倍政権がそれに甘え、財政規律をゆるめていることだ。2回にわたる消費増税の延期、大規模な経済対策である。黒田総裁は、こうして財政が過剰に日銀依存を強めていくのを恐れ、ひとまず「量」の拡大に歯止めをかけた。
それにとどまらず、将来の緩和縮小に向けた備えも必要だ。たとえ政権の求めがあっても、追加緩和を乱発しない強い覚悟も求められる。日銀が政権の僕(しもべ)となれば、いずれ高い代償を払わされるのは国民である。(編集委員・原真人)
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