零式:天動編は着実に“クリアーに近づいている”感覚を味わえる難度にしたい パッチ3.4『FFXIV』吉田直樹氏インタビュー

『FFXIV』の次期大型アップデートのパッチ3.4が2016年9月27日に公開される。注目の新規コンテンツの中身やメインストーリーの見どころを、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに直撃。その模様をたっぷりとお届けしよう。

●バトルコンテンツを中心に見どころを直撃!

 『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)プレイヤー待望の大型アップデート“パッチ3.4 魂を継ぐ者”(以下、パッチ3.4)がいよいよ2016年9月27日にリリースされる。拡張パッケージ『蒼天のイシュガルド』が発売されて以降、2回目のアイテムレベル上限が引き上げられる今回のパッチの注目すべき点を、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏に詳しく聞いた。


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▲プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏。新要素の最終調整や東京ゲームショウ 2016の準備に追われる中、取材陣の質問にいつも通り丁寧に答えてくれた。

 今回の大型アップデートのポイントは、高難度レイドダンジョン機工城アレキサンダー零式:天動編(以下、零式:天動編)や極ソフィア討滅戦をはじめとする、注目の新規バトルコンテンツがいくつも追加されること。そうした戦闘に関わる部分をメインに聞きつつ、“竜詩戦争 完結編”に続く新たなシーズンが開幕するメインシナリオにも鋭く切り込むことで、パッチ3.4の全体像の解明を試みた。

 なおインタビューに先立って、我々取材陣は完成目前のパッチ3.4のトレーラームービーをひと足先に鑑賞させてもらっている。吉田氏との受け答えの中で、映像に関する話題がたびたび登場するが、こちらは同氏がチェックを行う前の“仮バージョン”を前提としており、実際の映像とは異なる部分が存在するのでご了承願いたい。


●ロゴのデザインの変化は“新章”に突入したことの証

──パッチ3.4のロゴのデザインが新しくなりましたが、そのあたりについてまずはお聞かせください。

吉田直樹氏(以下、吉田) それほど強く意識したわけではないのですが、パッチ3.1から3.3にかけて竜詩戦争が続いてきたため、タイトルロゴを制作している皆川(裕史氏。リードUIアーティスト)がこれまで統一感のあるデザインに仕上げてきました。今回、シナリオが新たな章に突入することもあって、イメージをできるだけ「変わった」という印象にしたいという意識があったので、その部分が毛色の違いとして表れたのかもしれません。


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▲ロゴに使用されているアルファベットのフォントが、パッチ3.3以前よりも少し太くなっているのがわかる。

──それは皆川さんのアイデアですか?

吉田 ロゴの作成に関しては、僕からタイトルに込めた意味とパッチ全体の印象を、皆川に伝えています。パッチのイラストも僕が発注しているので、メインストーリーの印象を作画担当スタッフに話したうえで雰囲気を決めます。それを受けてイラストのイメージを確認のうえで皆川が「今回はこういうタイプのデザインとフォントにしましょう」という感じでいくつかの案を提出してくれる……基本的にはそういう考えかたになっています。誰が主導しているというよりも、パッチのイラストを描いている担当者と皆川と僕の3人でできあがっていく感じです。


●暁の血盟と闇の戦士によるバトルが実現!

──今回のメインシナリオは、ボリューム的にどれくらいでしょうか?

吉田 パッチ3.3はカットシーンを増やしてコンパクトにまとめましたが、今回はひさびさに長いです。ただし余計なお遣いなどは入っていないので、じっくり楽しんでいただけると思っています。お時間のあるときにゆっくり堪能していただければうれしく思います。

──トレーラームービーの中でアリゼーがソファに横たわっていましたが、あの場面はパッチ3.3のメインシナリオの最終シーンと何かリンクしているのでしょうか?

吉田 しています。あの後の展開だと思ってもらえれば大丈夫です。

──ということは、今回もサンクレッドが何らかの形で関わってくると。

吉田 お楽しみにということで(笑)。パッチ3.4のメインシナリオはスロースタートと言いますか、「あら、こんなところから始まるんだ」みたいな冒頭になっています。そこから一気に急転直下という感じで、新しい物語が始まっていきます。

──シナリオの裏側でアシエン・エリディブスが糸を引いているように思えるのですが、彼は今回どのような立ち位置になるのでしょうか?

吉田 彼は自分自身を“調停者”と呼んでいます。その“調停”という意味がパッチ3.4で一段、「なるほど」とわかってもらえるのではないかなと。

──黒法衣との違いも明確になってくると。

吉田 そうですね。これまでシナリオの設定をしっかり見てきた方なら、そろそろ明確な線引きができるかもしれません。

──闇の戦士のメンバーは、映像に登場した5名(ナイト、戦士、黒魔道士、白魔道士、吟遊詩人)で全員なのでしょうか?

吉田 さて、どうでしょう(笑)。プレイヤーは、原初世界のエオルゼアで光の戦士として戦っていますが、(闇の戦士たちも)超える力を有している部分がカギになってきます。

──今回の映像では、闇の戦士たちは風属性や火属性と思しきクリスタルを掲げていました。彼らは闇のクリスタルの加護を得ていると思っていたのですが、あのシーンはそうした部分に関わってくるのですか?

吉田 たぶん今回出ている映像では、あれが最大のヒントだと思います。

──闇の戦士は光の戦士の対比であるため、闇のクリスタルの加護を受けているものだと勝手に思い込んでいました。

吉田 その認識は正しいとは思います。ですが、彼らが持っているのは闇のクリスタルではないです。

──ムービーに登場していた仮面の男の声は、ラウバーンと同じように感じられましたが……。

吉田 違います(笑)。

──そうですか(笑)。ではつぎに、闇の戦士たちが光の戦士と対峙していた場所は、イフリート討滅戦が展開されるバトルフィールドのように見えたのですが、今回のメインシナリオで双方が刃を交える場面は訪れるのでしょうか?

吉田 あります。バトルコンテンツになっています。

──どのようなものでしょう?

吉田 基本的にはソロ向けのコンテンツです。暁の血盟対闇の戦士みたいな感じになります。ムービーで映し出されたあのイメージのままバトルが開始され、その場にいるメンバーは全員、戦闘に参加します。


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▲このシーンの後に、闇の戦士たちと一戦を交えることになる。

──おお、それは楽しみです。そういえば私の身近では、「大迷宮バハムートを事前にクリアーしないと、セリフの分岐によりメインクエストを十分に楽しめないのでは」という話になっています。大迷宮バハムート内での出来事が、今回のシナリオに直接絡んでくるのですか?

吉田 ちょっと誤解を生んでしまったようで申し訳ありません。大迷宮バハムートのクリアーフラグでの分岐は、簡単に言うと“アリゼーが光の戦士に対して、どれくらいデレてくれるかの違い”です(笑)。彼女は大迷宮バハムートの踏破を光の戦士たちといっしょに成し遂げているので、アリゼーが話す言葉は(踏破の有無によって)変わってきます。彼女自身は大迷宮バハムート内で起きた出来事を必ず経験している想定ですが、その場にプレイヤーがいたかどうかによって、会話シーンに違いが出てくるわけです。今回はプレイヤーに接する機会が多く、分岐も多岐に渡ります。宿屋の愛用の紀行録でイベントを観るときは、大迷宮バハムートを踏破していない側のルートが再生されるので、もしこだわるのであれば、事前にクリアーしておいたうえで“デレて”くれるアリゼーと面会してください。とはいえ、どちらの分岐に進んだ場合でも話の本筋が変わることはないので、そこはご安心ください。もちろん重要な情報が欠落するということもありませんが……“デレた”アリゼーのほうがかわいいとは思います(笑)。

──(笑)。ということは、大迷宮バハムートを踏破した側のイベントシーンは愛用の紀行録で再生できないため、“デレた”アリゼーには1回しか会えないと。

吉田 そうです。現状、宿屋で再生するカットシーンは、どうしてもクリアーフラグが参照できないので……。

──いままで回収されていないシナリオとして、忽然と姿を消したバル島と、地中に埋もれたままのオメガウェポンのふたつがあると思うのですが、こちらはいつぐらいに形となって現れるのでしょうか?

吉田 バル島はまだ先です。クルルを深掘りするときにたぶん登場することになるかと。オメガのほうは、まだ何とも言えないです。まずはパッチ3.4をお楽しみください(笑)。


●早期攻略を目指す際は新式装備が重宝する

──アイテムレベル上限の開放についてですが、拡張によって生じるいわゆる段差は、パッチ3.2のころと同じなのでしょうか?

吉田 同じと思っていただいて大丈夫です。引き上げられるアイテムレベルの上限値は、パッチノートをお待ちください。

──聖典装備を揃えるには時間が掛かりそうです。

吉田 フルで揃えようとする場合は、取得制限があるのでそうなります。パッチ3.4で追加される新式装備がギルで取得できるため、この俗に言う“3.4新式”がまずはいちばん身近になるだろうとは思っています。機工城アレキサンダー:天動編のノーマルに通いながら、アラガントームストーン:聖典が貯まりしだい装備と交換していく……パッチ3.2公開当時と同じ流れになると思います。


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▲起動編や律動編の公開当時と同様、機工城アレキサンダー:天動編に毎週挑んで防具獲得に必要なアイテムを集めたほうがいい。

──取材班としては、新式装備と天動編のノーマルで手に入る装備のアイテムレベルが、どちらも250だろうとにらんでいます(笑)。

吉田 なるほど(笑)。アイテムレベルのヒエラルキーは(既存の流れを)崩してもまったく意味がないので、ご期待いただいているとおりになっているのではないかなと。今回の新式装備は武器もあるので、いままで以上に重宝すると思います。武器はプレイヤーのDPSをものすごく左右するうえ、新式武器に禁断のマテリア装着を行うことで、パラメータのやりくりも楽になります。(高難度コンテンツの)早期攻略を目指す方々は、新式武器を用意したほうが間違いなく楽です。

──新式武器の強さはどれくらいでしょう。

吉田 新式防具とアイテムレベルを揃えているので、武器だけが弱いといったことはありません。

──製作の難度も同程度でしょうか?

吉田 だいたい合わせました。

──いわゆる聖典武器の入手パターンも、パッチ3.2当時の伝承武器と同じですか?

吉田 伝承武器を手に入れるには、初動の段階では零式:律動編2のクリアー報酬(大容量トームストーン)が必要でしたよね。今回はそのへんも同じです。

──今回の天動編が、機工城アレキサンダーのフィナーレになるのでしょうか?

吉田 フィナーレです。

──零式:天動編の難度は、大迷宮バハムート:真成編(以下、真成編)と同程度というウワサがありますが……。

吉田 ふつうの方がコツコツ毎週レイドに通って、真成編をクリアーするにしても、2ヵ月半くらいはかかったと思いますので、あくまで高難度レイドであることと、それ相応の反復トライは必要だと思います。起動編や律動編に比べてクリアーしやすくするとは言っても、位置づけは高難度レイドダンジョンなので、なんとなくプレイしているうちに1週間で踏破できる……ということはありません。零式:律動編や起動編と比較すれば確かに難度を下げてはいますが、レイドである以上、当然ながら歯応えのある作りになっています。

──よくわかります。

吉田 ですので、感じる難度はやはり人それぞれとは思いますが、着実に“クリアーに近づいている”という感覚は、きちんと味わっていただけるように調整していきたいと考えています。ワールドファースト争いが終結するまでの期間は、これまでより少し早くなるとは思います。零式:律動編のクリアー数は、零式:起動編よりもDPSチェックを数段下げたわりに、思ったほどには伸びませんでした。ログからギミックは突破できているのにDPSが足りていないという状況が見受けられます。律動編は単純なDPSチェックをゆるくしましたが、HPチェックがきびしめなことと、プレイヤーが動かされるギミックが多いことで、今度は各ジョブアクションのローテーション維持がきびしくなりました。プレイヤースキル差が生まれやすくなってしまったので、この点を意識して天動編の調整を行っています。現在のレベル60アクションのローテーションを全部変更するわけにはいかないので、コンテンツ側で補うという考えかたをしています。

──3.Xシリーズ中での軌道修正は困難という意味ですね。

吉田 はい。根本解決を試みると「スキル回しをすべて入れ替えよう」という話になってしまいます。いまできていることを不可能にするのは、調整としてあまりよくないと思っているので、今回はコンテンツの側で“そこそこ動かされ”、かつ“落ち着いてDPSを出せる時間がそれなりにある”味付けを目指しています。零式:律動編は、レベル50当時のスキル回しが現在も続いていれば、クリアーがもっと容易に感じられたと思うのです。

──確かにそうかもしれません。

吉田 現状のレベル60のDPSは、戦闘不能後のリカバリーがレベル50の当時に比べきびしくもなっていますので、そのあたりも踏まえたうえでのコンテンツにしたつもりです。固定メンバーで週に2回くらいコツコツ練習しているパーティであれば、つぎのメジャーパッチまでには全層を踏破できるくらいのイメージです。残りの期間は、1層から4層までを毎週駆け抜けて、断章に相当するアイテムや装備の直接ドロップを狙う……そういう流れを楽しんでいただければと。高難度レイドダンジョンに参加している方たちは、おそらくそこに楽しみを見出しておられたのだと思います。

──初めてクリアーできた喜びを噛みしめつつ、翌週から周回に取り掛かる。その喜びは、確かに大きかったです。

吉田 そうしてジワジワと各部位のアイテムが揃っていき、(いち早くコンプリートを達成することで)それらを全身に装備している期間がほかのプレイヤーよりも長くなる……起動編と律動編は難度が高く、このサイクルになり難かったと反省しています。零式:律動編をつい最近になって踏破したプレイヤーも多いのですが、そうした方々は、せっかく手に入れた装備を着て戦いに出られる期間がすごく短いわけです。あるいは、たとえクリアーできたとしても意中の装備がドロップせず、毎週断章を集めているうちにつぎのパッチ公開を迎えるという状況も生じてしまいます。難度的には、過去のレイドダンジョンにたとえるよりも、そのサイクルになるようにというイメージでいます。ただし、一部のトップ層以外、早期攻略は簡単ではありませんのでご注意ください。


──無茶をすれば、全身を新式装備で固めた状態で4層の突破は可能なのでしょうか?

吉田 (零式:律動編でワールドファーストを獲得した)Elysiumの方々は、新式装備ですべての部位を固めていないにも関わらず3層まで突き進んでいましたので、今回はクラフト武器もありますし、突破できるのではないかと思います。

──トレーラームービーを拝見した限りでは、ステージ全体を使ったギミックが多いように感じられました。

吉田 ステージのギミックはけっこう多いです。固定された位置で暴れるボスもいれば、狭い場所でのやりくりが求められるタイプもいます。前回のブルートジャスティス戦では “ジャスティス合体”という仕掛けを入れていましたが、今回は変形して空を飛び、しかもそこに冒険者も乗ってしまうというメチャクチャな展開になっています(笑)。


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▲今回はステージ全体に、想像もつかない仕掛けが盛り込まれているのだ。

──騒乱坑道 カッパーベル銅山(Hard)のヘカトン・マスターマインド戦のように、足場がどんどん狭くなっていくのは、やはり時間の経過が条件になるのですか?

吉田 どうでしょう(笑)。

──個人的には、律動編よりも冒険者が動かされる機会は少ないのかなという印象でした。

吉田 パターン化のしやすさは意識しています。

──ランダムで選ばれたメンバーが動かされて、という感じではないのですか?

吉田 パターンがあるので、この場面ではみんなでここへ移動して……みたいなイメージです。練度が上がれば、そのぶん一糸乱れぬ動きが可能になり、クリアーに近づいていく。そんな感覚に近いのではないかなと。いろいろMMORPGではお目にかかれない仕掛けを多数用意しましたので「なんだこれ(笑)」と、楽しんでいただけるとうれしいです。ほかにもムービーには入っていない、シナリオと密接な関係を持つ、もうひとつ大きなネタも用意されています。ですのでシナリオもぜひいっしょに楽しんでいただければと。物語を追っていれば、(戦闘中に)起きていることがあとから理解できるはずです。

──双方が連動しているのですね。

吉田 はい。コンテンツとシナリオが連動している新しい試みです。また今回のシナリオは、すごく検証しがいがあると思います。

──本当ですか!

吉田 アレキサンダーは時間を扱う蛮神ですが、これまでのシナリオでは伏線が多いため、いまひとつスッキリできず、やや消化不良と感じられていたかもしれません。今回、それらの伏線が綺麗に回収されますので、ぜひストーリー談義や感想をお寄せいただけると幸いです。

──ちなみに最終層のBGMはどのような感じですか?

吉田 すごくカッコいいですよ。祖堅(正慶氏。サウンドディレクター)のほうから「ジャカジャカいくのか、ポコポコにするのか」と聞かれたので、「ラストだからジャカジャカにしよう」と(笑)。

──(笑)。フェーズが進行すると曲が変化したりするのでしょうか?

吉田 もちろんします。この部分は女神ソフィア討滅戦も同様で、前半は魔神セフィロト討滅戦と同様に“死闘”からスタート。後半に入ると、ガラっと曲が変わってきます。