おや、いつもと違う風景だ…JR駅ベンチ、京都滋賀で90度回転
京都府や滋賀県などのJR西日本の駅で、線路と向き合わないようベンチを90度回転させる工事が進んでいる。ベンチから立ち上がって線路方向に向かう酔客の行動パターンを踏まえた転落防止策だ。同社によると、すでに約200駅で工事を終えており、今のところ酔客の転落事故は起きていないという。
国土交通省によると、酔客が線路上やホームで電車と接触する事故は、2014年度は142件あり、02年度の53件の3倍近くに増加した。全国の駅で線路に転落した酔客は1982人(13年度)で、府中南部や滋賀を管轄するJR京都支社管内では22人に上った。
JR西日本安全研究所(大阪市)が線路に落ちた酔客の行動を防犯カメラの映像などで分析したところ、13、14年度の136件のうち、ベンチなどから「突然、線路に歩き出して転落する」ケースが57%に上った。ふらついてホーム端から落ちる事例は15%だった。
同社の各支社は昨年1月からベンチの向きを変える工事を開始。京都支社は8月末時点で全100駅中、大津や膳所、亀岡駅など27駅で全ベンチを、京都駅など11駅で一部を回転させた。府北部などを担当する福知山支社は来年3月までに全71駅中、福知山や綾部、西舞鶴、東舞鶴駅など48駅で変更する計画だ。
90度回転した福知山駅のベンチを利用した会社員増田優さん(63)=草津市=は「座って見える景色が違うので初めは違和感があった。酔っぱらいは想像がつかない行動をするが、確かに落ちにくそうだ」と話した。同支社営業課は「酔客以外にも、立ちくらみする人の転落防止につながるのでは」とする。
鉄道評論家の川島令三さんの話「飲酒運転の取り締まり強化で酔った人の鉄道利用が増え、鉄道事業者は線路への転落を見過ごせなくなった。ただ、可動柵の方が効果的で、視覚障害者の転落も防げるはずだ。」
【 2016年09月21日 23時50分 】