2016-09-21
事実関係の根拠が曖昧なので判断を一応留保するが、虚偽か相当の誇張が含まれてる感じ
この件。
朝鮮大学校「日米を壊滅」 正恩氏へ手紙、在校生に決起指示(産経新聞 9月20日(火)7時55分配信 )
これまで散々、北朝鮮に対するネガティブ情報を浴びてきた日本社会に、この記事を批判的に読むことができるかどうか、極めて怪しいと思ってますし、指摘しても無駄だと思いますが一応。
もちろん、この記事を否定する明確な根拠を持ってるわけでもありませんので、本来なら確報や他紙報道を待つべきと思いますが、この産経記事は在日朝鮮人の生命・安全を不当に脅かす内容ですので書いておきます。
要するに、今関東大震災のような災害・混乱状態になれば、この産経記事を根拠に在日朝鮮人の虐殺を煽動・企図する連中が多数現れることが十分に予想されるという懸念です。
朝鮮大学校「日米を壊滅」 正恩氏へ手紙、在校生に決起指示
朝鮮大学校(東京都小平市)が5月、日米壊滅を目指す手紙を北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に送っていたことが19日、分かった。朝大関係者が明らかにした。朝大の張炳泰(チャン・ビョンテ)学長が、朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長から指示を受け、米国圧殺運動の展開を在校生に指示していたことも判明。手紙や指示には金委員長を称賛する文言があふれており、日本政府は朝大の反日・反米教育が加速化する可能性が高いとみて動向監視を強めている。
関係者によると、手紙は5月28日、朝大で開かれた創立60周年記念行事で金委員長に送る忠誠文として読み上げられ、「大学内で米日帝国主義を壊滅できる力をより一層徹底的に整える」と明記。日米敵視教育を積極的に推し進める考えを表明した。
また、金委員長に対しては「資本主義の狂風が襲い掛かっても、平然とした態度でいられる度胸を育ててくれた」「くれぐれも体を大切に過ごされるようお祈り申し上げる」などと忠誠を示している。
一方、張氏は7月下旬、都内で開催された総連幹部会議に出席。許氏は「米国の孤立圧殺を展開中だ。金正恩元帥さまを最高尊厳として推戴(すいたい)し、民族教育事業の革新を引き起こすため総決起しろ」と指示した。これを受け、張氏は許氏の指示を朝大の幹部会議を通じて在校生に伝達した。
さらに張氏は8月、朝大教育学部など3学部の在校生約60人を「短期研修」の名目で北朝鮮に派遣した。金委員長に対する崇拝の念を北朝鮮当局からの指導を通じて、醸成させることが目的とみられる。張氏は北朝鮮の国会議員にあたる最高人民会議代議員も兼務しており、今後も金委員長を偶像化する教育を推進するとみられる。
朝大は産経新聞の取材に対し、「担当者がいない」としている。
http://www.sankei.com/politics/news/160920/plt1609200005-n1.html
この記事の根拠と呼べるものは「朝大関係者」のみで、それ以外にはソースと呼べるものが無く、あとは産経記者の憶測で構成されています。
「朝大関係者」情報
「朝鮮大学校が5月、日米壊滅を目指す手紙を北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に送っていたこと」
「朝大の張炳泰学長が、朝鮮総連の許宗萬議長から指示を受け、米国圧殺運動の展開を在校生に指示していたこと」
「手紙は5月28日、朝大で開かれた創立60周年記念行事で金委員長に送る忠誠文として読み上げられ」たこと
「朝大関係者」情報?
「張氏は7月下旬、都内で開催された総連幹部会議に出席。許氏は「米国の孤立圧殺を展開中だ。金正恩元帥さまを最高尊厳として推戴(すいたい)し、民族教育事業の革新を引き起こすため総決起しろ」と指示した。これを受け、張氏は許氏の指示を朝大の幹部会議を通じて在校生に伝達した。」
「張氏は8月、朝大教育学部など3学部の在校生約60人を「短期研修」の名目で北朝鮮に派遣した」
時系列を整理
産経記事の内容を時系列順に整理するとこうなります。
5月28日、朝鮮大学校創立60周年記念行事で金正恩宛の手紙を読み上げた。
5月、金正恩宛の手紙を送った。
7月下旬、総連幹部会議で許宗萬議長が張炳泰学長に総決起を指示した。
張炳泰学長が朝鮮大学校幹部会議を通じて在校生に総決起の指示を伝達した。
8月、張炳泰学長が在校生約60人を短期研修で北朝鮮に派遣した。
産経記事によれば、5月に送った手紙の内容は「日米壊滅を目指す手紙」であるとのことですから、許宗萬議長による“総決起”指示を受ける前に張炳泰学長は「日米壊滅を目指す」ことを公言していたことになります。前後関係にどこか違和感があります。
その翌日5月29日には創立60周年記念行事が開かれています。
ちなみに、北朝鮮ウォッチャーなる人物による創立60周年記念行事に関する記事がこれです。
【北朝鮮見本市】イベントづくしの朝鮮大学校の記念大祝祭 図書館にはマニア涙目の蔵書がズラリ
2016.06.05
東京都小平市にある朝鮮大学校で5月29日、創立60周年記念大祝祭があった。パンフレットは朝鮮語のみで、一般の日本人が入れるかは不明だった。実際行ってみると、招待状がなくても問題なく入れた。
祝典では、アントニオ猪木参院議員がゲストで登場して「ダァー!」とやり、校舎前では七輪の焼き肉が楽しめた。
近年まれに見る友好ムードに包まれた祝祭でマニアをアッと言わせたのが、図書館の開放だ。太陽のようにほほえむ2つの肖像画がかかる閲覧室ではマニア涙目の貴重な蔵書がズラリ。
そして売店への入域もOKだったが、目を引くのは大学オリジナル文具ぐらいで本国のグッズは見当たらなかった。
写真は会場と60周年Tシャツ。これからの季節、気持ち的にうれしい。この解放感、秋にある学園祭でも継続してほしいものだ。 (北朝鮮ウオッチャー、金正太郎)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160605/frn1606050830002-n1.htm
このようなお祭りの前日に、張炳泰学長が「日米壊滅を目指す手紙」を「金委員長に送る忠誠文として読み上げられ、「大学内で米日帝国主義を壊滅できる力をより一層徹底的に整える」と明記。日米敵視教育を積極的に推し進める考えを表明した。」というのはさすがに信じがたいんですよね。
7月下旬の総連幹部会議での許宗萬議長から張炳泰学長に対する総決起指示?
「決起」の意味については単純に「行動を起こすこと」の意ですが、記事タイトル「朝鮮大学校「日米を壊滅」 正恩氏へ手紙、在校生に決起指示」や記事の文脈を考慮すれば、産経記事では「日米壊滅を目指す」ための「決起」、つまり蜂起や暴動のような意味での「決起」であるかのように読者を誘導しているといえます。
しかし、「金正恩元帥さまを最高尊厳として推戴(すいたい)し、民族教育事業の革新を引き起こすため総決起しろ」の部分だけを見ると、要するに「民族教育事業の革新」のために行動せよと呼びかけてるだけで、蜂起でも暴動でもないことがわかります。
「民族教育事業の革新」のための運動だとすれば
張炳泰学長が朝鮮大学校幹部会議を通じて在校生に「民族教育事業の革新」のための総決起を指示したことも、在校生約60人を短期研修で北朝鮮に派遣したことも別に何の問題もありません。
朝鮮大学校が「民族教育事業の革新」を目指して行動を起こすことに何の問題もありませんね。
産経新聞はほぼ間違いなく意図的に「朝鮮大学校「日米を壊滅」」と「在校生に決起指示」とつなげることで、読者に対して、在日朝鮮人に対する過剰な警戒心と実態のない恐怖心を植えつけているわけですが、このような産経記事はヘイトクライムの煽動記事、あるいはヘイトクライムそのものと言っていいでしょう。
個人的な印象
朝鮮大学校って下手な学校よりも開放されてて透明性も高いと思うんですけどねぇ。
5月29日の創立60周年記念行事の様子。
朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭「メインステージ編」
これに張炳泰学長が出てきますけど「日米壊滅を目指す手紙」を読み上げるシーンはもちろんありません。ほかに松浪健四郎氏(日本体育大学理事長)とか谷釜了正氏(日本体育大学学長)とかアントニオ猪木氏(参議院議員)とか出てます。
朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭「サブイベント編」
朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭「記念芸術公演編」
朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭「学部別企画編」
朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭「スポーツプロジェクト編」
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