EU委員長「亀裂や分断」と危機感 結束呼びかけ

EU委員長「亀裂や分断」と危機感 結束呼びかけ
k10010686711_201609150701_201609150707.mp4
EU=ヨーロッパ連合のユンケル委員長はことし6月にイギリスがEUからの離脱を決めたあと初めての施政方針演説を行い、「EU内に亀裂や分断が生まれている」と危機感を示したうえで、各国に一層の結束を呼びかけました。
EUのユンケル委員長は14日、フランス東部のストラスブールにあるヨーロッパ議会で、むこう1年間のEUの課題と重点政策を示す恒例の施政方針演説を行いました。
この中でユンケル委員長は、イギリスが国民投票でEUからの離脱を決めたことについて、「EUの崩壊の始まりと懸念を示す声もあるがそのようなリスクはない」と述べ、EUが政治・経済の統合を進める方針に変わりはないことを強調しました。
その一方で「連帯が問われている中で、ポピュリズムが横行し、EU内に亀裂や分断が生まれているのは確かだ」とも述べ、イギリスの離脱や難民問題などを受けて、各国で反EUを掲げる勢力が躍進していることに強い危機感も示し、一層の結束を呼びかけました。
そのうえでユンケル委員長は、EUが市民の信頼を回復し求心力を取り戻すための政策として、若者の雇用の促進や企業の支援のため、加盟国向けの投資基金を72兆円規模に倍増することや、治安対策の一環として域外との国境管理を強化し、各国の捜査機関の連携を進める方針を示しました。

専門家「英離脱の影響 色濃い演説」

今回の施政方針演説について、ベルギーのシンクタンクでEU政策が専門のスティーブン・ブロックマンス主任研究員は、「イギリス離脱の影響が色濃い演説だった」と分析しました。
そして、雇用や治安など市民の暮らしに直結した政策が優先課題に掲げられたことに注目し、イギリスの国民投票で浮き彫りになった市民のEUへの不信感の広がりにユンケル委員長が危機感を抱いていることの表れだとの見方を示しました。
そのうえでブロックマンス氏は、「この1年はEUの運命を決める重要な年になる。EUを守るには市民に寄り添った具体的な政策が鍵になるだろう」と述べ、各国で反EUを掲げる勢力が政治的な影響力を強める中、EUにとって市民からの信頼を回復できるかどうかが最大の課題になるという考えを示しました。