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NaeNote

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台風「ちゃんと名前があるのに番号でしか呼ばれない。なぜなのか」

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巨大な台風による雲の渦巻きを上空から撮影した写真

台風「吾輩は台風である。名前はある」

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台風「解せぬ」




こんにちは、NAEです。

アメリカでは「ハリケーンカトリーナがミシシッピ川流域を・・・」と、ひとつひとつ名前のついている台風。

一方、日本では「台風16号が本州を時速20kmで北上し・・・」など、番号での呼び方が一般的です。

そんな日本の台風ですが、実は国際的な取り決めで正式に認められた名前があるんです

今回はそんなお話。

日本での台風の名前の取り扱い

まずは日本での台風の名前の扱いについて、気象庁のHPなどをひもといてみます。

台風には番号だけでなく名前もつけられている

台風の番号のつけ方と命名規則は気象庁のHPで説明されています。

台風には従来、米国が英語名(人名)を付けていましたが、北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本ほか14カ国等が加盟)は、平成12年(2000年)から、北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風には同領域内で用いられている固有の名前(加盟国などが提案した名前)を付けることになりました。

平たくいうと、

  • 日本で「台風XX号」と呼ばれているものには名前がある
  • それは主にアジア圏の国々の同意により取り決められている

とうことだそう。

2016年9月現在、日本を含む14カ国がそれぞれ10ずつ名前を出しあっており、全部で140の名前があります。

台風の名前は使いまわされる

とはいえ、台風は年に20個は発生しては消えるもの。名前が140個だとすぐに使いきってしまいます。

足りなくなった分はその都度あたらしい名前を追加していく・・・ではなく、使いきったらまた最初に戻ります。

名前を使いまわすルールになっているんですね。

平成12年の台風第1号にカンボジアで「象」を意味する「ダムレイ」の名前が付けられ、以後、発生順にあらかじめ用意された140個の名前を順番に用いて、その後再び「ダムレイ」に戻ります。台風の年間発生数の平年値は25.6個ですので、おおむね5年間で台風の名前が一巡することになります。

たとえば2016年の台風16号の名前は「マラカス」ですが、きっと何年か前の台風何号かが同じく「マラカス」と呼ばれていたのでしょう。

名前がかぶって困らないか、と思うかもしれませんが大丈夫です。

ひとつひとつの台風には台風番号と呼ばれる、年号(西暦の下2桁)と番号(その年の発生順に1から)の組み合わせからなるIDが振られます。そのため、やろうと思えば台風番号で一意に台風を特定できます。

たとえば2016年の台風16号「マラカス」は台風番号1616号です。

ただし例外として名前が固有名詞化する場合がある

ただし、例外的に台風の名前を固定し唯一の呼称とする場合があります。記憶にとどめるべき台風の場合です。

大きな災害をもたらした台風などは、台風委員会加盟国からの要請を受けて、その名前を以後の台風に使用しないように変更することがあります。

「台風番号1616が・・・」ではなくて、「2016年の台風マラカスが・・・」とするほうが記憶に残りやすいですもんね。

日本ではなぜ台風を名前でなく番号で呼ぶのか

ここで疑問になるのがなぜ日本は台風を名前ではなくて番号で呼ぶのかなのですが・・・

残念ながら、ネットで調べた限りでは明確な答えは見つかりませんでした。

もっとも詳しかったこちらの記事では、日本人の感覚がにじみ出た結果であると結論づけています。

思うに、日本人の感覚としてこういうものが根底にありそうです。

  • 基本的に、いちいち名前を付けない
  • 「ひどくやられた」ものにだけ名前を付ける

ただ現代では気象観測の必要上、やむなく番号を使って便宜的にそう呼んでやっている。


ちなみに、アメリカの台風(ハリケーン)は日本の台風と管轄組織が異なるらしく、全く違う命名ルールで運用されています。

アルファベットの昇順、Aから順番にそのアルファベットが頭文字の女性名をつけていく、というものです。

女性名を使う理由、というかその発端はアメリカ軍の気象担当者の遊び心だそうです。

気象、特に台風のような大きな気象現象のゆくえは戦争における戦術を大きく左右します。

それだけ自分の彼女や奥さんの名前をつけて呼ぶに値する大事な存在だったのでしょう。

視点を変えて、愛する家族と離れて任務にあたる軍人の心の慰めと考えると泣けてきますね。

台風の名前を分析してみる

さて、台風の名前や番号の扱いがわかったところで、14カ国が案出しをしてできあがった140の名前リストで少し遊んでみようと思います。

名前リストは2016年9月20日現在気象庁HPに掲載されているものを用います。

気象庁|台風の番号の付け方と命名の方法

動物、植物、地名・・・どんな名前が多いのか?

各国が名前を出しあっているだけあって、名前に使われている言語はバラバラです。

たとえば2016年の台風16号「マラカス」。フィリピンの起案、現地語で「強い」という意味です。楽器ではありません。

この名前のリスト、分類でもしてみたらなにかおもしろいものが見えてこないかな。


そこで、気象庁HPの名前一覧に記載されている「意味」をもとに分類を入れてグラフにしてみました。

分類別の台風の名前の数

ご覧のとおり、動植物の名前が圧倒的に多いことがわかります。

台風は自然現象ということで同じく自然界のものをつけた、なんて事情も見え隠れしますね。

ただし、日本のように星座から名前をとっている場合もあるため、一概には言えません。

各分類を見ていく

全体が見えたところで、各分類を深掘りして見ていきたいと思います。


まずは一番のメジャーどころである「動物」です。

内訳を見てみると、鳥類、哺乳類に対して魚類がグイグイ食い込んできているあたり、アジアっぽさを感じます。

分類「動物」の内訳


「植物」「地名」は特に特筆すべき点はありません。花や木、山や川、史跡や名勝地など、心温まる名前が並びます。


「神・空想人物」には雨、雲、風、雷など自然現象にまつわる神の名前が名を連ねています。

他に、孫悟空(中国)伝説の少女(カンボジア)など、裏にある物語を知ると興味深そうなものが並びます。


「人名」はおなじみですね。ただアメリカ命名のものに「Francisco」や「Roke」など男性の名前が含まれているところになにか意図はあるのでしょうか。

ニッチな分類ほどおもしろい

さて、深掘りしておもしろいのはメジャーどころよりむしろニッチなところだと思います。「自然現象」あたりからだんだんおもしろくなってきますよ。


「自然現象」の多くはやはり雨や雲に関するものなのですが、北朝鮮の命名したこちら3つだけがどこか異質です。

  • 「Noul」:夕焼け
  • 「Mujgae」:虹
  • 「Meari」:やまびこ

台風なんて早くあっちいけ!という思いがにじんでいると言いますか、直近の痛みよりそのあとの世界を見させ想像させているイメージ。北朝鮮っぽさを感じます。


次の「形容詞」ですが、命名国はすべてフィリピンです。

  • Maliksi:速い
  • Hagibis:すばやい
  • Lupit:冷酷な
  • Malakas:強い
  • Talas:鋭さ
  • Talim:鋭い(刃先)

まるで切り裂きジャックを彷彿とさせるような言葉が並んでいますね。

それもそのはず、フィリピンは毎年のように台風による大きな被害を受けています。

かの国にとって台風がいかに脅威か、台風の命名からしみじみ思い知ることができるのです。


「道具」は「てんびん」「コップ」「コンパス」「かんむり」の4つなのですが、これは日本が星座の名前からピックアップしたものが出てきた結果です。

なんで星座?それもコップとかコンパスとかなんでこんなマイナーな・・・というにも理由があるそうです。

島国日本の伝統産業である漁業や貿易、そして風評被害リスク(リスク忌避性)の側面が見えました。


「動き」ではまたフィリピンが登場します。

  • Danas:経験すること
  • Hagupit:むち打つこと

切り裂きジャックたる台風はフィリピンに「むち打たれる」ような「経験」をさせるものなのですね。

他にもアメリカ命名の「Omais(徘徊)」という名前も。おそらく、ハリケーンアイリーンのようにアメリカ各州を走り回って甚大な被害を及ぼす存在とう意味があるからかと。


最後の「その他」はまさにてんでバラバラ。裏の意味合いを考えるのはみなさまにお任せします。

  • Nesat:漁師(カンボジア)
  • Bebinca:プリン(マカオ)
  • In-fa:花火(マカオ)
  • Malou:めのう(マカオ)
  • Rai:ヤップ島の石の貨幣(ミクロネシア)
  • Nalgae:つばさ(北朝鮮)

個人的には台風に「プリン」という名前をつけるマカオのセンスがたまりません。

台風の名前にあらわれる各国の価値観や文化風土

ここまで読んでこられた方はお気づきかもしれませんが、日本、フィリピン、北朝鮮など、台風の名前の意味やその由来から各国の価値観や文化風土をおしはかることができます。

  • 日本:海洋産業、リスクを避ける国民性
  • 北朝鮮:明るい未来を見させてあげる
  • フィリピン:台風マジやべーよあいつ

これらの他にも、国別に台風の命名を見てみると

  • ミクロネシア:伝統文化大事(神・空想人物に加え、史跡名や伝統的な部族長名も)
  • 中国:4000年の歴史は深い(神・空想人物が半数)
  • マレーシア:俺ら南国だぜ(花と果物と魚類で8割)

といった印象を受けます。国によって実に様々ですね。


なお、冒頭に紹介した命名ルールは2000年から適用されているということ。

2000年以前の過去の名前とその意味、命名国を調べてみると、さらに理解が深まるかもしれません。

まとめ:深掘りするとおもしろい名前の世界

というわけで、日本では軽んじられている台風の名前を深掘りするとおもしろいよというお話でした。

名前とは、人が何かを認識するためにつけるラベルです。

したがって、名前には命名者の考え方や価値観、その人を取り巻く環境(組織、地域、国など)や文化風土が色濃く反映されるもの。

名前という切り口からものごとを深掘りしてみると、見えなかったものが見えてくるかもしれませんよ。

今回は以上です。


ちなみに今回のデータ分析・集計ではじめてGoogle Spreadsheetを使ってみました。機能面はやはりExcelには勝てないかな・・・