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 2014年に亡くなった直木賞作家、渡辺淳一さんの業績を紹介する渡辺淳一文学館(札幌市)を、中国の出版社「青島出版集団」(山東省青島市)が購入した。同集団は渡辺氏の作品の翻訳本を手がけており、文学館の運営で、より多くの中国人観光客を呼び込む狙いがあるとみられる。

 文学館を所有していた大王製紙と同集団の幹部が20日、東京都内で譲渡式を行った。売却額は明らかにされていない。

 渡辺さんは北海道出身で「失楽園」「化身」などの作品で知られる。文学館は大王製紙が「社会貢献」として1998年に開館。建築家・安藤忠雄氏の設計で、直筆の原稿や写真などを展示している。年間入館者数は近年、ピーク時の4割程度(約3千人)と低迷していたが、渡辺さんの作品は中国でも人気で、近年は中国人の訪問が増えている。

 生前は渡辺氏から展示の監修も受けていたが、死去後に運営見直しを探る中で同集団が名乗りを上げ、譲渡が得策だと判断した。

 文学館の運営は現在のスタッフが引き続き担う。譲渡式で、同集団の孟鳴飛(モンミンフェイ)会長は「文学館の伝統を必ず敬意を持って維持し、守っていくことを誓う」と話した。(関根和弘