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金融庁がダメ出しする運用商品ワースト3

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第444回】 2016年9月21日
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 同内容の経済効果を、別の商品の組み合わせによって合成し、コストを比べるやり方は、金融商品の評価全般に使える考え方であり、例えば、確定拠出年金の商品ラインナップにあるバランスファンドが、明白に選ばない方がいい「地雷」であることが分かったりするので、有用な方法だ。

 それにしても執念深い(その分、投資家には親切な)比較であるが、一時払い外貨建て保険は「はっきり不利な商品なのだから、止めておきなさい」と言っている、と筆者は解釈する。

 また、レポートは、保険会社が金融機関代理店に対して、販売サポートとして、販売手数料の上乗せキャンペーンや募集人(販売員)向けのインセンティブ供与を「幅広く実施」していることも問題視している。「こうした販売サポートは、多くの保険会社(商品提供側)と金融機関代理店(商品販売側)の間で実施される中、付与競争の様相を呈しており、最終的に、顧客が支払う保険料を上昇させる要因の一つとなっている」と述べているが、正しい分析だろう。

 顧客の犠牲の下に、こうした競争が行われているのであり、心ある学生が読むと保険会社にも、銀行にも就職したくなくなるような記述(で、かつ現実)だ。

(3) ラップ口座(特にファンドラップ)

 さて、近年、金融庁が投信の回転売買に厳しくなったことに対する、金融業界の次の一手の一つがラップ口座、特に、投資信託を運用対象とするファンドラップだった。ラップ口座は、現在、残高が急激に伸びている。2016年3月末時点で5.8兆円あり、投資信託残高(92兆円)の6%の水準に達しているという。

 金融庁のラップに対する批判は、オーソドックスに「運用コスト」に向けられている。

 レポートによると、ラップの手数料と投資対象商品の信託報酬を合わせた、ファンドラップの顧客が負担する手数料は平均で年間2.2%に達するという。

 これに対して、一般の投信の手数料を販売に3%、信託報酬で1.5%とすると、「4年を超えて投資を継続する場合、ファンドラップの方が一般の投資信託よりも保有コストは高くなる計算となる」(p69)との計算をレポートは示している。

端的に言って、どちらもダメなのだが、ファンドラップの手数料は何とも高いということだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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