iPhoneの発売に沸くなか、楽天モバイルが"対抗馬"とも言えるSIMフリースマホを発表しました。それがファーウェイの「honor 8」です。

楽天モバイルは、MVNOには珍しく、端末での売りを明確に立ててくる通信事業者。以前は同じhonorシリーズの「honor 6 plus」を独占販売していました。また、Acerの「Liquid Z330」も、楽天モバイルでしか買えない端末です。楽天は端末にオリジナリティを求めてくるのは、メーカーの間でも有名な話。カラバリで独自色を出すなど、様々な手法で、他のMVNOとの差別化を図っています。

MVNOといっても、ユーザーは端末がなければサービスを受けられません。日本では、端末とSIMカードをセットで購入、契約することが一般的で、それぞれを別々に買うのは敷居が高いと思われがちです。実際、楽天モバイルは端末のバンドル率が非常に高く、7割以上がセット販売で何かしらのスマホやタブレットを買っています。結果として、楽天モバイルのシェアは急上昇しているため、この戦略は"当たり"と言えるのかもしれません。


端末をそろえて他のMVNOと差別化を図る

では、楽天モバイルはどのようなポリシーで端末をそろえているのでしょう。同事業のチーフ・プロダクト・オフィサーを務める黒住吉郎氏は、「商品ラインナップは品ぞろえをすればいいだけではない。個々の商品が素晴らしく、差別化されて際立ってなければいけない」と端末の重要性を語ります。同氏は、かつてソニーモバイル(当時ソニー・エリクソン)でXperiaの立ち上げを務めた人物。その後、ソフトバンクを経て楽天モバイルに合流していることもあり、端末の重要性については人一倍理解しています。


チーフ・プロダクト・オフィサーの黒住吉郎氏

その黒住氏のお眼鏡にかなったのが、冒頭で挙げたファーウェイのhonor 8だったというわけです。honor 8は、黒住氏が定義する、"いい端末"の3条件を満たしているといいます。その3つとは、「ユニークであること、 デザインがいいこと、 性能やパフォーマンスに優れていること」。ユニークさという点では、honor 8は背面に2つのカメラを搭載しており、あとからピントの位置を変えることが可能。この機能はhonor 6 plusから継承、進化したもので、ファーウェイのフラッグシップモデル「P9」にも受け継がれています。iPhone 7 PlusはiPhoneとして初の2眼カメラを搭載しましたが、それを先駆けてスマホに搭載してきたのは、ほかでもファーウェイです。


独自性とデザイン、性能に優れた端末という条件でhonor 8が選ばれた


2つのカメラを生かし、あとからピントの位置を調整できる

デザインに関しても、確かに質感が高く、カメラもすっきりまとまっています。背面にガラスを使い、「15層ものコーティングで、オーロラのように見る角度によって表情が変わる」塗装で、高級感も演出。価格は4万円台前半で、キャンペーンを使うと3万5800円になりますが、とてもそこまで安い端末には見えません。同様に、この価格ながらも、スペックはP9に匹敵します。CPUこそP9より一段下の「Kirin 950」ですが、これは大画面のハイエンドモデル「Mate 8」と同じ。RAMは4GBで、ディスプレイもフルHDと十分なスペックを誇ります。キャリアアグリゲーションにも対応しているなど、SIMフリースマホの中では、トップクラスの性能の端末と言えるでしょう。


本体の光沢がキレイで、質感が高い




ゴールドやホワイトも用意

これだけのスペックの端末が、キャンペーンとはいえ、3万円台半ばで出てきたことは、筆者も素直に驚きました。黒住氏は「話題のスマホのちょうど半額」と述べていましたが、iPhone1台でhonor 8が2台も買えてしまうわけです。もちろん、honor 8も、MVNOの中で取り扱うのは楽天モバイルだけ。ファーウェイが独自に端末単体で販売しますが、キャンペーンがあるのは楽天モバイルならでは。販売数量的にはiPhoneにはかないませんが、通信費を抑えつつ、魅力的な端末を使いたいと考えている人には、いい選択肢であると言えるでしょう。


キャンペーンだと3万円台に


ハイエンド端末と呼ぶにふさわしい充実のスペック


キャリアアグリゲーションにも対応

ファーウェイにとっても、honor 8は戦略的な端末と言えます。ファーウェイはSIMフリースマホ市場でトップを走るメーカーの1社で、ASUSやFREETELと、競合しています。一方で、ASUSはZenFone 3の投入が遅れており、日本ではまだ発売されていません。端末のラインナップに定評のあったFREETELも、REI以降、動きがなく静かです。そのような中、ファーウェイはP9、P9 liteを市場に投入し、さらにhonor 8をライバルであるZenFone 3に先駆け発表することでシェアを固めようとしています。


P9 liteが好調でSIMフリースマホだけでなく、スマホ全体でもシェアを上げた

実際、ファーウェイのシェアはSIMフリー市場で急上昇中。BCNの調査結果を見ても、P9 liteやP9が市場をけん引し、トップシェアにファーウェイを押し上げていることが分かります。ここにhonor 8という選択肢が加われば、同社のラインナップはさらに盤石になるはずです。

楽天にとっても、ファーウェイにとっても戦略的で、コスパの高さにも魅力があるhonor 8ですが、個人的に残念なのが、おサイフケータイに非対応なところ。富士通やシャープなどの国内メーカーは、SIMフリースマホでも同様の機能を実現済みで、さらには、iPhoneまでFeliCaを搭載した今となっては、グローバルメーカーを言い訳におサイフケータイ非対応を続けるのは厳しくなってきています。

また、VoLTEに非対応な点もネック。SIMフリースマホとしてau系MVNOで使えるメリットがある上に、音声通話がクリアになるのは楽天モバイルのユーザーにとってもうれしいはずです。取材した限りでは、クアルコム製のモデムチップを使っていないことが非対応の原因の1つと言えそうですが、こうした機能は、競合他社や市場の動向を踏まえながら、ぜひ対応を検討してほしいと感じました。
iPhone7の半額で買えるハイエンドスマホ『honor』で楽天モバイルが攻勢をかける:週刊モバイル通信 石野純也
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