2016年9月21日水曜日

幸福の科学が信者の自由な退会を禁止に=脱会者「完全にカルト化した」

幸福の科学が今年1月、退会を希望する信者に対して、教団職員との面談の上で承諾を受けなければ退会を認めないとする規則を定めていたことがわかりました。本日発売の『週刊新潮』(9月29日号)が報じています。新ルールでは、教団が定めた退会届の用紙でなければ退会を認めないとする内容も定めらており、その用紙には、地獄に落ちる恐怖を信者に連想させる用語を用いて、退会後の批判活動等をしないよう宣誓させる内容も含まれています。ある脱会者は本紙の取材に対して、「幸福の科学は完全にカルト化した」と語っています。


■教団の受諾なしには退会できない

この問題は、本日発売の『週刊新潮』(9月29日号)が〈退会希望者に口封じの誓約書を書かせる 幸福の科学「大川総裁」〉として報じています。

幸福の科学が退会に関する新たなルールを設けたのは今年1月29日。従来は信者本人の所属支部や氏名、退会理由の記入欄と、所属支部の支部調印を押す欄などがあるだけだった退会届の用紙に、以下のような文言が加わりました。

【退会届 2016年01月29日改訂】

事前にお読みください。
・退会にあたっては「本人の申し出」と「当会の受諾」の両方が必要となります。
・そのため、退会に際しては、本書面に自書の上、所属支部の支部長との面談が必要となります。申込者本人の自書でないもの(ワープロ打ちしたものや代筆したもの)や、支部長コメントのないものでは、退会を受け付けられません。
・また、本用紙以外での退会も受け付けられませんので、ご了承ください。

 さらに、退会理由を書き署名する欄の上に、以下のような一文も掲載されています。どうやら、この退会届にサインすると、この文章の内容を誓約したことになるようです。

【退会届 2016年01月29日改訂】

退会後も、幸福の科学や、その信者に対し、迷惑行為や和合僧破壊行為(信者の信仰を揺さぶったり、失わせたりする行為)をすることはありません。

 末尾には、支部長が面談日時や面談所感を記入し退会受諾印を押す欄が設けられています。

 新旧の退会届用紙を比較すると、新しい退会ルールは見るからに退会希望者を萎縮させる内容になっていることがわかります。

従来の退会届(左)と今年1月29日改訂の新たな退会届(右)


■地獄に落ちる恐怖を想起させる誓約文

幸福の科学の元信者のAさんは、退会ルールが変更されるより前に退会。教団が作成した用紙ではなく、インターネットで見つけた独自の退会届の記入例に自分の氏名等を記入し、幸福の科学宛に送付しました。職員との面談も承諾も受けず、これだけで実際に退会できたといいます。しかし幸福の科学の新ルールに従うと、Aさんのような方法では退会できないことになります。

「新しい退会ルールの内容を聞いて、“ああ、幸福の科学は完全にカルト化したな”と思います。退会した頃の私の精神状態だったら、面談や承諾がないと退会できないと言われたら手続きできなかったでしょう。教団に籍を残したまま、イベント等には行かない“不活発信者”になるのがせいぜいだったと思います」

退会希望者を萎縮させるだけではなく、退会後の信者による批判活動を萎縮させる内容もあります。新しい退会届に掲載されている「和合僧破壊行為(信者の信仰を揺さぶったり、失わせたりする行為)をすることはありません」という宣誓文です。

「和合僧破壊とは、信者集団の信仰心を乱す行為のことで、これを行うと地獄に落ちると幸福の科学では教えています。『正心法語』という教団のお経があり、支部などでの集会でしばしば唱和され、熱心な信者は、これを読み上げたCDが家の中で流していたりします。私自身、いまでも暗唱できるくらい、体に染み付いている経文です。その中に“和合僧破壊の罪は阿鼻叫喚堕地獄への道避け難し”という一節があります。退会届で“和合僧破壊行為はしない”と宣誓させられるということは、信者にとっては、“この宣誓を破れば地獄に落ちるぞ”と脅されているようなものです」(Aさん)

『正心法語』は、幸福の科学の根本経典とされるもので、教団は、これを読むと「ガンが消えた」「ビジネスで大成功した」「人間関係の葛藤が解消した」といった奇跡が起こると宣伝しています(教団公式サイト参照)。上記でAさんが引用しているのは、複数種類ある『正心法語』のうち『仏説 正心法語』に収録されている「正義の言葉 仏説・降魔経」の一節。和合僧破壊云々の前も含めて引用すると、こんな内容です。

【正義の言葉 仏説・降魔経】

仏法流布を妨ぐる悪魔はこれを許すまじ
仏法僧への中傷は極悪非道の所業なり
もはや人間として生まれるはこれが最後と悟るべし
この世のいかなる大罪も三宝誹謗に如くはなし
和合僧破壊の罪は阿鼻叫喚堕地獄への道避け難し
(※改行とスペースは本紙が調整)

一般的に言う「誹謗中傷」や「妨害行為」にあたるかどうかは関係なく、幸福の科学の足を引っ張る行為であれば地獄行き、というわけです。

退会後の信者まで「地獄への恐怖」によってコントロールしようとする新ルール。これについて『週刊新潮』の記事では、藤倉善郎氏というジャーナリストが「もはや“呪い”と言ってもよい内容」とコメントしています。口と性格は悪いですが実に的を射たコメントをするジャーナリストです。

同記事では幸福の科学が、新らたな退会ルールの内容を事実であると認めた上で、言い訳コメントをしています。言い訳の内容については『週刊新潮』でお楽しみください。

本紙が幸福の科学にコメントを求めたところ「あなたの取材には答えない」との回答でした。

■紀藤弁護士「法的には退会届なしでも退会できる」

今後、幸福の科学から退会しようとする信者たちは、こんな無茶苦茶なルールや宣誓に従わなければ、脱会できないのでしょうか。紀藤正樹弁護士は、本紙の取材に対してこう語ります。

「宗教をやめる際、そもそも信者は書面で退会届を出す必要すらありません。口頭でも何でも意思表示さえすれば、法的にも脱会したと言えます。日本国憲法は自由を原則としており、口頭で意思表明するのか書面でするのかも自由。個別の法律で契約時の書面のやりとりを義務付けているケースはありますが、それは飽くまでも例外です。宗教団体からの退会は自由ですから、教団側が定めたルールに従う必要はありません。退会のために文書の提出や面談を要求すること自体が人権侵害であり憲法違反とも言えますが、信者としては、それに従わなければいいだけの話です」

エル・カンターレは信教の自由を何だと思ってるのか
ルールを示されると、なんとなく従わなければならない気分になりがちです。しかしその気分自体が、実はいまだ教団にコントロールされている証拠。本来、退会は自由なので、教団側が勝手に作るルールがどう変わろうが、そもそも従う必要はありません。

「和合僧破壊」云々の誓約文の問題については、紀藤弁護士は、こう解説します。

「これは信教の自由というより、脱会後の表現の自由との関係で問題がありそうです。また、“信者の信仰を揺さぶったり、失わせたりする行為”をしないと言っても、たとえば以前からの友人である現役信者に自分が脱会した事実やその理由を話さいないなどということは、できるわけがありません。できないことを要求するのは“無効行為”といって、公序良俗に反する等の理由で(民法の定めにより)法的効力はないとみなされる可能性があります」

だとすると、この誓約も、たとえサインしてしまったところで律儀に守る必要はなさそうです。

問題はルールの内容より、このルールが実際にどこまで厳格に運用されるかだと、紀藤弁護士は言います。

「企業と従業員の関係を考えればわかりやすいでしょう。従業員が仕事を辞めるのは自由です。退職届の提出を求める会社もありますが、それでも上司に口頭で“今月で辞めます”と言えば退職できます。通常の会社は、“あなたはまだ在籍しています”などと言って退職を認めないなどということはしないので、問題ありません。しかし仮に幸福の科学で、信者が退会の意思表示をしたのに退会扱いにしてくれないなどの強制が行われるようであれば、幸福の科学には社会的良識がなく、通常の宗教には見られない“特記すべき団体”だと言えるでしょう」

教団が退会を認めないということは、信者に在籍を強制するということです。もしそんな目にあった方がいましたら、本紙(daily.cult@gmail.com)までご一報ください。詳細を確認の上、幸福の科学を“特記すべき団体”として取り上げたいと思います。

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