結局、部屋にやって来たのは、注文しておいた昼食のルームサービスを届けに来たホテルマンだった。
 リビングのテーブルに並べると言うホテルマンの申し出をムウは丁寧に断り、自身でそのワゴンを室内に運び込んでいた。

 朝食が遅かったから、それほど食べられないというマリューの意見で、クラブハウスサンドとオレンジジュースだけの簡単な昼食。
 マリューにとっては多いかもしれないと感じていたその量も、ムウには大した事がなかったようで、数十分後には皿の上は綺麗に無くなっていた。

「ねぇねぇ、マリュー」「なあに?」
 テーブルの上を片付け終わったマリューに、ムウがニコニコしながら声を掛ける。
「さっきの続き、しようよ?」
 そう言うが早いか、強引にマリューの腕を引き寄せると抱き締めてしまう。
「……しませんっ!」
 ピシャリとマリューは言い切ると、無理矢理ムウの腕の中から逃げ出してしまった。
 それでも諦め切れないムウは、う〜んと唸ると「じゃあ、勝負だ!」とマリューに言い放った。
「はぁ?勝負って、何?」
 突拍子のない事を口走ったムウに、マリューは怪訝そうな顔をしている。
 そんなマリューにお構いなく、ムウは突然ソファーから立ち上がると、隣の部屋から何やら緑の盤と2つのケースを手にして戻ってきた。
「マリュー、これで勝負しよう!」
 そう言ってマリューの目の前に差し出されたのはオセロ。
「何の勝負なの?」
 いまいちムウが何をしたいのか分からないマリューに、ムウは更に言葉を繋げた。
「これで勝負して負けたら、勝った方の言う事を聞くってのは……どぉ?」
 マリューは、チェスは自信ないけど、オセロならば勝算あるかも?と思い「分かったわ」と承諾した。

 オセロの盤を挟んで向かい合わせにソファに腰掛けると、ムウは黒いコマを手にし、マリューは白いコマを並べる。
「んじゃ、マリューさんからどうぞ」
 ニコニコしているムウに促されコマを1つ置き、黒いコマを白にしていく。
 反対にムウも、黒いコマで白を塗りつぶして行く。

 それから30分後……。

 自分のコマの数を数えていたムウが、ニヤリとする。
「黒が57個、白が43個……って事は、俺の勝ちだな」
 いい勝負だったのだが、結局は僅差でムウの勝ち。
「あ〜、もう少しだったのにぃ〜」
 と、悔しがっているマリューの隣にムウが腰を下ろす。
「それじゃあ、俺の言う事聞いてもらいましょうか?」
 耳元で囁かれたその言葉に、マリューの頬が朱に染まる。
 その様子を見たムウはクスッと笑みを浮かべると、マリューを抱き上げてしまう。
「ちょっと、ムウ!何するのっ?!」
「ハイハイ、暴れないの。落ちるよ〜」
 暴れるマリューをしっかりとホールドし、ムウはそのままベッドルームへと足を運んだ。

 キングサイズのベッドの上にマリューを降ろすと、窓にレースのカーテンを引く。
 それまで直接入ってきていた陽の光がレース越に軟らかく変化し、床に幾何学模様の影を落としている。
 これから何を言われるのだろう……と、マリューは期待と不安が入り混じった表情で、近づいてきたムウを見上げていた。
 でも、この状態だときっとムウの望んでいる事は……あれしかない。
 マリューは小さく唾液を飲み込むと、妖しい笑みで自分を見ているムウから視線を外した。

「じゃあさ……膝枕してよ」「はぁ?!」
 満面の笑みでムウが口にしたのは、マリューの想像していたものとは全く違う言葉だった。
「膝枕?」「そう。ほら、座ってよ」
 言うが早いか、マリューの腕を取りベッドの真ん中に座らせると、太ももにかかっていたバスローブに手を掛ける。
「な、なんでバスローブ引っ張るのよっ!」
 慌てて裾を引っ張り返そうとしたマリューの腕を、ムウが素早く掴んでいた。
「俺の言う事聞いてくれないとさ」「……うっ」
 
 結局、マリューのバスローブを肌蹴させ、その白い太ももに直接頭を乗せたムウは、嬉しそうな表情で彼女を見上げている。
「なぁマリュー。さっきみたいなキスしてよ」「えっ?」
 俺がとろけそうになるヤツをさ……と言うと、腕を伸ばしてマリューの頭を抱え込む。
 半ば強引ではあったが、諦めたマリューが膝の上のムウに唇を重ねる。
 ゆっくりとムウの唇を割り、マリューは自分の舌をその先に進めた。そのままムウのそれに絡めて行くと、その舌は、わざと逃げるような素振りをみせる。
 なんで逃げるの?と思いつつも、マリューは諦めずにムウの舌を絡め取っていく。
 しばらくすると、攻めていたはずのマリューが、逆にムウに攻められている事に気付いた。
 ムウが自分の膝の上で頭の角度をこまめに替える度、固めの金髪が太ももの内側をくすぐり、マリューの肌が粟立っていく。
「んっ……」
 だんだん息遣いが粗くなってきたマリューは、ムウから離れようとするのだが、彼の腕が頭の後ろを押さえていてどうにもならない。
 マリューは思わずムウの肩をパシパシと叩くと、それに気付いたムウがふっと腕の力を抜く。
 その隙に唇を離したマリューは、ムウの顔の真上ではぁはぁと肩で息をしている。
「何、どーしたの?」
 ニヤリと笑いながら、ムウはマリューを見上げている。
「息……続かない……わよ。あんなに長いと……」
 赤い顔のマリューが俯いたまま呟く。
「ん〜、全然足りないな」
 ムウはそう言うと手を伸ばし、横に流して座っていたマリューのふくらはぎをツッーと指先でなぞる。
 途端にマリューの身体がビクッと反応を示した。
「何、感じてんの?」とムウが言うと「違います!」とマリューが強気な言葉を返す。
 へぇ〜、そぉ?と笑いながら、ムウは素早くマリューのバスローブのベルトを引っ張る。
「あっ!」
 ムウの手を押さえるよりも早く、バスローブのベルトは抜き取られ、マリューの滑らかな素肌がその下から現れた。
 慌ててバスローブの前を押さえたマリューを、起き上がったムウがすぐさま組み伏せた。
「ム、ムウッ……」
 真っ赤になったマリューが、今度は自分の真上にいる恋人の顔を見つめる。
「本当は、ずっと……マリューとこうしていたい」
 優しい笑みでマリューを見つめると、ムウは「ダメか?」と小さく呟いた。
 そんな顔でそんな事言われたら、反対出来ないじゃない……マリューはそう思うと「ううん」と首を横に振る。
 そして、本当は自分もムウに抱かれたいと思っている事にも気付き、鼓動が早くなっていた。

 ゆっくりと腕を外され無防備になったマリューの胸元に、ムウが口付けを繰り返す。
 ついばむようなキスの連続に、マリューは「くすぐったいっ」と笑っているが、本当は身体の中心がジワジワと熱くなってきていた。
「くすぐったい?じゃあ、気持ちよくしてあげる」
 蒼い瞳が暖かい光を宿しマリューを見つめる。それだけの事で、マリューの下腹部が疼いてくる。
 もぞもぞと脚を動かしている事に気付いたムウは、そのまま手を太ももの内側へ這わせた。
 
 片方の手は胸元をまさぐり、もう片方はマリューの熟れた部分を撫で回す。
「ぁ……っ」
 小さく声を吐き出したマリューに、ムウは口付けを落とす。
 優しく激しく、ムウは彼女の口腔内を侵食して行く。
 ふっと離れた二人の唇の間を、銀糸が繋いでいる。
 その糸で艶やかに光っているマリューの唇をムウは指でなぞり取り、とろんとした表情で自分を見つめている恋人に笑顔を向けた。
「ムゥ……」
 切なげな声を上げた恋人に、ムウの理性がはじけ飛ぶ。
「そんな声出すの、俺の前だけな」
 そうマリューの耳元で囁くと、いきなり彼女の脚を持ち上げ、まだほぐし切れていないその部分へ一気に押し進んだ。
「ああぁっっ……!はぁっっ!」
 突然、中心を貫かれたマリューは、逃げるように身体を仰け反らせると、半開きになったままの口から悲鳴にも似た声が漏れた。
 それをムウが許す訳もなく、ぐっとマリューの肩を掴むとそのまま奥まで腰を進める。
 奥まで行きついたムウは、そこからゆっくりと動き出す。
「やぁっ……ふぁっっ」
 ムウの動きに合わせて、マリューの声が響き始める。

 攻める側の荒い息遣いと責められる側の甘い声が、そしてその部屋には不釣合いな水音が溢れている。
 まだ開き切っていない状態から、急激に快楽の高みへと引き上げられたマリューは、震える腕でムウにしがみ付くしかなかった。
 奥まで貫かれたかと思えば、ギリギリまで引かれる……その繰り返しに、彼女の意識が飛びそうになる。
「ぁぁあっ……も……ダ……メ……」
 ムウの背中に回した腕に力がこもり、ギリッと爪を立てた。
「つっ……マリュー……あいし……てる」
「……ムゥッ……はぁああっっぁっ……!!」
 唇を噛み締めたムウがその思いをマリューの中に注ぎ込むと、彼女の脚や腰が引きつるようにビクビクと痙攣し、力の抜けた腕が彼の背中からベッドに落ちる。
「私も……あい……し……て……る……」
 白濁し遠ざかる意識の中、マリューは消え入りそうな声でそう告げると、柔らかな笑みを浮かべたまま目を閉じた。


 スースーと心地よい寝息をたてている恋人をしっかりと抱き寄せたまま、ムウも暫しのまどろみの中にいた。
 プラントの時刻が夕刻を示し、窓から差し込む光もオレンジ色に変化している。
 長く尾を引く光の帯が自分の顔を照らしている事に気付き目を覚ましたムウは、その胸の中にいるマリューの髪にそっと口づける。
 そして、抱き締める腕に更に力を込めると、マリューが身動ぎをしてうっすらと目を開けた。
「んっ……」
 胸元からもぞもぞと顔を上げたマリューは、まだはっきりしない表情でムウを見上げる。
「マリュー、大丈夫?」
 ムウからそう声を掛けられ、覚醒し始めた頭でその意味を理解したマリューの顔が、徐々に赤く染まっていく。
「……ぅ……ん」
 急に恥ずかしくなったマリューは、再びムウの胸に顔を埋めると、小さく頷いた。
「マリューさんって、ホント可愛いなぁ」
 対するムウは、そんな事を言いつつニコニコと笑顔を見せている。
「もぅっ!」とマリューはムウの胸を小さく叩くと、それでも自らその首に腕を回して抱きつく。
 自分の胸に当たるマリューの軟らかい塊がその行為で更に押しつぶされ、思わず「マリューさんに抱きつかれるのって、気持ちいい〜」と言葉を発した。
「何言ってるのよっ!」
 ぷうっと膨らませたマリューの頬に、ムウはキスをする。
「このままもう1回……しない?」「もう、そんな時間ありませんっ!」
 冗談だよと笑いながら言うムウに、マリューは「はぁ〜っ」と長い溜息をついていた。

 その時、ベッドサイドの電話が高らかに鳴り響く。
 慌ててムウはその受話器を取ると、それは頼んでいたクリーニングが出来上がったという連絡。
 ムウは「30分後に届けてくれ」と言うと受話器を置き「さて、帰る準備するか?」とマリューに微笑み掛けるのだった。


 昨晩と同じドレスとタキシードに身を包んだ2人は、ホテルからエレカでアークエンジェルまで戻ってきた。
 その姿をいち早く見つけたマードックが「あぁ、おかえりなさいやせ」とモビルスーツデッキの奥から手を振っている。
「おぅ、済まなかったな〜!」とムウが声を張り上げて片腕を上げる。
 そのままマリューをエスコートして艦長室へと向かった。

「はぁ〜、やっぱりこっちの方が肩がこらなくていいわ」
 軍服に着替えたマリューが、溜息交じりにそう苦笑すると、ムウは腕まくりをしながら「俺もだ」と笑っている。
「さて、みんなにお礼を言わなくちゃ」「そーだな」
 2人はキリッとした顔つきに戻ると、艦長室から艦橋へと向かった。

 艦橋で2人を出迎えたのは、いつものメンバーとバルトフェルド。
「あ、艦長とフラガ一佐、お帰りなさいませ〜!」
 開いた扉から現れた2人の姿をいち早く見つけたミリアリアが、自分の席から立ち上がり笑顔でそう言った。
 それに気付いた他のメンバーも、口々に「お帰りなさいませ」と笑顔で言葉を発する。
「ごめんなさいね。丸1日、お休みを頂いちゃって……」
 マリューが苦笑しながら皆に軽く頭を下げると、続いてムウも「みんな悪かったな。気ぃ使わせちまって」とこちらも苦笑している。
「で、有意義な時間を過ごせましたか?」
 コパイロットシートに座っていたキラが、振り返りながら2人に訊ねる。
「えぇ、ありがとう。久々にゆっくりできたわ」
 マリューが笑顔でそう答えたところで、ムウが「なんなら、どんな1日を過ごしたのか教えてやろうか?」とニヤニヤしている。
「えっ?!」
 思わずキラが固まった瞬間、マリューの握りこぶしがムウの脇腹にクリーンヒットし、艦橋内に鈍い音が響いた。
「ぐえっっっ!」
 その行為に、その場にいた全員が一瞬にして凍りつく。
「マ、マリューさぁん〜っっ」
「あ〜ら、フラガ一佐、どうなされました?」
 今しがた鉄拳をくらわしたとは思えないほどの笑みで自分を見上げているマリューに、ムウは心の中で後悔していた。
 そんな2人のやり取りを見ていた他のメンバー達は、この2人がどんな1日を過ごしたのかが容易に想像できる事に、苦笑するしかなかった。

「当分の間は、一佐はご自分の部屋でお過ごし下さい!」
「えっ?!マ、マリュー?!」
 艦長室に戻ろうとしたマリューにくっついて行ったムウは、部屋に入る直前、その目の前で扉を閉められてしまう。
「マリューさぁ〜ん!反省してますからっ!ココを開けて下さいよぉ!」
 無情にも閉められた扉の前で必死に謝罪しているムウの姿を見てしまったノイマンは「口は災いの素だなぁ」と笑いながら食堂へと向かうのだった。

 

やっちゃいました(謎爆)
ヤリまくりですよ、この男はっっ!
って、書いたの私か……(自爆)

相変わらず、需要はないだろうと思いつつも、
某管理人様からの「寸止めじゃん!」発言に答えてみました。

どうっすかねぇ?(^_^;)
バスローブで1日過ごすって……優雅かなぁ?!って思って(爆)

あと、膝枕ってのも萌ポイントかと?(違?!
その割りに、膝枕してもらってる時間は短かったですが(核爆)

それにしても、本編より裏の方が長くていいのかなぁ?(^^ゞ


ブラウザを閉じて、お戻り下さい。