Treasure Hunting 4




 エリカ主任との打ち合わせに見通しが立った頃、まるで間合いを測ったかのようにムウがドックに現れた。
「あらあら、もう終わるって事、なんで分かったのかしらね?」
 ムウの姿を真っ先に見つけたエリカが、クスクスと笑いながらマリューの肩を叩く。
 そんな事を言われているとは知らないムウは、満面の笑顔で「マリュー!」と手を振っている。
「ホント、どんなセンサーが付いてるのかしら?私が一番知りたいわよ」
 マリューは苦笑しながらそう一人言のように呟くと「それじゃあ、よろしくお願いしますね」とエリカに挨拶をし、ムウの方を振り返った。

「お疲れ様」と言いつつ、すぐにマリューの腰に手を回す。
 その行為を注意したいのだが、どうせ言っても聞かない事は分かっている為、マリューは苦笑しつつ「お迎え、ありがとう」と礼を述べる。
 そのままドックの正面に停めていたエレカに乗り込むと、2人は自宅へと向かった。

 自宅への帰路、ハンドルを握っていたムウが、前方を見たまま突然「ありがとうな」とマリューに告げた。
「え?」
 最初は何の事だか理解できなかったマリューだったが、ムウがポケットから取り出した携帯の銀色のチャームを見て納得した。
「トレジャー・ハンティング、楽しかった?」
 クスクスと笑いながらマリューが訊ねると「あぁ、なかなか意表をつかれてて、面白かったぜ」とムウもニヤリと笑う。
「しかし、よく考えたなぁ〜」
 途中、ちょっとドキドキしたぞ〜と笑いながらムウは言葉を続けた。
「誕生日に『ありがとう』なんて言われたの、俺、初めてだったよ」
「だって、誕生日っていうのは、生まれてきた事を感謝する日だって私は思ってるから。だから本当は、自分の母親に『ありがとう』って言うべきなのよね」
 あっ、買い物したいから、そこのスーパーに寄ってね……と、続けてムウに伝える。
 スーパーの方へとウィンカーを出し、曲がるタイミングを測っていたムウが、マリューの言葉を聞いて「なるほど〜」と感心した様子を見せた。
「だって、普通は誕生日だと『おめでとう』だと思ってたしさ。母親に感謝するっていうのには、気付かなかったな」
「あら、ちゃんと『お誕生日おめでとう』も、書いてあったのよ。気付かなかった?」
「えぇ〜っっ?!どこに書いてあったのさ??」
 スーパーの駐車場で、エレカをバックさせようとしていたムウが、驚いた声をあげる。
「最後のカードには、そんな事は書いてなかったぜ!」
「ムウだったら、絶対に気付くと思ったのに」と、マリューは驚いた顔で笑い出した。
 だって、あんなにハッキリと印を付けておいたのよ〜と、マリューはまだ笑っている。
「……あぁぁっ!?もしかして、あの星印ぃ??」
 『印』と聞いて、ムウはハッとした。
 5通の封筒に入っていたカードには、確かに不自然な位置に星印がついていた。しかし、あの時は、次の封筒を探すのに必死で、その星印の事は気にしていなかったのだ。
「あ〜、あの星印なのかぁ〜」
 ムウは、はあっと溜息をつくと、マリューにやられたよ〜と苦笑する。
 その姿を見ながら、マリューはひたすらクスクスと笑っていた。

「あっ!そう言えば、約束あっただろ?」
 突然、マリューの方を振り返り、朝の約束の話を切り出す。
「あっ、そうだったわね」
 思い出さなくても良かったのに……と、内心思いながら、マリューはムウに相槌を打っていた。
「何でも、俺の言う事を聞いてくれるんだろ?」
「え、えぇ、まあ。でも、無理なお願いはダメですからね!」
 ちょっと警戒をしつつムウに言い放つが、当の本人はここぞとばかりに、ニヤニヤしたままである。
「じゃあさ〜」
 その次に出てくる言葉にドキドキしつつ、マリューはムウをマジマジと見ていた。
「今夜、一緒にお風呂に入ろ?」
「えぇぇっ?!」
 そのムウの一言に、マリューはつい大声をあげる。
「う、うちのお風呂は狭いから、一緒には入れないわよっ!」
 慌てて、拒否の意味を込めて言い訳をする。が、ムウは平然とした様子で、その上を行くような事を口にしたのだ。
「お風呂が狭いって言うんなら、外のジャクジーはどう?」
「はぁぁぁ?!そっちは、もっとダメですっっ!!」
 外なんて、恥ずかしいわよ……と、顔を真っ赤にして否定するマリューに、ムウは更に追い打ちをかける。
「お風呂かジャグジーか、どっちかがいいんだけどな……大体、俺の希望をひとつ叶えてくれるって約束したの、マリューさんでしょ?」
 こう言われると、マリューには拒否権はないらしい。
「……じゃぁ、お風呂で……」
 マリューは、真っ赤になった顔を隠すように、俯いて答えた。
「いよっしゃぁ〜っっ!お風呂で決まりだな!」
 エレカの車中だというのに、派手にガッツポーズを決めたムウは、上機嫌にマリューの腕を引っ張る。
「さて、早く買い物済ませて、家に帰ろう!」
 満面の笑みを浮かべたムウを見て、マリューは「この人の押しにはやっぱり敵わないわ」と苦笑しつつ、それでもムウの好きなチョコケーキを焼いてあげようと思うのだった。



ま、間に合ったかな??(^^ゞ
とりあえず、こんな感じですが……。
マリューさんにベタベタなムウさんが書きたかったっていうのが本心なのですが
果たして、そんな感じになってるのかなあ?

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