二人だけのイヴ


「なぁ……本当にいいのか?」
「ん?何がだ?」
 キッチンの向こう側で何やらカチャカチャと音がしていたのだが
カガリはその手を止めて俺に訊ねてきた。
「あの……だから……名前の事だが……」
少し俯きながら、そう小声で申し訳なさそうに言う彼女を見て、俺はドキッとした。
『あぁ、やっぱりカガリはいい女だな』と。
「その事は、もう何度もお互いに話しただろ?」
 俺は微笑みながらそう答えた。
「でも、本当ならば……私の方が変えなければならないハズだろ?
 そう思うと、申し訳なくて」
そう言いながら彼女は、俺の前に1つのグラスを差し出した。
「これ……何?どうしたの?」
 そう問いかけた俺に返ってきたのは「カクテル……アスラン・ザラって名前を付けてみた」という答え。
ちょっと頬を赤くそながら「ほら、の、飲めよっ」と更にグラスを俺に押し付ける。
グラスの中には、海のように澄んだ青色の液体と、底に沈んだグリーンのチェリー。
「そのっ……私一人ではちょっと難しかったから、マリューさんと一緒に考えてみたんだよ。
 どうしても……アスランに飲んでもらいたくて」
「これ、カガリが作ったのか!じゃあ……」
 と、グラスに口を付けようとした瞬間「あ、ちょっと待てっ!」
 驚いてカガリを見ると、更に顔を赤くしながら
「1日早いけど、誕生日おめでとう。それから……アスハ家に入ってくれて、その……
 ありがとう」
「カガリ……ありがとう。俺の方こそ、これからもよろしくな」
 そう笑顔で、手にしたグラスをカガリの前に差し出す。
チンッと、グラスが交差する音が響き、お互いにフッと笑みがこぼれた。
 口にしたその液体は、ほんの少しの苦味とさわやかな甘さが特徴のカクテル。
彼女の中の俺のイメージは、こんな感じなのか……。

「アスラン・ザラって名前、今日で最後なんだし。それに、明日の結婚式が、お前の誕生日だろ。
 だからどうしても、お前の名前がついたものをプレゼントしたかったんだよ」
 照れ笑いしながら、カガリはそう話してくれた。
「でも、カガリ……」「ん?何だ?」
「俺の名前、完全に無くなる訳じゃないんだけど」
 プッと噴き出しそうになりながら俺が言うと
「あっ……そ、そりゃ、そうだけどさー。いやっ、あの……」
 またもや顔を赤くしながら、しどろもどろに言葉を繋ぐカガリを見て、更に俺は追い打ちをかけたくなった。
「アスラン・ザラ・アスハになるんだし」
 くすくすと笑いながらカガリを見ると「だ、だからさっ……」と、顔を真っ赤にして、困ったように口をパクパクさせていた。
その様子があまりにも可愛かったから……
 つい、そのまま軽く触れるだけのキスを彼女の唇に落としてみた。
「ア、アスラン?!」
「ありがとうカガリ。このカクテル、結婚してからも、また作って欲しいんだけど?」
「も、もちろんだ!ちゃんと作ってやるからなっっ!」
「ありがとう」
 そう言うと、今度は少しばかり深いキスをする。
緊張気味な彼女の唇をちょっと強引にこじ開け、舌を絡め取る。
どちらからともなく、先程口にしたカクテルの味がほんのりとした。
「どう?本物のアスランとカクテルアスラン、どっちの方がいい?」
 ちょっとイジワルくカガリに問いかけてみた。
「そ、そんな事、今更聞かなくてもっっ!!」
 耳まで真っ赤になったカガリが、ちょっと涙目で俺を睨んだ。
と、次の瞬間「こっちの方がいいに決まってるだろ!」と、カガリの方から俺にキスをしてきた。
 そのまま俺はカガリを抱き寄せ、耳元で囁いた。
「なぁ、このままカガリも味わいたいんだけど……」
「なっ?!アスラン、お前っっ!!」
 そう叫びながら、彼女は腕の中から逃げ出そうと抵抗を始めた。
「ダメなのか?」
「当たり前だろっ!そういう事は、明日の初夜に言えっ!
 今日はお互いに、独身最後の夜なんだし!!」
 照れと焦りか、あのカガリがなんとも大胆な発言をしたような気がする。
「だから、独身最後の夜をだな……」
「ア、アスランッ!!」



その後どうなったかは……ご想像にお任せします。



実は、種シリーズで初めて書いたのが、この話です(^^;
しかも、生意気にも、人様にプレゼントしちゃったという……(核爆)

この話を書いたきっかけが、このページの写真です。
某ガン○ム・カフェに行った時に注文した『アスラン・ザラ』というカクテル。
このカクテルのイメージから、ちょっと書いてみました(^^ゞ

アスラン=ヘタレというのが種Dを見ていての率直な感想なのですが(ぉぃ
時には、カッコいいアスランってのも見てみたくなりません?(笑)

え?この話の続きですか?
へへへへへへ、あるにはあるんですけどね(謎爆)
もしかしたら、どこかに転がってるかもしれませんよ〜?!





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