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成人年齢18歳 引き下げの懸念解消を

 民法の成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる改正案を政府は来年の通常国会に提出する見通しだ。

     公職選挙法が改正され、選挙権年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられた。世界各国を見渡しても、「18歳成人」が潮流だ。こうした状況を踏まえれば、多くの人が高校を卒業する18歳を民法上の成人とするのは時代の流れでもある。

     ただし、成人すれば権利とともに責任も重くなる。18歳成人のプラスやマイナス、社会への影響について国民的な議論を広げたい。

     満20歳成人は、1876(明治9)年の太政官布告に由来し、1896年制定の民法に規定された。

     100年以上が経過して時代は変わり、教育の普及などを理由に18歳への引き下げを後押しする考えは根強い。法制審議会は2009年、「成人年齢は18歳に引き下げるのが適当」との答申と報告書をまとめた。

     選挙権年齢引き下げで、今年7月の参院選では約240万人の18、19歳が有権者になった。民法の成人年齢引き下げは、大人の自覚をさらに促すことが期待できる。一方、精神的な成熟度を考慮し、18、19歳を、未成年として保護される対象から外すことに慎重な意見がある。

     たとえば、18歳でも親の同意なしにローンやクレジットカードの契約ができるようになるため、悪質業者による不当な高額契約などの被害が拡大するのではとの懸念は強い。現状では民法の未成年者取り消し権によって、親の同意のない法律行為を取り消せるが、それができなくなるからだ。

     契約の際のリスクを自覚するよう中学・高校生段階で十分な消費者教育を実施すべきだろう。さらに事業者側にも重い説明義務を課すなど、新たな対策の検討が必要だ。

     成人年齢の引き下げは、労働環境にも影響を与える可能性がある。労働契約が未成年者に不利であると認められた場合、親権者などが解除できる労働基準法の解除権の対象から18、19歳が外れる可能性が高いためだ。ブラック企業などによる労働被害が広がることが心配される。

     法制審の報告書は、こうしたマイナス面も指摘しつつ、若年者の自立を促す施策や消費者被害などの拡大を防ぐ対策の実現を国に求めた。だが現状は不十分だ。200本を超える法律に影響する。政府全体で対策に取り組み、懸念の解消に努めたい。

     民法とは別の法律だが、飲酒や喫煙、公営ギャンブルなどの解禁年齢も今後、議論されるだろう。少年法改正については法務省が検討中だ。一律の引き下げになじまない課題もある。課題ごとに慎重に影響を分析し、判断していくべきだ。

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