北朝鮮の農業生産力、工業力で国内の安定や経済成長を支えることには限界がある。日米韓および国連安全保障理事会は、これまで北朝鮮の横暴に対して制裁を強化してきた。制裁が続く限り、北朝鮮が置かれた状況はさらに苦しくなる。
そこで北朝鮮は事態の改善を対話ではなく、手っ取り早く核武装によって成し遂げようとしている。米国の攻撃によって金正恩の独裁体制が崩れることを阻止する為、北朝鮮は核兵器の開発を強化し、2006年以降、5回にわたって核実験を実施してきた。
2016年に入ってからは1月、そして今回と、実験のペースが加速している。北朝鮮とすれば、自然災害や経済の低迷を考えれば、極力、早い段階で北朝鮮にとって有利な条件を米国などに飲ませたいとの思惑や焦りもあるだろう。
北朝鮮に向き合うほどの余裕はない
米国・中国・ロシアの大国
米国・中国・ロシアの大国は、それぞれ固有の問題を抱えている現在、真正面から北朝鮮に向き合うほどの余裕はないだろう。とりあえず、国連安保理の批判決議など通して北朝鮮をけん制するのが、当面の現実的な対応になると見られる。
一方、北朝鮮は、これからも身勝手な行動を続け、国際社会の世論に従うことはないだろう。今後も、北朝鮮は現在の延長線上で核開発を進め、ミサイル発射などによる挑発を行うと予想される。制裁の一段の強化に対しては、さらなる軍事的な挑発行動に出るかもしれない。
その場合、中国は形式上、国連安保理の声明を支持し、北朝鮮を諌める考えを示す可能性はある。ただ一方で、緩衝国である北朝鮮の体制崩壊を防ぐため、相応の支援も行うことにならざるを得ない。
その結果、日韓両国は、基本的に米国との協調体制を強め、米国の軍事力を頼って防衛能力を強化せざるを得ない。今後も米国の抑止力が極東情勢の安定に不可欠だ。問題は、米国がどれ程アジア地域にエネルギーを割けるかだ。
米国のエネルギーが、国内問題や中東地域などへと大きく傾斜するようだと、アジア地域の安全保障上の問題は不安定さを増すことになる。今年11月に選ばれる次期米国大統領の政策にも注目が必要になる。
事態の悪化を阻止するため
日本はどうすべきか?
そうした状況下、朝鮮半島に関して最も好ましいシナリオは、何らかのきっかけによって、金正恩体制にひびが入り核開発の継続が困難になるケースだ。折りしも、現在、北朝鮮では大規模な洪水によって多くの死傷者が出ている。人の不幸に乗ずるようであまり良くない例えではあるが、結果的には、大規模な自然災害などとの遭遇も金正恩体制を揺るがすきっかけとなる可能性があるだろう。
北朝鮮政府が大規模な支援を必要とする状況が続けば、このシナリオは徐々に現実味を帯びる可能性もある。その上で、金正恩体制のタガが緩み、穏当な政策への転換が進めば、国際社会にとって最も好ましい状況になることが期待できる。
逆に、最悪のシナリオは、北朝鮮が核開発を進め、金正恩がやみくもに核兵器を使用し始めることだ。その場合、米国が中国やロシアと条件付きでの協調体制を作る可能性もある。
現実の問題としては、最良と最悪の間のどこかのシナリオが現実のものになる可能性が最も高い。わが国としては、毅然とした態度で米韓との連携を強化し、状況によっては中国やロシアをも巻き込む覚悟で、事態の悪化の阻止することを考えなければならない。
同時に、わが国は北朝鮮の核問題という脅威から、自国の安全を、ある程度自力で守る仕組みを考える必要があるだろう。