9月26日に大統領候補による第1回のテレビ討論会が予定されていますが、それを前に両候補の支持率はクリントン(44.9%)、トランプ(44.0%)と、ほぼ横一線に並んでいます。

テレビ討論会に先立ち、各候補は、より詳細な選挙公約を打ち出しています。中でもトランプの税制改革プランには、投資家も十分注意を払う必要があります。

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トランプは先ず、個人の所得税率を、これまでの7段階から3段階(12%、25%、33%)へと簡素化することを提案しています。現在の最高税率は38%なので、裕福層にとり、これは減税になります。

次に法人税を35%から15%へ引き下げます。実際には米国の企業の実効税率は15%に近いので、これは見かけほど減収要因にはなりません。

トランプは相続税の廃止を主張しています。これは超裕福層だけを助ける効果があります。

また定額控除(standard deductions)を拡大することを提案しています。これは結婚している夫婦なら12,600ドル、子供を持つ未亡人なら12,600ドルなど、納税者の境遇によって差し引かれる一定額の控除を指し、定額控除の拡大は、主に低所得者層を助ける意味合いを持ちます。

これらの一連の税制改革で現行の税制に比べ、向こう10年間で連邦政府の税収は4.4~5.9兆ドル減収になると予想されます。予想金額に大きな開きがある理由はリミテッド・パートナーシップなどのパススルー・エンティティの扱いが未定だからです。

いずれにせよ、これらの措置により、税制の累進性は弱まると思います。言い換えれば裕福層ほど得をするということです。一例として上位20%は税引き後所得が4.4~6.5%上昇すると見られていますし、「上位1%」に至っては10~15%も得をすると思われます。

債券市場の観点から言えば、米国連邦政府の財政収支は悪化するわけだからこれは大きな「売り」材料です。しかもトランプは軍事支出の拡大を可能にするため、連邦予算制御法を廃案にすることを提唱しています。米国の財政規律が大きく乱れるわけです。

債券は、このリスクを正しく織り込んでいないと思います。

ここからは蛇足になるけれど、相場に関し、いま僕が考えている事について整理しておきます。

まず目先、マーケットは下を見ています。

いまは何もやっていません。

10月半ばくらいまで、なにもやる気はありません。

いまは株だけじゃなく、債券、原油、ゴールドに関しても、全て弱気です。

株式市場に関しては(誰が活発に資本調達をやっているのかな?)ということに興味を持っています。なぜならおうおうにして「成長のための資本」を必要とする元気の良いセクターや企業が、株式で資本を調達するからです。

以前から言っているように、ネット企業やシリコンバレーの企業の株式による資本調達は、驚くほど不活発です。(ついでに言えばハイテク企業のジャンク債での調達は活発です。言うまでも無く、これは悪い兆候です)

バイオテクノロジーは数年前までいちばん忙しかったのですが、いまは閑古鳥です。

これらに代わって、いま活発に株式で資金調達しているのは、意外な事にシェール企業です。それも全部の企業が資金調達できているということではなく、勝者と敗者がハッキリわかれています。

ノースダコタ州のバーケン、東部のマーセラスなどは、まるっきりダメです。これらの地域は比較的コスト高なので、いまの原油価格や天然ガス価格では利益がでないからでしょう。

これとは対照的に西テキサスのパーミアン・ベイシンで操業している企業は、殆どが公募増資などをして一夜にしてバランスシートをきれいにしています。これは現在の原油価格でも十分なキャッシュフローを生めるからだと思います。

公募増資の後、株価は公募価格を上回り「回転が効いている」状態になっています。

何が言いたいのか? といえば、昔、バイオ株やネット株をトレードしていた、モメンタム系のお金が、パーミアンのシェール・プレイに流入しているということです。

内容の良い会社から順番に列挙すると:

1. ダイヤモンドバック(FANG)
2. パースリー・エナジー(PE)
3. キャロン・ペトロリアム(CPE)

あたりになります。

それから特殊な状況としてアパッチ(APA)は「アルパイン・ハイ」という新しい油田を見つけたので人気化する可能性があると思います。

このへんの銘柄をトレードするとき気を付けないといけないのは、各社とも生産コストが43ドル付近だということです。ヘッジは各社によってまちまちであり、50ドル以上で将来の生産をヘッジしてある企業もあれば、ヘッジが足らない企業もあります。

すると現在の原油価格はちょうどそのくらいの近辺にあるので、これ以上、原油が下がれば、不採算になるということです。

目先、原油価格はこのへんの水準をウロウロすると思います。

慌てて上記の銘柄にむしゃぶりついていない理由は、そこです。

でも原油価格が上昇しはじめれば、上に書いた銘柄は上がると思います。