リクルートが運営する求人サイト「リクナビ」のトップ画面。
この時代に生きるすべての若者が、社会に出る前に必ず通らなければならない関門──就活。大学生たちを苦しめ、時に自殺者すら生むほどになったその過酷さが、リクルートという一民間企業が、利益を得るために生み出したビジネスだという認識はあるだろうか? そんな衝撃的なテーゼを投げかけるのが、大手代理店やコンサル会社での職歴を持つプランナー、谷村智康氏の著書『「就活」という広告ビジネス』(リベルタ出版)だ。就活を広告ととらえ、学生を商材だとする著者・谷村氏に、そのカラクリと出版の真意を聞いた。
「この本を書いたきっかけは、学生も企業も古い形態の就職活動に固執している現状を見るに見かねて、この『就活』というろくでもない代物を解体したい、という思いに駆られたからなんです」
就活
就活就職活動のこと。かねてからの不景気により、学生の就職活動は年々厳しさを増し、12年には、「就職活動の失敗による自殺者数」は約150人にのぼるという警察庁の統計が発表されるなど、社会問題化している。また、『「就活」という広告ビジネス』(リベルタ出版)によれば、昨今の就職活動における市場規模は1000億円と算出されることもあるという。
今日の就職活動においては、好むと好まざるとにかかわらず、リクルートの運営する就活サイト「リクナビ」に登録するところから始めざるを得ないと思い込まされている。しかし、このリクナビにはどのような基準で企業が掲載されているのかというと、それは単に、掲載する企業からお金をもらって載せているにすぎず、その本質は「ホットペッパー」といった広告ビジネスで成り立つフリーメディアとなんら変わりがない。それなのに、あたかも「リクナビ」に公平な情報が載っているように錯覚させられてしまうところに、まず第一の問題があるのだ。
「リクルートにとっては、たくさんのお金を払ってくれる企業=優良企業。学生にとっての優良企業を大きく掲載しているわけではないことは、論をまちません。就活産業に携わるリクルートは、どの企業が過酷な労働を強いて社員を使い捨てる『ブラック企業』であるか、本当は熟知していますが、そういった企業は、むしろたくさんのお金を払ってくれるお得意様。リクルートにとっての儲けにさえなれば、そのような企業の求人を、何回でも大きく、魅力的に掲載することに、なんのためらいもないのです」