急速に膨らむ中国の債務負担は、このままだと金融危機につながる──。相次ぐ国際機関による警告に国際決済銀行(BIS)も加わった。中国の債務残高の規模そのものは並外れてはいない。BISの推計で、国内総生産(GDP)比では英国や日本、ユーロ圏などを下回っている。だが、近年の中国が世界経済の成長エンジンとして果たしている役割の大きさを踏まえると、その債務増加の速さは同国政府だけでなく世界全体にとって大きな懸念材料だ。
国際通貨基金(IMF)によると、2008年末の中国の債務残高はGDP比147%で、GDPを1単位増やすために必要な借り入れは1.5単位弱だった。それが今年3月時点で債務残高はGDP比255%超、GDPを1単位増やすのに必要な借り入れは3単位を超えている。
歴史上、これほど債務が急増した国はほぼすべて、その後に金融危機を経験している。中国内外の楽観論者は、貸し手の全てと借り手の多くが国有企業であり、対外債務はなおごく低水準だと反論する。したがって、債務圧縮を迫られて資産価値の崩壊が起こるとされる「ミンスキー・モーメント」を迎える可能性は薄いという。
だが、たとえ政府当局が銀行と借り手に不良債権の借り換えを命じるシステムの中で、そのリスクが和らげられるとしても、借り換えが新規貸し出しに占める部分が大きくなっていき、成長が停滞するという問題が残る。
中国は何年も前からこの状態だが、政治家が困難に立ち向かおうとしないために問題が慢性化している。債務を圧縮し、成長の借り入れ依存度を下げる必要について何年も論じられているにもかかわらず、中国政府の対応は細切れで効果が上がっていない。
中国共産党機関紙の人民日報は5月、匿名の「権威人士(権威筋の人)」が債務増加の抑制に対する政策当局の取り組み不足を批判するインタビュー記事を掲載した。この人物が習近平国家主席の筆頭経済ブレーンの劉鶴氏であると広くみられているという事実は、世界最大の中国経済(購買力平価ベース)の今後の成長モデルに関してトップレベルで健全な議論が起こっていること、つまり根本的な部分で意見の相違が生まれていることを示している。
■債務の規模を見極める必要
中国の債務問題の根本にあるのは政治的な事情だ。指導者らは中国経済を危険な借金依存から引き離す必要があることを知っているが、財政政策で成長を担うためには国民への増税が求められる。
歴史を通じて「代表なき課税」(課税には議会に送られた代表による決定が必要という米独立戦争のスローガン「代表なくして課税なし」になぞらえた)を正当化できた政府はごくわずかしかなく、増税は一党独裁の共産党の正当性に対する疑問を引き起こすだろう。
中国政府が踏むべき重要なステップは、時代遅れのGDP成長率目標を静かに廃止することだ。それにより、地方政府と国有企業を無駄なインフラと不動産開発のための過剰な借り入れと投資に走らせてきた圧力が弱まる。
習氏率いる政府は、急激すぎる債務圧縮に注意しながら、貸し出しの増加を着実に抑えると同時にゾンビ企業の閉鎖、不良債権の処理、金融機関の資本構成変更にも幅広に取り組むべきだ。
だが、その前にまず、中国政府は現在ある債務の本当の規模と質を把握するために透明な形で総力を挙げなければならない。どんな依存症でも、回復への第一歩は問題の大きさを認めることだ。
(2016年9月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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