第141回 松崎 澄夫 氏 音楽プロデューサー
6. アミューズ 大里洋吉氏の図抜けた力量〜ONE OK ROCK、Perfume、BABYMETAL
−− 松崎さんは最近、木崎賢治さんとレーベルを作られたそうですね。
松崎:「BOGUS RECORDS」というレーベルをテイチクエンタテイメントの中に作りました。木崎さんは今でも現役で制作を続けているし、僕の感覚も変わらないので「一緒にやろうよ」と。今後、僕も若いアーティストを持ってくるかもしれないけれど、今は木崎さんの好きなアーティストをやろうと思いました。今の若いバンドのメロディの作り方とかコードの持っていき方、歌詞の選び方とか、そういうものを若いアーティストと一緒にできるのは、僕の世代だと木崎さんだけしかいないって思っているんです。
僕自身も木崎さんとやることで、今までとはまた全然違う人間関係が作れるのが面白いなと思っています。今は結構ライブハウスに行ったりしていて、若いバンドを観ていると自分でもなんとなく分かってくるんですが、それ以上に木崎さんは話ができるのがすごいなと思いますね。僕もアミューズのときに若いアーティストたちとたくさん話しましたが、その前に現場マネージャーたちが一生懸命そういう人間を集めてくるわけですね。僕は途中20年くらい現場を離れていましたしね。でも、好きなBEGINだけはずっとやっていて、それを大里さんは許してくれていました。
やっぱり大里さんの力は非常に大きいんですよ。ONE OK ROCKもPerfumeも大元は大里さんなんです。Perfumeとして広島のダンススクールの子どもたちを繋いだのも大里さんですし、男の子のダンサーを募集して、小学生の頃からずっと面倒を見ていたんですが、高校になって解散して、その中の2人がバンドを作り、彼らが森進一さんの息子を呼んでできたのがONE OK ROCKというね。
−− すごいですね…。
松崎:アーティストに対する愛情の持っていき方とか、それこそ叱咤激励するタイミングとか、大里さんはものすごく上手いです。
−− ONE OK ROCKのTAKAさんはやはりお父さんの森進一さんの遺伝子を感じますよね。
松崎:2つの遺伝子が成功するなんてそんなにないですよ。TAKAは遺伝子を受け継いで、それ以上の声になったと思います。世界に通じますからね。ジョン・アンダーソンの録音を東芝のスタジオでやったときに「世界基準の声ってこういうものなんだな」って思ったんですよ。あんなに年齢がいっている人があれだけ声が出るのを目の当たりにして「世界で通用する声っていうのはこういう声か」と。TAKAの声にも同じものを感じますね。
−− BABYMETALもアミューズですよね。
松崎:そうです。さくら学院というグループがいるんですが、そのマネージャーがBABYMETALを作ったんです。僕は彼に「自分のアイデアでこんなことをやったんだから好きなだけやれ」と言っています。「お前は今、強気になって好きなことをとことんやらなかったら損するぞ」って煽っているんです。でも、逆にそれをやることで、上は発想することを許すんですね。それで成功すれば完全に自分で1つのセクション持てるようになりますし、そこからまた新しい感覚のアーティストが出てくるかもしれません。
−− アミューズは世界を抜けていくアーティストが増えていますよね。
松崎:SEKAI NO OWARIも「世界に行くためにアミューズと組みたい」と言って来たそうです。YKIKI BEATもアミューズだったので驚いてます。
−− 若い人たちも分かっているということですね。
松崎:分かっています。世界に出るにはアミューズと組んだ方がいいって。
−− 松崎さんは、今、アミューズから離れていらっしゃるんですか?
松崎:はい、もう完全に。でも、なんだかんだアミューズのアーティストやマネージャーとの関係で何かあるときには相談にのったり、手伝ったりします。アミューズには好きなことを最後までやらせてもらいましたし、大里さんにはお世話になりましたからね。