想いを捨て去る勇気すら持ってないのに――
こんばんは、氷太よ。
今日は蛇龍どくろ先生の
『野狐禅』
を頂いていくわね!
オッサンと少年の話かと思ってたら
どっちも少年でござるよ。
ちなみに野狐禅ってなんぞ?
ってアタシもなったので調べてみたわ。
「仏法は無我にて候」として真実の仏陀は自我を空じた無我のところに自覚体認されるはずのものなのに、徒(いたずら)に未証已証(みしょう・いしょう、いまだ証していないのに既に証覚を得た)という、独り善がりの大我禅者をいう。いわゆる魔禅の1つ。
平たく言うと
禅を学び、まだ深い境地に達していないのに、自分では悟り切ったような気でうぬぼれていること
こういう事らしいわ。
深い境地に達しているって、これ誰が判断するものなのかしら・・・。
まあそこそこ分かったわ、無知の知みたいなものって事ね。
なるほど、この漫画のタイトルにバッチリ合うわね。
この漫画の物語の主なテーマは「疑心に囚われた恋愛の輪郭」とでも言えばいいのかしらね。
誰でもあるじゃない?
今の自分は果たして相手の事を好きであり続けているのか
って疑問に思う時間って。
それは一体慣れから生じたものなのか、それともいつの間にか溶け去っていったものなのか。
そういったあやふやな心の形を、飾らずに率直な見せ方でダイレクトに伝えてくるような内容になってるわ。
あらすじ
大学生のモンジは、サークル仲間だったチバと体の関係はあるけれど、本当に彼の事が好きなのか自分の気持ちに疑問を持ち始め...? 他、純粋すぎる『恋心』を描いた珠玉のラブストーリー「致死量分の愛を込めて」も同時収録!
こんな感じね。
ってかどんな感じだよって感じだけど、これ以外に確かにあらすじの説明のしようがない。
この漫画ちょっと構成が変わってて、この主人公の視点でのお話になるんだけども、2人の男と1人の女性が結構均等な割合で登場してくるのよね。
これほどまでにサブキャラに焦点を当てていると、斬新な印象すら覚えるわ。
そして女の子もBL特有のクソなキャラクターじゃなくて良い子で結構不憫な子なの。
この子の感情を表した部分は、この漫画になくてはならない1つの要素となっているわ。
登場人物
モンジ(表紙右)×ウケ
過保護で人の良い大学生。
チエの相談に乗りながら、同じ状況下に居る自分に疑問を感じている。
オハギ(表紙左)×?
モンジの同級生。
常にモンジを気にかけている。
言動が男前過ぎて濡れる。
チバ
モンジの同級生。
理由はあるにせよ、この物語の全ての元凶でクズ。
チエ
チバとの関係に思い悩むモンジの幼馴染。
この物語のテーマの代弁者的存在。
感想
素晴らしいの一言しかない。
どくろ先生独特なゆるーい雰囲気で物語は始まるんだけども、一気に急展開を迎えシリアスな方向に進んで行くわ。
人間って脆い生き物よね。
「好き」っていう気持ちだけじゃ、好きでい続ける事はできないのよ。
そういった心の変化の理由、心に宿る矛盾の理由をとことん自問自答していく事になるわ。
「恋愛って何なのか?」
「人を想うって何なのか?」
「そこにある気持ちって何なのか?」
とどんどん突き詰めて心理描写されていくの。
慟哭のような胸を突き刺すその描写は、正に自分の持ち合わせている恋愛観点全てを振り出さなければ描けないような内容になってるわ。
丁寧で繊細、そして力強いメッセージで溢れている。
どくろ先生、何かあったのかな・・・とガチで心配になる程、具体性を持って描き出されているわ。
本当に色々と学ぶ事の多い漫画だと思う。
恋愛特有の痛みは決して自分を脅かしたり存在を否定するものではなく、次の誰かの為に活かすものだとアタシは受け取ったわ。
報われなくても、それは無駄なんかじゃない。
想い続けるという事が自分や相手のためになるとは限らない。
矛盾した気持ちに答えなんか出せなくとも、人は幸せになれる存在である。
今まで見た事もない作りこまれたこのストーリーに、どうやって文句をつけていいのかむしろ分からないわ。
本当に大事にすべきものは何なのか、ここまで徹底して描いた作品はそうはないはずよ。
どうして話題にならなかったのかしらね。
衝撃の作品と言っても過言じゃないはずなのに・・・。
まあ極たまにある、ゆるーい会話の部分に関しては独特だから賛否両論あるだろうけども。
ただちょっと
「どくろ先生・・・ちょっと画力落ちたかな?」
とは思ったわね。
『シュガーミルク』
なんかめちゃんこ上手だったのに・・・。
ちょっとこの漫画作風が著しく変わっているような・・・。
決して下手ではないわよ?
元々お上手な作家さんなんだから。
でも・・・イマイチ絵の部分が劣化しているように見えて残念だったわね。
あと短編も収録されているけども、こっちも秀逸。
恋愛感情というものを知らなかった人間が、最後の最後に理解するようになるお話。
BLを描く上に当たって、根幹にあるべき要素を盛り込んだ作品ね。
男が男を好きになるっていう事が、決して平坦な道程ではないという事を高校生を軸にして描いた見事な傑作よ。
まとめ
不透明な自分の心の在り方を描いた漫画。
全ての人間が抱えている迷いを描いていくわ。
そしてそれがBLというジャンルに見事にハマって見ごたえある作品に昇華されている。
絶対に見ておくべき漫画よ!!
今回の漫画
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