トヨタ自動車と「コメダ珈琲店」を運営するコメダ(名古屋市)が交通事故の低減を目指して異色のタッグを組む。KDDIを加えた3社が20日、運転中のスマートフォン(スマホ)の利用を防止するアプリ(応用ソフト)を同日から提供すると発表した。まず期間を区切ってお膝元の愛知県で効果を試し、他の地域への展開も検討する。
3社は「Driving BARISTA(ドライビング・バリスタ)」と名付けたアプリの提供を20日に始めた。米アップルの「iOS」と米グーグルの「アンドロイド」を搭載したスマホに対応し、利用料金は無料。ドライバーがスマホに手を触れずに一定の距離を運転すると、コメダの店舗で使えるクーポン券を提供する仕組みだ。
アプリは全地球測位システム(GPS)やスマホの内蔵センサーの情報を使い、自動車が時速10~80キロメートルで動いていると走行中と判定する。ドライバーはスマホを裏返して車内に置き、手を触れないで走行した距離が100キロメートル(2回目以降は200キロメートル)に達すると、ブレンドコーヒーなどを1杯、無料で提供する。
愛知県は2015年まで13年連続で交通事故の死亡者数が全国一になっている。3社は事故対策が急務となっている同県でまず、新たな取り組みを始める。アプリは20日から提供を始め、10月6日まで走行距離を加算できる。コーヒーとの引き換えは愛知県に244あるコメダの店舗の9割程度で受け付け、期間は10月末までとする。
20日に名古屋市で開いた記者発表でKDDIの鳥光健太郎CSR・環境推進室長は「当社は14年から歩きスマホ防止アプリを提供している。『ながらスマホ』が危険というメッセージは浸透してきたが、行動につなげていくことが課題になっている」と説明し、3社で新たな取り組みを始める意義を強調した。
トヨタの西内律子J―ReBORN室主査は「各社と力を合わせて地域の課題に取り組むことが重要だ」と説明した。コメダの駒場雅志専務は「当社は全国に700強の店舗があり、今回の取り組みがうまくいけば地域を広げていきたい」と述べ、取り組みの拡大に前向きな姿勢を示した。