旧石器人もフィッシング…世界最古、沖縄で出土
2万3000年前の貝製
沖縄県立博物館・美術館(那覇市)は19日、同県南城市のサキタリ洞(どう)遺跡で、世界最古となる2万3000年前の貝製の釣り針が出土した、と発表した。これまで国内で確認された釣り針は縄文時代以降のものしかなく旧石器時代は初。釣り針で取ったとみられる魚の骨も出土。旧石器時代の水産資源利用の実態を示す初の資料で、当時の生業を考える上で極めて重要な発見となる。
出土したのは、完成品1点(幅14ミリ、2万3000年前)と未完成品1点(幅16ミリ、2万3000〜1万3000年前)。ニシキウズ科の巻き貝の底部を割って削った。完成品と同じ年代の地層から、ブダイ科、アイゴ属の海魚の骨、川で取れるウナギ属の骨が出土した。化石保存に適した石灰岩質を含む地層のため、溶けずに残った。
これまでの世界最古の釣り針は東ティモールのジェリマライ遺跡で出土した貝製(2万3000〜1万6000年前)だが、年代に幅がある。日本最古は夏島貝塚(神奈川県横須賀市)の約1万年前のもので、イノシシの骨製。
3万年前の人骨と、3万5000年前のモクズガニのはさみ、巻き貝のカワニナの殻、ウナギの骨も出土した。このうち、モクズガニとカワニナは、1万3000年前の地層まで継続的に出土しており、サキタリ洞遺跡で人類が生活を続けていた証拠になる。
国内の旧石器時代の遺跡は1万カ所近くあるが、石器出土がほとんど。人骨や動物の骨の出土が極度に少なく、食料の内容と採取方法は不明だった。調査した藤田祐樹・同館主任は「石器でナウマンゾウやイノシシを捕獲したという従来の旧石器人のイメージと異なり、釣り針を用い魚やカニも取っていた。日本の旧石器時代の文化の多様性を考える上で重要な成果だ」と話す。釣り針などの遺物は11月15日から同館で展示される。【大森顕浩】
サキタリ洞遺跡
沖縄県南城市の洞穴内の遺跡。2011年に約1万4000年前の人骨と石器が出土し、同一遺跡で人骨と石器がセットで確認された国内最古の例となった。