※本連載の参加者の方の発言は、あくまで個人の見解にもとづくものとなります。
【メンバー紹介(仮名)】
カラ子(30歳)
新婚26ヶ月。10年以上付き合った恋人と同棲、結婚。腐女子を卒業している時期に恋人になったため、後々カミングアウトする必要が。相手は非オタクだったが、微妙にカラ子さんに染まりつつある。最近の推しジャンルは「Free!」で、原作をアニメ映画化した『ハイ☆スピード―Free! Starting Days―』に絶賛ハマっている。
トド子(26歳)
新婚10ヶ月。SNSを通じて知り合った相手と電撃結婚、関西から東京に移住した。相手は非オタクだからときどき腐女子顔負けのBLセリフを吐く。最近の推しジャンルは「昭和元禄落語心中」。
チョロ子(27歳)
新婚2年目。顔が超絶好みだった元カレに振られ、意気消沈しているところでうっかりワンナイトラブした現在の相手と交際、結婚。外ではドS鬼畜だが家庭ではデレデレのドMな彼をうまく調教して同人誌即売会の売り子などさせている。最近の推しジャンルは「刀剣乱舞」。
彼氏と趣味、究極の二択
トド子 私、長いこと付き合っていた彼氏と、オタク趣味のせいで別れたことがあります……。
一同 えっ!
トド子 今の夫の前に、5年以上付き合っていた彼氏がいたんです。彼と付き合っている間は、別に腐女子なのはやめていませんでしたが、わりと彼を優先していて、あるジャンルにどっぷりハマるということはそんなになかったんですね。ところが、当時宝塚で『銀河英雄伝説』の舞台が始まりまして。
岡田 ああっ! 「まさに2.5次元」とヅカオタからも銀英伝オタからも絶賛され、歴代の腐女子座談会でもさんざん話題になった伝説の演目!
トド子 はい。宝塚はもともと好きだったので、いつもどおり軽く観に行ったんですけど……ドハマリしちゃいまして。当時は関西に住んでいたので、まず兵庫県の宝塚大劇場に通いつめ、そして宝塚って東京でも1ヶ月くらい同じ演目をやるので、土日のたびに東京にも遠征しまくって。たぶん合計で15回は観たかな……。
岡田 チケット争奪戦がものすごいですし、なかなか達成できない回数ですよ……。
トド子 そういう生活をしていたらある日、彼氏から、「トド子さんは俺と銀英伝、どっちが大事なの?」って聞かれたんです。
岡田 「仕事と私、どっちが大事なの?」の21世紀版ですね……。
トド子 「俺がいなくなっても銀英伝があれば幸せなんだよね」ってものすごくシリアスなトーンで言われてしまって。
一同 ……。
トド子 その時に「いや、あなたの方が大事だよ」って言ってあげられたらよかったんですけど、私がとっさに返した言葉が「とりあえず千秋楽まで待って」だったという。
岡田 おいー! わかるけども! これだから観劇ヲタは(笑)。
トド子 それだけが原因だとは思っていませんが、結局そのあたりからぎくしゃくしだして、別れることになってしまいまして。今では持ちネタくらいの気持ちで周囲にも話してますけど、わりと大変な出来事でした。その後は、交際相手にオタクを否定されたくはないけれど、だからといって自分の趣味を優先しすぎてはいけないと思うようになって、異性と会ったり遊んだりするときも趣味の話はせず、「隠れ腐女子」になっていました。
でも、意外と隠れたままでも恋愛できるのかも、と思っていた矢先に、今度は「進撃の巨人」にハマってしまって……。
一同 (笑)
イベントは一度きりだけど彼氏はいつでも会えるし……
トド子 で、ちょうどそのとき気になっていた人がすごい忙しい人で、本当に月1回とかしか会えなかったのに、彼からの誘いとオンリーイベントがかぶったら、もう「どうしても予定あるから無理」って断るようになっちゃった。「あ〜、私、結局自分の趣味を優先しちゃうんだな」って気づきました。
お芝居もそうだし、イベントも生モノじゃないですか。ジャンルにはまったら、一番流行ってる時、同人誌がたくさん刊行されるときにイベントに行きたいじゃないですか。彼氏はその日じゃなくても会えるし……。 だんだんそっち優先になってしまって。
チョロ子 やっぱ腐女子は忙しいんですよ。
岡田 逆に考えるんだ、つまり、世間であんまりキテるジャンルがない時は、暇になった腐女子と仲良くなりやすい……?
一同 あー!
チョロ子 それはあるでしょうね。春夏秋冬でいうと、春アニメの時期はわりと落ち着いてるから春あたりを狙うとか。でも、2015年末からこの春にかけては「おそ松さん」やってたから厳しかったんじゃないかな。
一同 (笑)
カラ子 テレビアニメじゃないけど「キンプリ」も盛り上がってきていた時期でしたしね。
腐女子本人も、自分のハマり具合と恋愛の時期とのバランスはとったほうがいいでしょうね。腐女子活動が忙しいときにそれを無理やり抑えて誰かと出会おうとするより、自然と収まっている時に恋愛したほうがうまくいく。
チョロ子 周りともよく話しますけど、ドハマリしていたアニメが一段落してロスしている時期って、次のものにハマりやすいですよね。毎週何を支えに生きていったらいいんだろう……と思っているときに、新しいものに出会うと即時にジャンル替えしちゃうところがある。そこに心の隙間があるわけだから、男の人もそういう時を狙うと良さそうですね。だからもうちょっとして「おそ松さん」の新規供給がなくなってきたあたりが絶好の狙い目かな。まあそのうち二期が始まるかもしれないけど。
腐女子とつきあいたいなら「ロス」を狙え?
岡田 もしも腐女子を落としたいなら、BLそのものへの理解はいらないけど、人気ジャンルの移り変わりだけはチェックしておけ、隙間を狙え、と(笑)。こうやって話をしていると、みなさんは「恋愛」についても、ある種の「ジャンル」としてとらえているんですかね?
カラ子 そうですね。2次元と3次元を同一線上ではとらえていないけど、心を占めるエネルギーとしては一ジャンル分に匹敵するんじゃないかな。自分の体はひとつしかないんで、さける時間もエネルギーも限られているわけで、結果としてオタク趣味と彼氏のバランスの取り方が問題になる。
トド子 「どっちが大事か」って言われたら、もちろん夫のほうが大事なんですけどね。二次元はこちらを助けてくれないし……。
カラ子 大事のベクトルが違いますよね。
岡田 両立の方法として、オタク活動の現場に夫を一緒に連れていく、というのはどうなんですか?
チョロ子 私、旦那を即売会に連れて行って、自分のスペースで売り子頼んだことあります。しかもR18本。
岡田 強い(笑)。
チョロ子 即売会当日にどうしても売り子ができる人が捕まらなくて、でも自分も買い物行かなきゃいけなくて……って時に、背に腹は代えられずにやむをえず「お願いします」って頼み込んだんです。
最初はやっぱり嫌々やっていて、「嫌だよ、男がホモ本売るなんて」とか言っていたんですが、何回かちょいちょい頼んでるうちに、「俺、大丈夫だよ、BLの売り子できるよ」って誇らしげに言うようになってきて。
一同 (笑)。
チョロ子 最近だと、売り子だけじゃなくて、旦那に「ちょっとアレ買ってきて」ってお願いしてR18同人誌を普通に買ってきてもらったりもしてますね〜。私が調教しちゃいました。
カラ子 前半でも話したけれど、自分に合うオタク男性を見つけるより、一般人で趣味を趣味として認めてくれる人をオタクの世界に引きずり込んで調教したほうが、自分好みにしやすいですよね。
岡田 また怖い話が始まったよ! みなさん、「沼」に引きずり込むのはお得意ですものね。
カラ子 もともとオタクだと、相手にも自分のジャンルがあるわけで、彼らも彼らでこだわりが強いので。みんながみんな腐女子に偏見があるまでとは言わないですけど、ひっかかる物言いをしてくるときが結構ある気がします。
編集R あ〜、わかりますね。自分の好きな作品をすすめても、「だってホモでしょ?」って軽んじて観てくれないこととか。私は萌えを共有したいんじゃなくてストーリーがおもしろいから観てほしいのに! 男性のオタクのなかには住み分け意識が強い人も少なくない印象があります。
カラ子 それに対して一般人は壁がないんですよね。
チョロ子 これから彼氏が欲しいという腐女子には、真っ白な壁に自分で色を塗ることをおすすめしますね!
次回「『腐女子は結婚できない』という迷信」は9月22日(木)更新予定。