あらゆる、すべての運命に対して、自分というものをそこから一歩上に進ませることができるもの。
これができるのは、学問の力でもなければ経験の力でもない。
「積極性」が、人生をより良いものにするには知識や経験よりも大切なものなのだと中村天風さんは言う。
もちろん、何をするにも知識の必要なことは豈敢て言うに及ばず、また、経験というものが自己をつくり上げる上で重要な条件であることは間違いありません。
けれども、 いくら学問をしても、いくら経験を積んでも、自分の心の中の積極性というものが欠けていたらば、その知識もその経験も本当にそれが理想どおりにコンクリート(具体化)されないのであります。
「積極性」はとにかく大事。
ただ、目的を定めるということに天風さんは賛成しないのだそうです。
とにかくがむしゃらに行くんです。われわれの持ってる人間に与えられた知識の範囲というものは知れております。それでとやかく思案していたら、この時代に本当のファイトが出ますか。あれを考え、これを考え、いわゆる右顧左眄してからに、難しい言葉を使えば逡巡して、グズグズグズグズグズグズ躊躇してばかりいると、進歩も発達もない憐れな自己が出来上がるだけでしょ。
ですから、どこまでも目的は定めない、心に従いながら、がむしゃらにファイトを燃やして行くんです。
ついつい油断をするとマイナスな気持ちを持ってしまう、わたしの様な人のために・・・
積極観念の養成法を 「幸福なる人生」のなかで、中村天風さんが教えてくれています。
すぐ変な理屈をつけるんだよ。「おれなんかだめだ。何しろ意気地がないから」とか、「積極的といったってファイトは出ねえよ、この月給でもってこの毎日じゃ」とかね。すぐネガティブな方面から自分の人生を考えるから、自分の人生の中に生まれながら与えられていたはずの積極性の根本である勇気というものが挫けちまうんです。
人生も勇気が挫けたら積極性なんて出そうったって出やしませんよ。
大切なことは「積極性」 。
これが、積極観念を要請する大切な5つの実行方法。
- 内省検討
- 暗示の分析
- 対人精神態度
- 取越苦労厳禁
- 正義の実行
1.内省検討——自分の気持ちを検査する
自分の心の態度は積極か消極か・・今どんな気持ちを持ってるかを自分で検査する。
自己判断が何もなくて、他動的に人の気分で動かされてる人間というものは、これは草木に群がるアブみたいなもんなんだ。だから何をするときでも、「自分は今、この仕事に対して躊躇を感じてるかしら、絶対やり抜くという気持ちを持ってるかしら」と自分自身を検査する。
2.暗示の分析——人の言動に左右されない
良い言葉に動かされるならいいが、消極的な言葉に動かされると元気がなくなってしまう。
右顧左眄するなということですよ。右を見たり左を見たりしていると、躊躇という心が出てくる。躊躇という心が出てくると、ベストを尽くそうと思っても、せっかく燃えようとする心がスーッと下火になっちゃう。
3.対人精神態度——積極的な態度で人と交わる
自分自身だけが積極的であればそれでいい、という考えではいけない。
自分だけではなく、人にもベストを尽くそうという気持ちを持たせる、それが誠心誠意ベストを尽くすということであります。
4.取越苦労厳禁——当たって砕けろ
くよくよ心配しているうちに潰れてしまう。
石橋を金で叩いてるような、薄い氷の上をおっかなびっくり渡ってるような人生を生きてたら、そのままあなた方の人生は委縮しちまうぜ。空気の抜けた風船みたいになっちゃう、どんなに学問しようが、どんなに経験積もうが。
結局、当たって砕けろです。
5.正義の実行―—本心良心に背かない
どんな場合にあっても本心良心に背かないことが必要。
本心良心の咎めを受けないこと。いい気持ちでベストを尽くすこと。それをがむしゃらというんです。
がむしゃらという言葉を考えてごらん。「がむ」とは我を無くしちまえということ。感情や感覚が我なんですから、これを捨てちまうのが、がむしゃらです。
大義に即して本然の自分を生かしていくことです。
大切なことは積極的な心。そして、教えてもらったことを実行すること。
<中村天風さんの著書の記事>