九州、広範囲で厳戒…各地に避難指示・勧告
非常に強い台風16号が20日未明に上陸した鹿児島県や熊本地震の傷痕が残る熊本県などの各地では19日から広範囲に避難指示や勧告が発令され、刻々と強まる風雨に住民の不安が広がった。自主避難を含む避難者数(19日午後10時現在)は毎日新聞の集計で鹿児島、宮崎、熊本、大分、福岡5県で少なくとも4215人。九州電力によると、鹿児島を中心に約5万6600世帯(20日午前0時現在)が停電し、各自治体は河川氾濫や土砂災害への警戒も呼び掛けた。
鹿児島県では、曽於市など5市村計3万9042人に避難勧告が出た。宮崎県では、高鍋町で午後7時過ぎまでの1時間に観測史上最大の110ミリを観測。県内全域に大雨洪水暴風警報が発令され、都城市など5市町で計19万8851人に避難勧告が出された。
熊本県では午後6時半現在、高潮の危険がある上天草市と地震の影響で地盤が緩んでいる南阿蘇村の一部地域計2076世帯5014人に避難指示が出された。益城町など6市町村で計5万7120世帯、13万5207人に避難勧告が出た。
空や海の便にも影響が相次いだ。鹿児島空港では東京、大阪、沖縄など発着の計16便が欠航。宮崎空港の発着便も一部欠航した。また、鹿児島−大阪、宮崎−神戸間のフェリーも欠航となった。宮崎県日向市消防本部によると、道路が冠水して車が立ち往生しているとの通報があった。
住民も警戒を強めた。鹿児島県屋久島町で民宿を経営する男性(53)は、暴風雨で窓が割れぬよう補強板を取り付けて準備した。宮崎市の青島漁港で船の係留状況を確認した漁業、小浜重美さん(67)は「最近は台風の上陸がなかったので不安だ」と話した。
台風との関係は不明だが、19日朝に鹿児島県長島町の港で漁船の固定作業をしていた60代の男性が海に落下して死亡し、同日午後に宮崎県西都市で自宅の窓を補強していた90代の男性が転倒し、けがをした。【田中韻、黒澤敬太郎、柿崎誠】