9人犠牲のグループホーム 山からも大量の水で避難困難か

9人犠牲のグループホーム 山からも大量の水で避難困難か
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先月の台風で川が氾濫して9人が犠牲になった岩手県岩泉町のグループホームがどのように浸水していったのか、専門家が解析した結果がまとまりました。グループホームは、川が氾濫する前に背後の山から流れ出た大量の水で避難が難しい状況になっていたという結果で、専門家は山間部では川の水位だけでなく、背後にある山から流れ出す水も考慮して早めに避難を始める必要があると指摘しています。
先月、東北と北海道を襲った台風10号では、記録的な大雨により各地で大きな被害が出てこのうち岩手県岩泉町では小本川が氾濫してグループホームが浸水し、逃げ遅れた高齢者9人が死亡しました。

川の氾濫のメカニズムに詳しい東京理科大学の二瓶泰雄教授の研究グループは、今月、グループホーム周辺で浸水の痕跡などを調査し、コンピューターで当時の雨の状況を再現して、水の動きを詳しく調べました。

それによりますとグループホームは、近くを流れる小本川が氾濫する前に、背後の山から流れ出た大量の水に襲われていたことがわかりました。
ふだんは水が流れていない谷筋に、記録的な大雨で水が集まり一気に流れ出たと見られ、グループホーム周辺の水深は10センチから30センチほど、流速は秒速50センチほどになっていたとしています。
小本川が氾濫してグループホーム周辺の水深が一気に増すのは、山から流れ出た大量の水に襲われてから1時間ほどたったあとのことでした。

研究グループは小本川が氾濫する前から高齢者を避難させるのは困難な状況に陥っていたとして、山間部では川の水位だけでなく背後の山から流れ出す水も考慮して早めに避難を始める必要があると指摘しています。

グループホーム周辺に水が流れ込んだ理由

二瓶教授らは、今月9日、グループホームからおよそ1キロ上流にさかのぼって浸水や水の流れの痕跡を調査しました。

その結果、山側に大量の水が流れ出した谷筋が少なくとも3か所見つかり、このうちグループホームに近い100メートルほどのところにある谷筋では、谷筋の側面に付着した砂利や倒れた草などから水深は1メートル90センチほどに達していたと見られるほか、谷筋の出口付近に流木などがたまっていて大量の水はグループホームのある方向に向きを変えて流れ出していたと考えられるということです。
二瓶教授は「川として地図に載っていない場所だが、大雨が降って谷筋に水が集まり、鉄砲水のようになってグループホームに押し寄せたのではないか」と話しています。
地元の人も小本川が氾濫する前に山側から流れ出した水で浸水していたと証言しています。
グループホームの近くにある道の駅にいた従業員の男性は、午後5時半すぎに車で帰宅する際、「車のハンドルがとられるくらい道路が冠水していた。山で吸収できなくなった水が一気に流れ出ていたのではないか」と話していました。