レールに乗らないで起業するのがブームみたいなので、レールに乗ったまま話もしようかなぁ、と思ったので、書いてみます。
参考:
過去を語りながら起業に至った経緯を語るのが流行ってるみたいなので、便乗しようかなあ、と思います。もう5年目だけどねw
中学・高校時代
小学校時代は、算数が得意で、筑駒って言う凄い中学に入りました。
でも中学だと、それが全然通用しませんでした。得意分野ならついていけるものの、苦手科目はお話にならず、下1割から2割の成績でした。このあたりで僕は悟ります。僕はそれなりに頭がいいけれども、トップクラスと戦えるほど、平均的に頭が良い人間ではない、ということを。
高2で肘を壊し野球部をやめ、パソコン研究会に頻繁に顔を出すようになります。といっても、そこではボードゲームや麻雀やパソコンのフリーゲームをしていて、ロクにプログラムを触っていませんでした。
ですが、高3の時、SuperConというチーム戦のプログラミングコンテストに、ほぼ人数合わせで参加することになりました。予選の問題をなぜか僕が解くことになり、書いたことのないC言語で必死に書いたところ、ちゃんと予選通過に成功。本戦でも6位に入賞することが出来ました。
このあたりで気づきます。「自分に向いてるのはこれだ!」と
浪人時代
レールに乗ったまま、といいつついきなりレールからずり落ちてますが、浪人中は、受験勉強半分、競技プログラミング半分でした。受験勉強は大体の時間を英語に割いてましたが、英語には絶望的にセンスがなく、ボロボロな結果に。
結局、英語が全く仕上がらず、数学1科目入試で慶應大学の湘南藤沢キャンパスに入学します。このあたりで、僕は得意なものと苦手なものがはっきりしているから、苦手なもので戦ってはいけない、という人生観が生まれました。
大学時代
さて、競技プログラミングが向いていると分かったので、学部1年で、さっそく世界大会に挑戦します。Imagine Cup 2008という大会です。
3位を獲得して、いかにもアルゴリズムが凄い出来る天才少年!みたいな扱いを受けてますが、正直、この時のアルゴリズム力なんてクソみたいなもんです。
当時の競技プログラミング最大手サイト、TopCoderのレーティングは1400ほど。真ん中よりちょっと上かな?ってレベルです。世界ランクで言うと3000位くらい。こんな奴が世界3位とか言っていいのか?と、今でも本気で思います。
誤解されないように言うと、Imagine Cupの他部門はレベルが高いですし、自分の出たAlgorithm部門は、2008年を最後に廃止されてます。
まぁ、でも、勘違いしちゃったんでしょうね。「世界3位とれたんだから向いてる!だから自分はこれをやるべきだ!」って感じで、授業中もずっと競技プログラミングをやってました。1年でレーティングを大幅に上げ、ITMediaで連載も書かせてもらえるようになりました。
あと、このあたりでTwitterも始めます。アルゴリズム系の話もしながら、ネタツイートや日常系のツイートを重ねて、フォロワーがどんどん増えていきます。いつの間にか、競技プログラミングをやってる人の中ではかなりフォロワー数が増えていきました。
このあたりで、メインスキルをアルゴリズム、サブスキルをTwitterなどの発信力、として、この2つのスキル+αで何が出来るか、というのを考え始めるようになりました。
それもあり、ますます競技プログラミングに専念し、ひたすら競技プログラミングをするような生活になっていきます。2週間フルに使うコンテストに何度も何度も出場し、何百時間と考察を繰り返し、その結果がこれ。
こっちは本当に価値のあるコンテストで、競技プログラマが頻繁に出ている長時間系のコンテストで、これよりレベルの高いものはないと思ってます。2部門で日本人が優勝しちゃったせいで話題としては食われちゃってますけど、これで、Imagine Cupでついた箔だけでなく、本当にこれで食っていける能力が付いたんじゃないかな?と思ってます。
さて、このあたりで考えます。競技プログラミングを生かして何が出来るか。
まず、研究者になれるかどうか。研究者だったら、この時点でとっくに論文をいくつか出してないといけません。そもそも自分はロクに英語が読み書きできない。高校時代の経験上、純粋に情報科学で戦ったところで、多分一番頭の良いところには勝てない。競技プログラミングは純粋に戦うというより戦略で勝ってる。んじゃ研究者はダメだ。
じゃあどうするか。競技プログラミングは本当に楽しい。出来ればこれを他の人にも布教したい。ってことで、競技プログラミング運営側の人間になろう!という方向に固まりました。サービス立ち上げ時に日本人参加者を巻き込むのだったら、サブスキルのTwitter拡散力が凄く役立ちます。
さて、ここで即起業となった人は、起業に頭が偏り過ぎです。当然いくつか選択肢が出ます。
- どこかの企業に就職し、サービスを立ち上げる
- 会社を立ち上げ、自社サービスとして運営を行う
- とりあえず一人で作ってみて身内で遊ぶ
3つ目は食っていけないので論外ですが、1つ目と2つ目のどっちが良いかは微妙です。競技プログラミングで食っていくなら、就職と繋げて採用ビジネスに持っていくしかないと思います。社会人経験0の自分が、いきなり起業して採用ビジネスが出来るか?って言ったら、無理だろう、というのが、常識的な判断でしょう。リクルートとかに入れば、中で上手い事やらせてもらえるかもしれない。自分のやりたいことを付きとおせるかは微妙ですが。
ちょうど知り合いのリクルートの方*1がいたので、その方と相談してみた結果、起業したら支援出来そう、というような話をしていただいたので、起業する方向に固めました。
さて、あとはシステムを作るだけなんですが、競技プログラミングばっかりやってた当時の自分は、Webサービスを作るのがちょっと難しい感じでした。いや、頑張れば作れたかもしれないけど、質の低いものになるのは容易に予想できます。
AtFreaksという、@wikiで有名なサイトを運営しているサイトで、当時バイト?で参加していた@imosが、趣味?か何かで作っていたImoJudgeというジャッジシステムがあったので、@imosに「あのシステムいくらで買えますか!」って話しかけたところ、AtFreaksの社長と会う感じになりました。
それでまぁ色々あって、AtFreaksのバイトのみんなと起業、みたいな感じになりました。
大学院時代
AtCoderのサービス立ち上げは、大学院に入っての4月、つまり入学直後です。もうこの時点で「お前研究する気ないだろ」と言われても仕方がないと思いますが、普通に大学院に通いながら会社を続けて、起業しました。ちなみに副社長は和歌山から無理やり東京に引っ越しさせちゃったので、退学したみたいです。ごめんね副社長。
研究では機械学習とかやってました。Kaggleとかのサイトがどうなってるかーとか、どういう感じなのかなーってのが見たくて、業務に関係のある研究ばっかりでした。
大学に行っていて意味はあったのか?
さて、自分の主要となるスキルセットに、大学に行って身についたものってのは、正直なところ、あんまりありません。別に大学に行っていなくても、身に付いたことだと思っています。
起業文化が根付いているキャンパスだったので、起業に対する感覚だったりとか、常識だったりとか、そういうのは身に付いたのかな、と思います。
ではなぜ、大学に通い続けたのか?この理由は簡単です。
大学に居続けた方が、この人生において、為したいことを為せる期待値が、常に高かったからにほかなりません。
競技プログラミングのサービスを提供したい、という思いはずっとありました。でも、アルゴリズムの研究がしたい、エンジニアになってバリバリ開発してみたい、という思いもたくさんありました。
結局、自分には、やりたいことがたくさんあったんです。たくさんある中で、一番やりたいのが競技プログラミングのサービスの提供だった。だから起業をしたんです。
でも、それが成功するとは限らなかった。明確なビジネスモデルも定まっていなかった。とした時に、失敗したら何も為せない人間になる、というのが怖かったんです。
失敗を恐れては成功出来るものもできなくなる、とは言います。実際、本当にそれだけに命を注げば、変にリスクマネジメントをするよりも、成功率は高くなるかもしれない。でも人間ってのはそれが出来ない。崖のすぐ傍でいつものように全力疾走が出来る人間というのは、そんなに多くない。
だったらするべきなのは、全力で走るために、崖から離れることなんです。それが、大学に通い続けるという選択です。それを残しておくことで、精神的な安定が得られるんです。
起業家ってのは、精神的にキツいもんです。というか、人間って、お金がないとキツくなるんです。多分、上の記事の人はまだ感じていないと思うけれども、経営がうまくいかなくなったら、そう思うタイミングは確実に来ると思います。そこで精神がやられたら、もう起業家としてはおしまいです。
僕の持ってるスキルセットにはかなり自信を持っているので、3年間植物状態になって、その直後に五体満足になったとしたら、その次の年には普通に就職出来る自信があります。この自分の能力への自信こそが、起業家としてうまくやれる一つの要素なんじゃないのかなあ、と思っています。
お前の会社別にまだそんなおっきくないじゃねえか、みたいなのはやめて><
これから起業したいと思っている人へ
まず気づいてほしいことが一つ。起業というのは、何かを為すための目的です。
貴方は、何がしたいんですか?何がしたいか決まってない?なんでそれで起業するの?
何がしたいかはぼんやりと決まってる?じゃあそのぼんやりと決まっていることを為すためには、本当に起業が一番いいの?就職したほうがうまくできたりしない?
目的が決まってないのに、起業したい、ってのが、本当はおかしいんです。だって、目的が出来て初めて起業をするべきか考えるべきなはずなのに、目的が出来る前から起業をすると決めていたら、選択肢を一つ捨てている。
いやまぁ、それでも別にいいんです。
「社長になりたいから」で起業するのも別にいいんです。「なんか起業ってかっこいいから」で起業してもいいんです。「起業したい」が最初に来るなんて、そんな理由しかないじゃないですか。別にその欲求を否定したりはしない。
これ個人的に凄いお勧め情報なんですが、かんぱにガールズっていうゲームをやると、かわいい女の子が「社長!」って呼んでくれます。社長感が味わえます。マジお勧め。そのためだけに毎日トップページ開いてガチャ引くしかやってない。
ただまぁ、そうじゃないなら、「起業」という選択肢がトップに来ることはないはずなんです。それを自覚はしてください。自覚した上で起業したいならいいです。
さて、次に。
さっき僕は、3年間何もしなくても、僕自身は食っていけると書きました。経営者ってのは、実はそれじゃダメなんです。
会社ってのは、みんなで経営するものなんです。当然、被雇用者の生活も掛かっている。その状態で、「自分のリスク」「社員のリスク」を見積もれないのはお話にならない。
一人でやる、つまりただのフリーランスだったら別にいいです。勝手に死んでください。でも、それって多分、大したことを実現できません。何か大きなことをやろうと思ったら、絶対に色んな人を巻き込む必要があります。
そうなった時に、他人のリスクをちゃんと見積もって話が出来るのか? 僕は、それが出来ないと思った人と、仕事をしたくはありません。常に社員のリスク、取引先の会社リスク、そういったものを考えて物を言える。そうじゃないと、社長としてはお話にならない。信頼できない人間だと思われたら終わりです。
色々考えて大学を辞めるのは良いと思います。それが最善の選択肢であることだって、当然あるでしょう。それをネタにしてブログで注目を集めるのも良いかもしれない。
でも、そこで信頼を失ったら、もう取引してもらえない。取引してもらえないってことはお金が入ってこない。それじゃビジネスは出来ない。
信頼ってのは本当にいろんな形があります。若いうちは解らないけど、割とメジャーな信頼のされ方として、「ここの社長は○○大学をちゃんと卒業しているから信頼できる」みたいな捉え方をする人もいます。BtoBビジネスだったら、そこで信頼されなかった時点でもう取引できません。大変です。
まぁそんな感じで色々あるので、大学は出る、もしくは休学することをお勧めします。正直、学歴ってやっぱり強いです。
だから慶應は学歴自慢じゃないっつーの。慶應という学歴が俺を高めるんじゃない。俺という存在が慶應という学歴の価値を高めるんだよ。
— chokudai(高橋 直大) (@chokudai) 2015年12月26日
こんなツイートをしたことがあります。このツイートは本気でツイートしていますし、僕が在籍していたことというのを、慶應大学にとってプラスにするつもりです。学歴なんかなくてもどうにか出来る自信もあります。
でも、やっぱり、お世話になることもあります。大学が一緒だったー、というのは、営業の時の話のネタになりますし、それだけで信頼を勝ち得たりすることだってあります。やっぱり学歴って便利なときは便利なんです。大学によるかもしれないけれども。
ってことで、僕が言いたいのは、「迷ったら退学じゃなくて休学にしよう。出来れば通い続けよう」です。ちゃんとよく考えて、時間をおいて。行動力のある人が、そんな形で信頼を失ったら勿体ない。