日銀は来週の金融政策決定会合で三年半の異次元緩和について総括的検証を行う。「2%の物価上昇目標」がなぜ達成できなかったかを検証するというが、自己弁護に終始するならば意味はない。
「総括」という以上、原点に戻って検討してほしい。アベノミクスはデフレ克服には、まず強力な金融緩和が必要だと考えた。
金融緩和とはお金を借りやすくすることである。本来は金利を下げるが、すでに金利は下げられるだけ下げてゼロになり、それでも借り入れが増えない中で選択したのが量的緩和政策である。
だが、金利がゼロでも借りない人がお金の量が増えたからといって借りるだろうか。そもそもお金は世の中にあふれるほどあった。それがなぜ使われないかが問題なのであり、その原因に目を向け対策することこそが必要だった。
要するに政府、日銀は出発点から間違っているのである。「デフレだから経済が低迷している」と考えたが、逆だ。経済が悪いからデフレに陥ったのであり、だからいくらお金をあふれさせても借り入れ需要はない。
年間八十兆円、計約三百兆円ものお金を供給してきたが、量的緩和政策では問題を解決することはできないのである。むしろ国債を大量に購入する方法により政府への資金提供となる財政ファイナンスが狙いではないかと批判されても仕方がないのである。
マイナス金利政策は、量的緩和の限界が意識されつつある時に出てきた苦肉の策であり、お金の需要がない中では同じく効果は限定的にならざるを得ない。しかも金融機関の経営への打撃など副作用を考える必要がある。
やるべきは経済を良くすることであり、それは金融政策では実現できないのだ。経済を良くするには、賃金が上がらなければならない。そうすれば消費が増え、設備投資の増加、生産増、企業収益増、そして賃金増という好循環が生まれる。
異次元緩和で円の供給量が増えて円安となり、株高につながったが、それは景気を一時的に浮揚させるカンフル剤の効果しかない。日本経済の実力を高めるわけではなく、国内総生産(GDP)はほぼゼロ成長のままといっていい。
総括検証でなすべきは異次元緩和の限界を認め、無理に緩和策を広げないことだ。非正規労働の縮小など賃金上昇につながる構造改革を政府に求めることも重要だ。
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