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2005-07-27 トム・ハンクス主演『アポロ13』ネタバレ映画感想/解説

■あらすじ『アポロ11号、12号が無事月に着陸した後、ベテラン宇宙飛行士のジム・ラベル(トム・ハンクス)は14号に乗る予定だったが、既に計画自体が政治家や国民から飽きられて来ていた。そんな時、13号のクルーが病気になり、急遽ジムのチームが13号を任される。だが着陸船操縦士ケン(ゲイリー・シニーズ)は風疹の疑いで降板させられ、ジムとフレッド(ビル・パクストン)は断腸の思いで代替要員のジャック(ケヴィン・ベーコン)を受入れる事になった。そして1970年4月11日、ついにアポロ13号は出発したが、その直後突然爆発事故が発生!酸素が流出して燃料電池の出力もどんどん低下してゆく。研究者たちは皆、パイロットたちの生還を絶望視するが、フライトディレクターのジーン(エド・ハリス)だけは「絶対に彼らを死なせない!」と決意する。残された時間は後わずか。地上から33万キロ離れた宇宙から、果たして彼らは無事に帰還できるのか?不可能なミッションに挑戦するNASAのスタッフと宇宙飛行士たちの、壮絶なる闘いが今始まった!』
あまりに有名なアポロ13号の事故を、ロン・ハワード監督が見事に再現してみせた愛と感動の実録ドラマだ。デジタル・ドメイン社が当時としては最高のVFX技術を駆使し、ロケット打ち上げの瞬間を俯瞰のアップ映像で見せ付ける。
その描写は驚くほどリアルで、試写を観た本物の元宇宙飛行士でさえ、「あの記録映像はどこから見つけてきたんだ!?」と仰天したらしい。その他にも、宇宙空間における13号の内部の様子を再現するために、特別な飛行機(KC−135)を使って本当に無重力状態を作り出しているのが凄い。
NASAの全面協力の下、キャストとスタッフたちはテキサス州ヒューストンにある訓練用飛行機KC−135に乗り込んだ。これは、実際に宇宙飛行士たちが宇宙での無重力状態をシミュレーションするための訓練機で、マッハ1まで加速した後、放物線を描いて降下していく。
この間、重力ゼロを模倣した束の間の無重力状態に突入するのだ。しかし、無重力が発生する時間がたったの25秒しかなかったため、撮影現場は猛烈に慌ただしかったらしい。
また、ヒューストンと全く同じ厚みを持つ宇宙管制センターの巨大なセットをユニヴァーサルスタジオに建設したり、ありとあらゆる方法を使って徹底的にリアリティを追求。これらの、限り無く本物に近いヴィジュアルの数々は、誰もがショックと感動を受けるほど実に素晴らしいシーンを生み出した。
だが、この映画の一番の凄さは何と言っても秀逸なストーリーにある。「事実は小説よりも奇なり」の言葉通り、真実の持つ力が根底にあるわけだが、それを知っていても尚、興奮と感動が観る者の心を捕らえて放さない。
中でも、NASAのスタッフがアポロ内にある物をかき集めて、二酸化炭素を吸着する水酸化キャニスターの不足を補う方法を見つけ出し、「丸い穴を四角い栓で塞ぐ方法を考えろ!」と指示するシーンや、ラベル船長がコンピュータを使わず、手動で大気圏再突入時の進入角度を調整するシーン、電力量確保のシナリオを構築して度重なるチャレンジの末に見事にクリアーするシーンなど、ハラハラドキドキの連続だ。
特にケン(ゲイリー・シニーズ)が活躍する場面は、何度観ても感動する。パイロットたちを生還させるために必要な電力が、どうしてもあと4アンペア足りない。ケンは何回もテストを繰り返すがNASAの技術者は「これ以上はどうやっても無理だ」と諦めてしまう。だが、ケンは最後まで諦めず作業を続け、ついに電流を逆に流す方法を見つけ出すのだ。かっこいい!
さらに、このようなSFチックな場面だけでなく、ヒューマンドラマの描き込みの素晴らしさも『アポロ13』の大きな魅力だろう。アポロの丸窓から見える月に対して少年時代と同じ仕草をしてみせるラベル船長。そして、同じ月を見ている地球の家族は、遠く離れた彼への想いを馳せる。
また、管制センターの飛行主任ジーンは妻の手縫いのベストを着てプロジェクトに挑み、風疹の可能性からクルーを下ろされたケンは、地上で仲間を救うために全力を傾ける。
ジム・ラベル船長の年老いた母親と、ジムの娘との会話も胸を打たれる名シーンだ。父親の事が心配で泣き出す娘に、「心配しないで。私の息子は“戻ってくる”と約束したら、例え洗濯機に乗ってでも必ず帰ってくるのよ」と優しく語りかけるお婆ちゃん(このお婆ちゃん、普段はボケてるのにここだけ正気に戻ってるんだよねw)。
これらのヒューマニズム溢れるエピソードの積み重ねが、映像主体になりがちなSF的題材を、いつまでも人の心に残る感動作に昇華しているのだ。
最後に、俳優たちの熱演も述べておきたい。少年の心を持ち続けるラベル船長を、奇をてらわずに演じ切ったトム・ハンクス。冷静沈着な仕事人のジーンに扮したエド・ハリス。無重力状態でゲロを撒き散らすビル・パクストン。シャワーを浴びている途中に「パイロットに繰り上がった」との連絡を受けて、全裸で歓喜の雄叫びを上げるケヴィン・ベーコン(またお前は脱いでいるのか。どんな映画でも脱ぎたがるヤツだなあw)。
もちろんその他の出演者たちもそれぞれに印象深い演技を披露しているが、中でも僕が特に印象に残っているのは、ケン・マッティングリーを演じたゲイリー・シニーズだ。パイロットのメンバーから外され、一人寂しくロケット打ち上げを見守るシーン。「昇れ、昇っていけ!」と言いながら「ちくしょう、俺も行きたかったなあ…」と羨ましそうに見つめる表情が実にイイ。
そして、ふてくされて自宅に引き篭もりながらも、大切な友人たちがピンチだと知った途端、懸命になって生還の方法を見つけようとするシーン。何時間もぶっ続けで作業をしているケンに対して「少し休んだら?」と声を掛けるスタッフ。しかしケンは一言、「彼らだって休んでないんだ!」と言い放ち、再び作業を続行する。く〜、かっこいい!個人的には助演男優賞をあげたいぐらいのかっこ良さだ。シブいぜ、ゲイリー・シニーズ!
この映画は事実を元にしたストーリーだ。すなわち、始めから結末が分かっている物語である。それでも尚、アポロ13号生還の場面は感動せずにはいられない。まさに、それこそが名作の証と言えるんじゃないだろうか。
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僕的にはこの映画は苦いですね。よく出来てるし良作なのですが…。
それは、始めはもうアメリカ国民もシャトル打ち上げや宇宙からの中継にも飽きていて、録画の深夜放送になったり、放送されなかったのに、事故が起きて初めて全米が注目が集まるというところ。
もちろん家族やスタッフは無事に帰ってくることを強く望んでいただろうけど、テレビを見ていた大多数の人間は「公開サバイバル」を野次馬的に見ていただろう。そして、もし同じようなことが起こったら、自分もその一人になるだろうことを突き付けられた気がしたから。
いや、実はそれが裏テーマだったんじゃないかと、今でも思っています。
長文すいませんでした。
特殊効果、リアリティ重視のドキュメンタリー、そして人情劇。
あらゆる映画の要素全てが揃った映画だと思ってます。
私もこの映画は大好きです。先日のスペースシャトルの打ち上げを観ていて この映画を思い出しました。
いつの時代になっても、人間は未知なるものに好奇心を抱かずにはいられない。だからこそ宇宙開発には夢がつまっているのだと思うのですが…。
よければ以下のサイトの記事、見ていただければと思います。
http://2.suk2.tok2.com/user/deanna/?y=2005&m=05&d=21&all=0
>テレビを見ていた大多数の人間は「公開サバイバル」を野次馬的に見ていただろう
確かに、「大衆はいつでも無責任な傍観者である」という描写は身につまされるものを感じますね。が、それは別に『アポロ13』に限った事ではないんじゃないでしょうか。大体、どの映画を観てもメディアの扱いは同じようなものですから。
この映画で訴えている事はやはり「諦めなければ、道は必ず開ける」という事だと思います。人は絶体絶命の状況に追い込まれた時、思考が停止して”出来ない理由”ばかり探そうとしますよね。しかし、大切なのは”出来るか出来ないかの判断”ではなく、”どうやったら出来るかを真剣に考える事”なのです。NASAのスタッフやパイロットたちは決して諦める事無く、団結して生還の可能性を探しました。すなわち「どんな事があっても絶対に諦めない!」という揺るぎ無い信念こそが、彼らに”奇跡”を起こしたのです。
そういう意味で、やはりこの映画は”人間の可能性の素晴らしさ”を描き出したいい映画だと思いますよw
僕は『アポロ13』を劇場で3回観て、さらにDVDを買って繰り返し観ています。僕の中ではたぶん、一番のヘビーローテーション作品ですねwなぜこんなに観てしまうのか、自分でも理由は良く分かりませんが、なんか元気が出てくるんですよねー。
>Deannaさん
日記、拝見しました。僕も北九州のスペースワールド行きましたよwあのロケットを見るとやはり、「昔の人って凄かったんだなあ」って感激しますよね。
いや、いい映画ですよ。ベストに上げている方が多いのも全然理解できます。
ただ、公開時期を見直したら自分の周りで「人の不幸を楽しむ」という苦い事象を目の当たりにした時期だったのに気づきました。今見たらもっと素直に観れるかもしれないで、見直してみますね。