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性犯罪にいかなる姿勢で臨むべきか。法制審議会が答申をまとめ、法相に提出…
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性犯罪にいかなる姿勢で臨むべきか。法制審議会が答申をまとめ、法相に提出した。
強姦(ごうかん)罪について、加害者を起訴する際に被害者の告訴を必要とする定めをなくす▽量刑を懲役3年以上から5年以上に引きあげる▽男性の被害も対象とする――などの見直しを提言している。親ら監護者が影響力に乗じて18歳未満に性交やわいせつな行為をするのを、犯罪として罰することも盛りこまれた。
背景にあるのは、性暴力を人間の尊厳に対する罪ととらえ、被害者が心身にうける傷の深さを重くみる考えだ。
総じて妥当な内容だが、懸念がないわけではない。
加害者とは一切かかわりたくない。記憶を呼び起こすことはしたくない。そんな思いで告訴を見送る被害者も多い。
答申通りに刑法を改めれば、告訴するかどうかの判断を迫られることはなくなり、被害者の負担は軽くなる。一方で希望しない裁判が始まる例も想定される。2次、3次の被害を招かぬよう、捜査・公判に携わる者には十分な配慮が求められる。
監護者の処罰規定が入ったのは、近親者による性犯罪の深刻さが広く認識されるようになったためだ。この提案も立場によって評価は分かれる。
被害者支援にあたる人々は、教員やスポーツコーチらによる性暴力も見過ごせない状況にあるという。だが「監護者」ではないため、処罰の網がかからない。「もっと踏み込んでほしかった」との声に、思いを同じくする人も少なくないだろう。
逆に、刑事弁護を担う側からは、犯罪の要件があいまいで、恋愛感情にもとづく行為も摘発対象となり、冤罪(えんざい)を生む恐れがあるとの指摘が出ている。
国会審議を通じてこうした疑問や不安の解消に努め、その後は実務のなかで適切な運用例を積みあげてもらいたい。何より尊重すべきは、被害者の人権であり、日々の生活であることは言うまでもない。
過酷な体験をした人たちの話を見聞きすると、強姦が「魂の殺人」と呼ばれる理由が痛切に伝わってくる。他の性暴行の罪深さも同様である。
だが、私たちの社会はこの問題に正面から向きあってきたと言えるだろうか。支える仕組みは貧弱で、声をあげられない被害者がいまも大勢いる。
サポート態勢の充実、被害にあった人に向けられる無理解や偏見の克服、治療プログラムなどを通じた再犯防止策の拡充。
答申を機に、山積する課題へのとり組みを強めたい。
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