そう考えると、基地の設置場所の決定は、政府任せにしてはいけない。全国民の代表が集う国会で、辺野古でなければだめな理由について、議論を尽くすべきだろう。

 この連載でも指摘してきたように、米軍基地の設置は、地元の環境規制や都市計画、消防など地方公共団体の自治権の制限につながる。他方、憲法92条は、「地方自治の組織及び運営に関わる事項」は、「地方自治の本旨」に従い、法律で定めなくてはならないと規定する。この条文を素直に読めば、米軍基地を設置する際には、どの地方公共団体の自治権を、どのような範囲で制限するのか、「法律」で決定すべきである。

 沖縄県は、今回の訴訟で、埋め立て地を基地として運用する根拠法が整備されていないのに、埋め立てを行うのは不合理だと主張した。これに対し、判決は、辺野古基地建設に伴って生じる自治権の制限は「日米安全保障条約及び日米地位協定に基づくものであり」憲法上問題がないと言い切る。しかし、日米安保条約や地位協定はあくまで「条約」であり「法律」ではない。条約があったからといって、憲法92条の要請を満たせるはずがない。

 今回の判決は、ほとんど国の主張の引き写しで、沖縄県の正当な主張に全く応えていない。これで、「公正に判断した」と良心に誓って言えるのか。最高裁には、公正で理論的な判決を期待する。(首都大学東京教授、憲法学者)