ビールの味は単純なようだが、実に微妙なものだ。蓄積されたノウハウと伝統が必要である。意外な国がおいしいビールを作ることがあるが、そのほとんどが青島のように植民地だった歴史に由来する。インドネシアが誇るビンタン・ビールも支配国だったオランダがハイネケン・ビールの製法を持ち込んで生産したものだ。もちろん、伝統だけではおいしくならない。ビール市場は消費者の味覚が少しだけ変わっただけでも一気にひっくり返るため、果てなき革新が必要だ。日本の今のビールのおいしさは、30年以上にわたり各メーカーが味を競い合ってきた「ドライ戦争」のたまものだ。
公正取引委員会が韓国製ビール不振の理由を発表した。その理由には「施設・流通網規制」「従価税」「価格決定構造」などが挙げられている。確かにその通りだ。しかし、それよりもっと重要な理由が書かれていない。それは「革新の努力」だ。独裁国の大同江ビールや、酒に厳格なイスラム国家のビンタン・ビールがおいしいのは、規制が少なくて自由だからではない。韓国のビール業界は爆弾酒(ウイスキーや焼酎のビール割り)用ビールで満足している間にこうした状況になったことを率直に認め、新たな味の開発に総力を挙げなければならない。