石川界人と「歌仙兼定」 撮影=稲葉真
声優・石川界人×橋本麻里 永青文庫「歌仙兼定登場」展レポート
永青文庫(東京・目白)にて、同館が所蔵する名刀《刀 銘 濃州関住兼定作》(通称・歌仙兼定)を中心とした刀剣や武具の展覧会「歌仙兼定登場」が、10月2日まで開催中。刀剣育成シミュレーションゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』にも登場する「歌仙兼定」をはじめ、国宝や重要文化財に指定されている刀剣が複数公開され、幅広い世代から注目を集めている。今回は、ゲームで歌仙兼定の声を担当する人気声優、石川界人が本展を鑑賞。永青文庫副館長・橋本麻里のレクチャーを受けながら、自身が演じる刀剣に初対面した。石川のコメントを交えながら、展覧会の様子をレポートする。
永青文庫は、中世には室町幕府三管領の一角を占め、江戸時代には旧熊本藩主を務めた、細川家に伝わる歴史資料や美術品を扱う博物館。1950年、16代当主の細川護立(もりたつ)により、同家の敷地跡に設立された。
本展では、2階から4階まで3つの展示室を使い、細川家と関わりの深い刀剣や武具、それらにまつわる資料を紹介している。もともとは細川家の事務所として使われていたというモダンな館内に、石川も感銘を受けた様子。扉や階段の手すりなど、当時の面影が残るポイントに足を止めながら展示室に向かった。
繊細で奥深い、刀装具に見入る
「刀装具の世界─肥後金工と細川家─」と題され、2階の展示室に並ぶのは、刀の鐔(つば)の数々。手を守るため、刀身と柄の間に挟み込んで使う武具だ。細川家が治めた熊本の「肥後金工」は、布目象嵌をはじめとする繊細な細工を特徴とする。
橋本の「軽くてかさばらない鐔は武士のお土産としても喜ばれ、肥後金工は江戸でコピー商品が出回るほど人気がありました」という解説に、石川は「現代でいうスマホケースみたいですよね。人気の商品はすぐに類似品が出回るところも同じ」と独自の視点でコメント。繊細な職人技に熱心に見入っていた。
文化人の家系・細川家のコレクション
3階では、「細川家の武器武具の記録」「宮本武蔵と細川家」として、資料や調度品のほか、細川藩に仕官していたと伝えられる宮本武蔵に関連する武具を紹介している。『御甲冑等之図』(家中拝領品目録)に描かれた、長い角が付いた「変わり兜」を見た石川は、「すごく派手! これでは戦場で目立ってしまいそうですが...」と質問。橋本が「下克上の戦国時代は、戦場での手柄が大きな褒美や出世を決定づけます。派手な兜を身につけると自分が狙われるリスクは高くなるけれど、手柄を挙げたのが誰か、確実に特定できますから」と解説した。
また、「幽斎と古今伝授」のコーナーでは、「歌仙兼定」を愛用した細川忠興(ただおき)の父・幽斎ゆかりの国宝の「古今伝授の太刀」こと《太刀 銘 豊後国行平作》(平安〜鎌倉時代)を展示している。橋本が「艶やかな地鉄や、のびやかで独特のカーブが魅力的。実は私のイチオシです」というこの刀には、石川も思わず足を止め「かっこいい!」。
武将ながら一流の教養人でもあった幽斎。和歌の奥義「古今伝授」を継承していたため、関ヶ原の戦いでは石田三成方の大軍に囲まれ籠城を余儀なくされながらも、後陽成天皇の勅命で命を救われた。この刀は、講和の記念に勅使であった烏丸(からすま)光広に贈られたものだと聞き、「思った以上に壮大な歴史の物語があるんですね。見た目もかっこいいし、もし刀剣乱舞にこの刀が出るならこの役もやりたいな(笑)」と想像を膨らませていた。
いよいよ「歌仙」にご対面!
4階は永青文庫の創設者である細川護立のコレクションを集めた「細川護立と刀剣」、そして「歌仙兼定」を含む「細川忠興の愛刀と肥後拵」のコーナー。いよいよ石川界人と「歌仙兼定」こと《刀 銘 濃州関住兼定作》(室町時代)が対面する。
橋本によれば、忠興が嫡男の側近36人を手打ちにしたという伝承を持つことから、和歌の名手「三十六歌仙」にちなんで「歌仙」と名付けられたというこの刀。「ゲームの収録時から名前の由来のストーリーを聞いていて、伝説上の刀というイメージが強かったので、実際に対面することができて驚いています。出身地である文京区のこんなに近くにあったなんて、不思議な縁を感じました」と感慨深げに心境を語った。
実際の刀に対面し、擬人化されたキャラクターを演じている石川はどのような印象を受けたのだろうか。「『刀剣乱舞』の歌仙兼定は風流を愛する雅なキャラクターなので、他の刀に比べて渋い雰囲気は意外ではありました。でも、収録中のアニメ版(『刀剣乱舞-花丸-』)では、洗濯などの地味な仕事も好きという設定なんです。太刀などに比べて小回りがきくつくりなど、刀の実用的な部分は、彼の性格に反映されているのかもしれないです」。