琵琶湖の外来「藻」、瀬田川にも 滋賀、セタシジミ壊滅的被害
琵琶湖で大量繁茂が問題になっている外来水草が、瀬田川にも生育範囲を広げている。だが、滋賀県が駆除などの対策に取り組んでいる琵琶湖と違い、国が管理する同川では対策はほとんど手つかずだ。縦割り行政の弊害が現れたかたちで、特産のセタシジミの激減に苦しむ地元漁協は早急な対策を求めている。
京滋バイパスが頭上を走る大津市瀬田6丁目の瀬田川左岸。外来水草オオバナミズキンバイの群落が、約50メートルに渡って岸辺に広がり、水面を覆い尽くす。地元の瀬田町漁協によると、目立つようになったのは数年前からという。
セタシジミは砂地を好む。腐った水草が川底にヘドロとなってたまると貝は生息できなくなる。同漁協によると、かつては国道1号の瀬田川大橋から、下流約1キロの京滋バイパス付近までの範囲でセタシジミが採れていたが、今では瀬田川大橋の周辺でしか漁ができないという。
同漁協は「5年前は一度の漁で約10キロ採れていたが、今年は2キロ採れたらいいほう。被害は壊滅的だ」とため息をつく。水草は網や漁船のスクリューにも絡みつき、ほかの漁業の妨げにもなる。
琵琶湖と瀬田川の境界はJR東海道線の鉄橋北側数十メートルにあり、そこから下流は国土交通省琵琶湖河川事務所が管理する。県は瀬田川での水草対策について「管理者は国なので、県として対応は難しい」(自然環境保全課)と話す。一方、琵琶湖河川事務所は「河川を管理する立場としては、治水が一番重要。水草で瀬田川洗堰がふさがるなど治水被害が起きない限り、対処はしない」と消極的だ。「現時点では、どれだけ外来水草が繁殖しているか把握していない」とも話す。
放置されることで懸念されるのが、下流への生育拡大だ。外来水草の繁殖力は強く、刈り取っても数センチの茎が残っているだけで再生する。ちぎれた草からも芽を出し、次々と生息場所を広げていく。実際に、オオバナミズキンバイは瀬田川洗堰の周辺まで生育範囲を広げている。
やむなく地元住民や漁業関係者など計70人が今年の5月から月に2回、水草を撤去する「瀬田川流域クリーン作戦」を続けている。船30隻に乗り込み、川底に沈んでいる水草のヘドロをかき出し、岸辺に生えるオオバナミズキンバイを根こそぎ除去してきた。
今月9日には、関西を中心とした大学生ボランティア約400人が、機械や船では作業しにくい岸辺に生えたオオバナミズキンバイの撤去活動をした。学生ボランティアの龍谷大3年、西出侑生さん(21)は「3年連続で活動に参加しているが、瀬田川での水草は年々増えている」と語る。
外来水草の除去作業を担っている漁業者は、高齢化や漁獲量の減少などで先細りとなっている。瀬田町漁協組合長理事の吉田守さん(70)は「地元や大学生だけの対応には限界がある。このままでは下流の京都や大阪へも被害が拡大しかねない。最初の一手として、行政が分布状況を調査してほしい」と話している。
【 2016年09月18日 23時00分 】