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2016年9月15日(木)

連載40年“こち亀” 作者に聞く

「世界で最も発行巻数の多い漫画のシリーズ」として認定されたのが、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」通称“こち亀”。
作者の秋本治(あきもと・おさむ)さんが、連載終了を前に胸のうちを語ってくれました。
 

漫画家 秋本治さん
「40年というのは自覚ない。
両さんは止まらない。
早く描けよって、催促されている感じ。」

 

堀越
「スタジオには、ずらりと並んだ漫画の単行本、その数、実に199巻。
世代を超えて、大勢の心を掴んできた“こち亀”です。


 

“こち亀”の主人公といえば、この真ん中でしっかりとつながった、まゆ毛がトレードマークの警察官の両さんですよね。
東京の下町を主な舞台に、ハチャメチャな騒動を巻き起こすという作品ですよね。」

和久田
「漫画もそうですけど、私は毎週、アニメを楽しみにしていました。」

堀越
「その“こち亀”が、いよいよ明後日(17日)、最終話を収めた少年誌と、コミックス・単行本の第200巻の同時発売をもって、40年の歴史に幕を下ろすということになります。
連載終了を直前にした昨日(14日)、作者の秋本治さんにお話をうかがいました。」

“こち亀”連載終了へ 作者に聞く

堀越
「今の気持ちは?」

漫画家 秋本治さん
「本当によくやってきたな。」

 

堀越
「どうして連載終了?」

漫画家 秋本治さん
「40周年というお祝いごとなので、両さんをみんなで寂しくならないで祝ってもらってパッと消えるのが、キャラクターの一番の花道と思って。」

秋本さんが生み出した「こち亀」の主人公“両さん”こと、両津勘吉。
もうけ話にすぐに飛びつき、仕事中に考えるのはギャンブルや遊びのことばかりという、はちゃめちゃな警察官。
一方で、正義感にあふれ、人情に厚いキャラクターです。

漫画家 秋本治さん
「人がダメと言うことをやってしまう。
最後には部長に怒られて。
でも、こういうのもあるんだと新しい発見があって、僕自身は生真面目なので、お酒もたばこもギャンブルもやらないですから。
お金あったら、僕なら貯金して、ちゃんと貯める。
両さんだったら“映画作ろう”とか“これ持って何しよう”“ばくちしよう”。
そういう展開があるので、僕も描いていて毎回楽しかった。」

堀越
「東京・日本橋。
『こち亀』の展覧会に来ています。



ずらーっと、コミックスが並んでいるんですよね。
ありとあらゆる世代の方々が見に来ています。」


 

昨日、始まった「こち亀」の40年の歴史をたどる展示会。
4,500人ものファンが詰めかけました。

「好きですね。
小学生のときから見ているので。」

「(作品と)人生が重なっている。
一緒に年齢を重ねたような感じ。」

 

「こち亀」の連載が始まったのは、昭和51年。
新しい家電や電子機器が次々と誕生し、人々の暮らしを大きく変え始めた時代。
秋本さんは、作品の中に最先端の流行を積極的に取り入れていきます。

昭和50年代、電子ゲームが一世を風靡すると…。
犬と一緒にゲームを楽しむ両さんの姿。



 

ペットを育てる、あの卵の形をしたゲーム、みんなが夢中になると…。
すぐに両さんも興味津々。
秋本さんは「こち亀」に時代の空気感を吹き込むことにこだわってきました。

漫画家 秋本治さん
「作家によっては、時代もの入れると古くなるから入れないという方もいる。
『こち亀』はあえて歴史として入れていこうと始めた。
古典落語じゃないですけど、いつ見ても聞いてもおもしろい。
時代感もわかる、今読んでもおもしろいとなれば一番理想。」

“こち亀”に魅せられた人々

「こち亀」を親子2代で楽しんでいる人がいます。
遠藤宏之(えんどう・ひろゆき)さんと、小学6年生の尚和(しょうわ)くんです。
初期の作品に出てくる流行り物は、尚和君にとって、見たことも聞いたこともないものばかり。
昔のことをお父さんによく聞くようになって、会話が増えました。

尚和くん
「古いゲームの話とか描いてあって、細かくわかる。」



 

遠藤宏之さん
「電話は、家の電話しかなかった。
待ち合わせで会えない人もいたんだよ。」

尚和くん
「本当なの?」

遠藤宏之さん
「本当だよ。」

遠藤宏之さん
「世代が変わっても、違う世代の人も、同じものを読んでいる。
とらえ方が違うかもしれないけど、同じものを読んでいるのは、うれしい。」

「こち亀」を経営のバイブルにしている人もいます。
東京都内のベンチャー企業。
動物と植物の性質を持つ「ミドリムシ」を使った食品などの研究開発をしています。

 

代表の出雲充(いづも・みつる)さん。
今の会社があるのは、子どもの頃から読んできた「こち亀」のおかげだと言います。


 

ベンチャー企業社長 出雲充さん
「両さんは、私には警察官ではなくて、偉大なベンチャー経営者の先輩。」

出雲さんは15年ほど前から、高い栄養価を持つミドリムシに着目し、ビジネスにしたいと考えていました。
でも、製品化は極めて難しく、失敗の連続。
くじけそうになった時、読み返したのが「こち亀」でした。
賞金目当ての自転車レース。
両さんは車輪が外れてもリタイアせず、自転車をかついで1位ゴールします。

ベンチャー企業社長 出雲充さん
「絶対にあきらめない。
無理だとは絶対言わない。
いま研究できることがあるはずだと、思い出させてくれる。」

とにかく、やりたいと思ったことを貫き通す両さんの姿に励まされたと言います。

11年前、ついにミドリムシを使った製品の開発に成功。
今では、年間50億円を売り上げる会社になりました。

ベンチャー企業社長 出雲充さん
「夢を追いかけるために一番大切なものを40年間、両さんは伝えてくれた。
いろんな人が励まされてきたから、こんなに愛されているのでは。」

気になる最終話は

まもなく40年の歴史に幕を下ろす「こち亀」。
気になる最終話は、どんな話なのでしょうか。



 

漫画家 秋本治さん
「大きな変化つけず、“また帰ってきたよ”と言えるぐらいの終わり方にしようかな。」

堀越
「重要なキーワードが出たと思うんですが、どういう意味ですか?」

漫画家 秋本治さん
「いつでも両さんが帰ってくるんだという感じ。
自然のまま終わるのが一番いい。
大きな展開で両さんが署長になったとか、出世したとかいうよりも自然のままがいい。
最終話には自分のメッセージも込めてある。
そこを見てもらえればうれしい。」
 

阿部
「確かに、連載が終わるのは寂しい感じがしますが、両さんは多くの人たちの中で生き続けていくんでしょうね。」

堀越
「秋本さんも『きっと両さんのことだから、連載が終わったとしても、どこかで暴れ続けているんじゃないか』ということをおっしゃったんですね。
両さんが決して、いなくなるということではないと。
ですから、寂しい気持ちになってしまうかもしれませんけれども、それをぐっと抑えて、最終話を楽しみに読みたいなと思いました。」

和久田
「最後のメッセージもかみしめたいですね。」