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東京フルスロットル

雑記とウェブサービスと思いつきによる行動についてゆとり新卒が嘔吐するよ

10年前の無法地帯の音楽ダウンロード事情に生き方を学んだ

テック系

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変化の大きさが10年前とは比較にならない。

僕は10年前、インターネット上に転がっている楽曲をダウンロードしてiPodに同期したので、TSUTAYAに足を運ぶ必要がなくなったのであった。当時は画期的であったが、今ではその方法が通用しない。

2006年当時、音楽を楽しむにはかなりのお金がかかった

音楽プレーヤーを楽しもうと思えば、TSUTAYAやGEOに行ってCDをレンタルし、PCにデータを移行。その後にMP3プレーヤーやiPodにデータを移していざ外出といった工程が必要だった。他にはiTunes Storeで楽曲を購入してiPodで楽しむという方法が主流になりつつあったかと思う。

なんて面倒な過程を通過せねばならぬことか。音楽を自由に楽しもうにも費用的に大きな障壁が立ちはだかっていたのは明らかだ。

いや、本当に2016年と比べると音楽を聴くためだけに大きな費用がかかっていた。

  • TSUTAYAでのCDレンタル代
  • PCまたはMDコンポ代
  • MP3及びiPodなどの再生機器

特にハードルが高かったのはPCの費用である。当時は現在と違ってまさか数万円程度のPCが出回るなんて夢のような話である。僕が使っていた東芝の一般的なPCだって整備品でも軽く10万を超えていた。そしてiPodなどの端末だって数万円、安いMP3プレーヤーも1万円はかかっていた。

それだけではない。CDをレンタルするってのが特に大変だった。もっとも費用を抑えて最新のシングル楽曲をレンタルしようものでも、翌日には返却しなければ法外な遅延金を請求されてしまう。これが金融商品だったとっくに規制の対象じゃないかってほどの利率である。

   

だからいざハードを用意できたとしてもCDなどのコンテンツがめちゃめちゃランニングで高くついていた。返却を忘れようものなら、その精神的、物理的損失は計り知れない。

掲示板検索で音楽の無料ダウンロードが可能になった

そんな悩みを友達に相談したところ、出てきた答えが「掲示板検索」を使え!とのものだったのだ。どうやらインターネット上にあるサイトで、そこには様々な音楽やエロ動画がアップロードされているから、ダウンロードしてiPodにぶちこめとのことだった。

 

中学生だった僕は、その友達にURLを教えてもらい(もちろん手書き)、それを家に持ち帰ってブラウザに入力してみるのである。

すると、サイトはかなりシンプルな作りで、テキスト入力欄と幾つかの広告が残りのスペースをかなり余らせていた。大学の大きな講義室に数人の学生しかいない、あの空虚(今のミニマリズムの類とはちょっと違う)な感じとでも言えばいいのだろうか。

そのテキスト入力欄に僕は恐る恐るアーティスト名を入れてみたのだ。

「L'Arc〜en〜Ciel」

結果は凄まじいものであった。

僕が好きだったラルクの曲たちが、掲示板にアップロードされた順番にズラーッと並んでいるのである。ものすごい数である。しかもよく見ると、楽曲名の横にデータの容量まで付記されているのである。とりあえず任意の楽曲を選んでみるとQuick timeが起動して音源の再生が始まる。

すごい、すごすぎる。TSUTAYAなんていらねえじゃねえか!暴利を貪りやがって!

と中学2年の僕は興奮を抑えきれなかった。

   

幾つか楽曲を漁ってみたところ、やはりデータサイズが大きい楽曲の方が音質が綺麗であることがわかった。

とりあえず気に入ったデータをダウンロードしてみることにした。ダウンロード後、iTunes上で先ほど落としたデータを開いて、iTuensに対応するデータへの変換を行う。変換が終わるとそれらは綺麗に一覧表示されている。

なんてことだろう。

掲示板検索が僕の音楽ライフを変えた

僕は家に居ながらにして、お金を払うこともなく音楽を楽しめるようになったのであった。

この時は中学生ながら、インターネットの凄さだとか、利便性などを嫌でも思い知らされたのであった。

僕は夢中になって曲を探して、ダウンロードして、それをiTunesに放り込んではiPodと外出した。部活に行くにも学校に行くにもいつもiPodは一緒であった。

さらにエスカレートした僕は、ダウンロードした楽曲たちをリストにまとめて「それっぽく」することにまで着手した。

掲示板検索に転がっているデータのほとんどには楽曲名やアーティスト名が付いていないので、それらを一つずつ手入力した。現在ならそんな煩雑な作業なんてやりたくもないのだが、その作業すら面白かったのである。これに加えて、インターネット上でCDのジャケットのサムネイルを見つけてきて、またiTunes上で楽曲データと紐付けした。するとどうだろう。手作りによる自分だけのほぼ完璧な楽曲リストが作成できるのである。

斜陽を迎えた掲示板検索

そんな日々もそう長くは続かなかった。

掲示板検索にアップロードされる楽曲たちも、数年した段階で徐々にクオリティが下がってきたり、音源と表記が異なるもの、もっと言えばなぜか新しい楽曲が出てからアップロードされるまでのタイムラグが広がっていっていたのである。

さらにはYoutubeの登場もあって、僕にとっては掲示板検索の存在意義は日に日に小さくなっていった。

   

最後の追い打ちはスマートフォンの出現である。ここで完全に掲示板検索のさらにはiPodの価値まで激減させたのであった。スマートフォンのアプリでYoutubeの楽曲を再生リストとして並べられるのは簡単で、iTunesのような管理ソフトなしでもそうしたリスト編集が可能になり、編集とほぼ同時に音楽を楽しめるようになった。この時間的な短縮はかなり意義深く、もはやPCと再生機器とを行き来するのがバカらしくすら覚えたのである。

終わりに

ところで、僕は色々と無知であった。

あの頃お世話になった掲示板検索、今じゃ著作権やらの法律的に完全にアウトではないか。同時は黒に近いグレーとはいえ、インターネットユーザーそのものの数もかなり小さく、目をつぶれる範囲であったのだろう。誰しもが音楽を聴くにはまずはCDを購入なりレンタルするなりしていたからである。もし、2016年現在も野放しにされていたとしたら、日本の音楽産業はどうなっていたことやら。しかも現在はアップローダーだけでなく、僕らユーザーも規制の対象内に含まれている。

それから10年経った今でも、音楽を聴くにあたって僕自身の考え方に大きな変化は見られていない。やはり10年前に味あわったあの甘い蜜が忘れられないのである。数年前にはiMusicという神アプリで、そして今でも某アプリで曲をせっせとデバイスに保存している。音楽への冒涜だとか、フリーライダーと言われても仕方がないのかもしれないが、いかんせん「抜け道を見つけた人を見つける」のも処世術。要領の良さを養うには最高の環境に自身を浸している状況は10年前ともさほど変わらない。明日にはどんな規制が設けられるかは把握していないが僕は今日を全力で生きることを楽曲リストの編集を通して学んでしまった。悪知恵を持った中二は今日も中二の心を大切にして生きているのである。