NASAとカルフォルニア大学サンフランシスコ校、コーネル大学の研究チームが世界で初めて宇宙での遺伝子解析に成功しました。でもなぜ莫大な予算をかけてまで、宇宙で遺伝子解析を行う必要があるのでしょうか?その理由にはものすごく夢のあるストーリーがありました。
宇宙で遺伝子を読む?!
地球から320キロメートル上空のNASAの国際宇宙ステーション。
そこで世界で初めて遺伝子を解読し、カルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームがその解析が正しく行われていることを確認した。
宇宙飛行士のJate Rubins博士はマウスや微生物、ウイルスのDNAを用いてMinIONと名付けられた携帯用のDNAシーケンサーで解析を行った。
このような小さく持ち運べるDNAシーケンサー(遺伝子を読む機械)は、例えば宇宙飛行士の病気の解析や宇宙ステーションにある食べ物や水、環境中の微生物の分析に役に立つという。
NASAのBiomolecular Sequencer projectには、カルフォルニア大学サンフランシスコ校とコーネル大学の研究チームが名を連ねており、宇宙で解析した遺伝子データを各校が受け取り、地上で解析したデータと比較することにより、その精度を検討する。
遺伝子が宇宙空間を移動する影響や宇宙で解析するといったことがどのような影響を与えるかを明らかにしたいというわけだ。
MinION
MinIONはポケットサイズのDNAシーケンサーである。
その技術としては、内部にナノサイズの穴が空いた膜が入っており、DNAが一つずつこの穴を通り抜ける際のイオンの変化を計測し、DNAの配列を決定する。
この技術を用いると、DNAの配列は10分程度で読めるという。
だがDNAは通常水に溶けた状態で存在し、このDNAシーケンサーの中を溶液として流れていく。
この流れというものが、宇宙空間という重力が非常に弱い状況において、どのような影響を受けるか、そして解析結果は正しく得られるかということは分かっていなかった。
実験結果は良好!
今回の実験の結果では、宇宙空間で解析された結果は地上で得られた結果とほぼ同じであり、高精度のデータが得られたという。
つまり宇宙においてもこのMinIONは正しく動作し、大きな問題は起こらなかったというわけだ。
今回の実験にて、宇宙で遺伝子解析ができることが実証されたため、今後はサンプル調整から、遺伝子解読、リアルタイム解析など遺伝子解析に必要な一連の操作が宇宙で行えるか検討する。
もし全てが行えるとなれば、例えば宇宙で出会った地球外生命体の遺伝子を解析できるという夢のような技術となることだろう。
いつも行っている技術や動作も宇宙空間ではできなくなってしまうなんてことは多々存在します。今回の実験の前にも、もしかしたら遺伝子解析もできないのではないかという懸念があったのでしょう。ただ同じことをするだけなのに、莫大な予算を使い、宇宙で検討するというのは、ある意味もったいないと思う人もいるかもしれません。でもその基本を検討しておかないと、次のステップには進めないので、宇宙開発にとっては大きな、そして重要な実験だったのです。
宇宙飛行士の健康や飲料、食料管理は確かに必要なことですが、私としては地球外生命体の遺伝子が解析されるという時を期待して待っていたいと思います。もちろん地球外生命体が発見されるという歴史的イベントがないとそこにはいかないのですけどね。
元記事はこちら(NASA’s DNA Sequencing in Space is a Success, UCSF Researchers Confirm)