今般、大学共同利用機関法人利用機関法人自然科学研究機構プリンストンオフィス(米国・プリンストン大学内)駐在の唐牛特任教授から、以下のとおり情報提供がありました。
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大学のDean of the Faculty(教員人事給与局)からの通達によると、『米国政府は、2016年12月1日から最低賃金法の適用基準を変更し、最低給与保証額を引上げることを決定しました。これまでの外国人に対する最低収入証明とは異なり、客員(visitors)を含む全ての教職員・研究員に適用される。年間給与額は$47,476以上でなければならない』としています。
これまで我々に関係する収入保証といえば、ビザ申請に伴って、米国移民局が外国人の不法労働を抑制するための示達に基づいて大学が設定する最低収入保証で、送り出す機関が発行する収入証明(certificate of financial support)を添付しなければなりません。物価にスライドして毎年改定され、2015年から2016年では、$42,900 → $43,700 と上昇しています。
今回の改定はこれを完全に上書きする、全米の全給与所得者を対象とするもので(ただし「裁量労働」に対応するnon-exemptのみ)、最低賃金法の適用基準を変えました。特に注目されるべきことは、今回の改定の動機がポスドク、中でもNIH傘下の生命科学に従事するポスドクの研究環境改善、という画期的なものです。
詳しくは下記の労働省長官とNIH所長の共同声明をお読みください:
http://www.huffingtonpost.com/francis-s-collins-md-phd/fair-pay-for-postdocs-why_b_10011066.html
また、今年度においても、既にNIH研究所において日本学術振興会の海外特別研究員として派遣されている研究者でこの変更に該当したケースがあるとのことで、NIHは先行して最低基準を引上げている模様です。
現在の海外特別研究員の最高額は年額520万円であり、為替レートの変動によっては受入れを拒否されるケースが生じる可能性があります。
さらに、入国管理局がこの数値をJ1プログラム等の非移民滞在に適用すると、
海外特別研究員はもとより、その給付額に準拠して研究員の給与を設定している殆どの日本の大学・研究所の研究員が米国で研究できなくなる、といった事態となります。
現場では、ポスドクにTAや実験・医療補助などで超過勤務手当を払うなど方途によってやり繰りするようですが、米国における所得を禁止されている殆どのJ1ビザ滞在者には適用されず、滞在できなくなってしまいます。
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こうした米国政府による最低給与保証額の引上げに伴い、現在、日本から米国に派遣されている研究者(ポスドク研究員を含む)の現行の派遣給与等が最低給与保証額に満たなくなる恐れがあり、米国に派遣されている研究者が日本に撤退せざるを得なくなるなど、重大な影響が懸念されます。
このため、大学研究力強化ネットワークとして、別紙のような提言を作成し、関係方面に発信していくことといたしました。
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提 言
大学研究力強化ネットワーク
運営委員会
米国政府は、2016年12月1日から最低賃金法の適用基準を変更し、最低給与保証額を引上げることを決定しました。これは、日本から米国に派遣されているポスドク研究員を含む研究者に適用されることになります。
これまで、日本の多くの研究大学の若手研究者は、日本学術振興会をはじめとする研究資金支援機関の支援を受け米国へ留学し、国際感覚を持った人材の育成が行われてきました。
しかしながら、今回の米国政府による決定によって、日本学術振興会の海外特別研究員など様々な助成資金の多くが、最低給与保証額に満たなくなる可能性があります。
こうした状況を踏まえ、日本学術振興会をはじめとする研究資金支援機関におかれては、支援金額の見直し等、緊急かつ柔軟な対応を講じていただくようお願いいたします。