9月17日
レッドタートル ある島の物語
先日、「ジブリの大博覧会」に行ってまいりまして。写真撮影はできなかったんですが、今作の絵コンテや作画模様がたくさん展示されていたんですよ。
それを見たことによってジブリといったら宮崎駿しか見ない!と頑なに拒んでた自分が初めて彼以外のジブリ作品に興味を示しました。しかも今回スタジオジブリが初めて海外作品に携わるということ、カンヌ国際映画祭ある視点部門で特別賞を受賞したことも手伝って見に行くか!と決断しました。
あらすじ
どこから来たのか
どこへ行くのか いのちは?
嵐の中、荒れ狂う海に放り出された男が急死に一生を得て、ある無人島にたどり着いた。
必死に島からの脱出を試みるが、見えない力によって何度も島に引き戻される。
絶望的な状況に置かれた男の前に、ある日、一人の女が現れた。(HPより抜粋)
監督
監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットさん。
オランダ出身のアニメーション作家さんだそうです。絵本も製作されてるそうで、今回スタジオジブリのプロデューサーであり、巨匠・宮崎駿を操縦するのは彼以外にいないだろうと思われる鈴木敏夫のたっての希望で今回初の長編映画である今作を2007年から準備して作ったとのこと。しかも直に製作を詰めていく上で日本と居住地であるイギリスの距離を考慮したのか、わざわざ日本の、しかもスタジオが近い東京都小金井市へ転居しシナリオや絵コンテを作成。高畑勲によるチェックの下、完成に向けて作品を詰めていったとのこと。
そんな彼に白羽の矢を立てた宮崎駿を唸らせたとされる監督の作品が2000年に公開された「岸辺のふたり」という8分間という短編のアニメーション映画。
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大切な存在である父の面影を少女から大人へと成長しながらも追い求いめ続ける一人の娘を軸に描かれているそうで、その内容とアニメーションの表現を評価され、2001年アカデミー賞短編アニメーション部門で受賞したそうです。
そして今作は今年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で特別賞を受賞し、世界でも評価の高い作品として満を持しての日本公開となりました。
果たして、「思い出のマーニー」以降国内での製作を中断しているとされるスタジオジブリ初の海外作品制作は今後のアニメ業界にどんな影響を及ぼすのでしょうか。それもこれも内容次第なのかな?
業界内の評判や評価、作品の内容もほとんど聞こえてこないという謎の多い作品。その内容やいかに。
ここから鑑賞後の感想です!!!
鑑賞後の「???」が止まらない!考えるのでなく鑑賞する作品!
以下、核心に触れずネタバレします。
自然は人間にも動物にも平等に寄り添う。
まずは率直な感想を。
非常にアート性の高い作品、まるで美術館に展示されている絵画を見てるそんな感覚でした。
一人の男が無人島で自然に抗いながらも生き、一人の女性と生活し、その命を全うしていく物語を、慣れ親しんだジブリタッチのデザインとは異なったキャラクター。水彩画のような繊細な画のタッチ、それとは対照的に滑らかに動くウミガメ、フランス映画っぽく芸術的に描かれた作品でした。
生まれた命はどこにいてもその火を灯し、やがて息絶えたとしても新たな命として繋いでいき、それを繰り返す。その繰り返しは人間だけでなく他の動物にも平等に与えられ、生きとし生けるものすべてに自然はあり、時に厳しさと災いをもたらしていく。そんなことを観衆に語りかけているのかなぁと感じました。
国民的アニメ映画を量産してきたスタジオジブリの「挑戦」とも言える海外制作。まさに企業としても作品としてもこの言葉に尽きる、そんな気がしました。
ジブリ映画だからきっと楽しい映画に決まってる!だから見に行こう!と思って肩透かしをくらう人も多いかもしれません。
その理由として挙げるならば「セリフ」がないこと。セリフがないから登場人物を必要以上に読み取らなくてはいけません。ヘーーイ!とかアーーー!!!といった叫び声しかなくあとはひたすら音楽のみ。これきっとヒットさせるつもりないなぁと。
個人的には好みとかそういう判断よりも、あまり見たことない作品に驚いたという印象のほうが大きかったかもしれません。やはりカンヌのある視点部門特別賞だけあるなと。
とにかく疑問多過ぎ。
なぁんかかっこつけて感想を述べましたが、深いところまで理解できてませんww
ちょっとここからは大きなネタバレになることをご容赦ください。
まずタイトルのレッドタートル=赤いウミガメ。彼が何度も何度も島からの脱出を試みてイカダを作るんですが、沖まで出てもこいつにより破壊され、その先へ進むことができません。
しかもその腹いせに陸へ上がった赤ウミガメをひっくり返して、しまいには死んでしまいます。もちろん、男は犯してしまった過ちにいたたまれない気持ちになるのですが、そのウミガメが女となり愛が芽生え子を作るという流れになってます。
ウミガメはそもそも死んでいなかったのか、人間の女になってそばにいたかったのか、なぜイカダを破壊したのか、このあたりが一番理解できませんでした。
その後生まれてきた子どもは大人になり島を離れるわけですが、何を求め旅立つのか、島以外に陸はあるのか、人間と亀のハーフだからひたすら海でもへっちゃらなのか、もう疑問だらけです。
いつ火をつかうのだろうか?と見ていても終盤で竹を燃やす時しか使わず、食事や明かりや暖をとるといった描写がなぜないのか。どこまでが夢でどこまでが現実なのか。
こんな疑問自体が馬鹿げているのかもしれません。考えるな、感じろということなのでしょうか。感じるにしてもひっかかってしまってどうにも・・・。
一応、プロデューサーの鈴木敏夫さんはこの物語について「いろんなものをそぎ落として作った男と女の話」と説明しています。
何もない島で男と女はどうするのか。やはり子を産んで子孫を繁栄させるだろ?ってことなのか。誰かが寄り添うことでそこは天国にもなりうるということなのか。
非常に感性を揺さぶる作品であったことは間違いないと思います。
今後スタジオジブリはどこを目指すのか、そもそもジブリという先入観がある以上この作品に正当な評価ができないんじゃないか。でも、ジブリ制作って言わないとお客さん来ないしな・・・。
そんな余計なお世話な考えが頭をめぐります。
とにかくいろいろな見方ができる作品であることは間違いないと思います。これだけは言えます、子供向けじゃないっ!!いや逆にこういう映画こそ子供に見せるべき作品なのか。あ~~また疑問が・・・。
あ、津波のシーンがありますので、敏感な方はご注意を。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度 ☆☆☆☆★★★★★★6/10